憧れのままの野外シアター
先日、たまたまネットであるイベントの告知を見た。
『野外シアター開催決定』
そう、洋画のワンシーンでお馴染みの野外映画館である。
私は映画はサスペンスや実話をもとにしたドラマなんかが好きなんだけど、(最近だと『最強のふたり』が良かった!)
ラブロマンスや青春モノだと、夜空の下で男女が肩を寄せ合い、顔に巨大スクリーンから放たれる光を反射させながら、物語を楽しむ。そんなシーンが度々出てくる。
その主人公たちの様子は、ラフで、自由で、大人っぽくて。夢見がちな少女だった私は、ひどく憧れた。
大人になった今となってら、本当に物語に没入したいのなら普通の映画館に行った方が良いんだろうなぁ、とも思う。
だけど、野外シアターの目的は作品を愛でることでなく、青々とした芝生の上で夜風にあたりながらポップコーンやお酒を片手にスリルや感動を共有すること(の、はず)。
会場の一体感も相まって、ちょっとしたお祭りのような雰囲気は最高に開放感があるだろう。映画は最高のシチュエーションを楽しむための口実だ。
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この野外シアターに私はかれこれ30年は憧れている。
もともと野外で食べたり飲んだりするのが好きで「外で食べるとなんでもウマイ!」というプラシーボ効果をフルで受動するアホ。
もちろん映画も大好き。
野外×映画だけでもドンピシャなのに、夏の夜っていうのがまた最高。
湿った土の匂いや青々とした木々がざわめく音、何でも許されるるような気持ちになる熱をはらんだ夜の空気。私が一番好きな季節の、好きな時間。
つまり、野外シアターでハマらない要素がひとつもない。
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私が見つけた野外シアターイベントは、家から車で20分程度の公園で行われていた。会場は十分な広さがあり、子供が多少動いても迷惑はかけないはずだ。
映画は子供も楽しめるSF映画。
幸い週末は(いつも通り)なにも予定が入っていない。
いける!いけるぞ!
嬉々として週末の予定に提案。
休日はもっぱら家でテレビを見てダラダラしたい派の夫にも「じゃあ天気が良ければ行ってみようか」とOKをもらった。
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そして土曜日。快晴。
いつも通り日中は涼を求めて家でゲームなどをし、庭で流しそうめんをした。
日差しが少し落ち着いてから近所の公園で虫取りをして過ごした。
映画は18時から。
帰宅してYouTubeを見ようとする家族に、映画見に行くからそろそろ準備しよう、と声を掛けた。
子供たち:
「えーっ!家でYouTube見たい。」
なんかもう面倒臭くなっちゃったんだね。
わかる。わかるよ。
でも、行ったら行ったで、絶対楽しむパターンのやつだね。
私:
「そんなこと言わずに行こうよ〜。
外で映画見るチャンス、なかなかないよ。
屋台もあるからポップコーンやハンバーガー食べながら見ようよ。」
子供たち:
「家でごはん食べながらテレビ見るからいい。」
このやりとりの中、無言を貫くのは夫。
夫も行きたくないのだろう。私の手前、大っぴらに子供の援護射撃はし難いのか、とにかく聞こえないフリしている。(卑怯だぞ!)
結局、始めから野外シアターを楽しみにしているのは私だけだったのだ。
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「じゃあ、私だけ行くね!ご飯適当に食べてて!」
そう言うこともできただろうけど、言えなかった。私は母親として家族と一緒にいる「べき」だと思ったから。
急いでお米を炊いて、いつから冷凍していたかも忘れたBBQ用に取り寄せていた焼き鳥串をフライパンで焼き、スープを作り、いただきものの枝豆を茹でた。
野外シアターで食べるつもりだったから、何も作っていなかったのだ。
枝豆のさやを捨てながら、ちらりと時計を見た。ああ、ちょうど映画はクライマックスの頃だ。そんなことを思った。
私、いま、孤独だ。
家族が集まる家。そのど真ん中で私は孤独を感じている。やることは山積みだし、子供はしつこいくらいに私に話しかけてくるのに、「ひとりぼっち」だなんて。そんなことを感じた自分に驚いた。
きっと、私は楽しみを共有したかった。
土の匂いがする芝生の上にレモン柄のレジャーシートを敷いて、夜空に浮かび上がるスクリーンを見る。
屋台はどんな食べ物が売ってるのかな。たこ焼き?アメリカンドック?今日だけはそんな夕飯もいい。
時折寝転がったり、もたれかかったりしながら、好きな姿勢でポップコーンも食べよう。お気に入りのお菓子も持っていこう。
夫が運転のはずだから、お酒だって飲ませてもらっちゃおうかな。
ラストシーンで感動し終えたら、駐車場までの道を空を見上げて歩こう。どれが一等星か教えてあげよう。
そんな風に胸躍らせていた。
でも、ワクワクしていたのは私だけだった。完全なる独り相撲。
カッと恥ずかしくなり、吐き捨てるように心で呟いた。
「もういい。今度はひとりで行くから。」
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私は最近週1ペースでソロ活をしていた。
簡単に言えば「自分の機嫌が自分でとろう」キャンペーンなのだが、最近ちょっとムキになっていたかもしれない。
楽しみを共有する気がないなら、私が独り占めしてやる!!
相手もいないのに張り合っていた。拒絶されるくらいなら誘わない。素直に「一緒に行こうよ」と言えない寂しさの裏返したなのだと思う。
もちろん「つべこべ言わずに行くよっ!!」と、ならず者が集う盗賊団の女ボスさながらに男たち(家族)を盛り立てれば実行できたはずだ。
でも、そうじゃないんだよなぁ。
嫌々来てもらったとして、本当に彼らが楽しめずに2時間過ごしてしまったら、責任が取れない。取りたくもないし。
家族とはいえ別人格。法律や血で結ばれた異なる人間たちの集まりだ。いくら円満でも、うまく行かない日だってある。
野外シアターは憧れのまま。
私のソロ活はますます精神衛生に欠かせないものとなりそうです、、、
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