双子の魂の約束
とても仲の良い、双子のような魂がありました。
新しい人生についてあれこれ計画しながら、一方が言いました。
「今回は、男と女として生まれてみようよ。
そして、どんな風にそれぞれの人生が進んでいってもきっとどこかで出会って、そのときの人間としてのお互いを愛することにしよう」
もう一方が、こたえました。
「それはおもしろいね。
どんな人間になっていても、お互いを愛せるだろうか。
いつか、今こうして話していることを思い出すだろうか」
「もちろんだよ。私たちのきずなは、こんなに深いのだもの」
そうして、それぞれが膨大な要素を含む「自分と全体に見合った」計画をたてると、いよいよ魂は別れて、おのおのの体験へと降りていきました。
女に生まれた魂は、ぼんやりと、この約束を覚えていました。
それは、心の底にある不思議な感覚として、でした。
色々な男性と出会いながらも、女は、なにかもっと心にぴったりとくるもの、既知の一致感をもとめていました。
あるとき、女はとてもやさしい目をした男性に出会いました。
その人と一緒にいると、ゆったりとあたたかいお湯につかっているような、体のりんかくが消えて大気にとけてゆくような、心地よい感じがしました。
女は、この人だ、と思いました。
ふたりは、よく協力して人生をあゆみました。
何度か、大きないさかいや、困難もありました。
けれども、その度にふたりは、泣いたり、笑ったり、一緒に眠ったり、ごはんを食べたり、森を歩いたりしました。
そして、女の方が先に亡くなりました。
ふと気がつくと、なじみのある魂がそばにいて、笑っています。
むかえにきてくれたのです。
「あなたなの?」
と言って、女はあれっと思いました。
夫はまだ、人間として生きているはずだからです。
女が一瞬、混乱していると、魂は言いました。
「ぼくたちは、すれ違ったんだよ」
そう、今一緒にいるのは、まぎれもなく、あの生まれる前に約束をした仲間の魂です。
もう一度、魂は言いました。
「ぼくは、ちがう時代を選んだんだ」
女はおどろいて、
「それでは、私が愛した夫は……」
「今回はじめて会う魂だったみたいだね」
魂は、相変わらず笑っています。
女は、地上を見下ろしてみました。
愛しいあの人が、庭にお水をまいていました。
隣りでは、双子のように大好きな魂が確かに一緒にいます。
けれどもやはり、地上の夫にも、まったく同じ愛を感じていました。
「さしつかえないんだね」
女は、笑いました。ぱぁーっと、あかるい光の輪ができました。
「さしつかえないんだよ」
魂も言って、笑いました。
(この物語は、2006年から2009年の間に私、masumiが自サイトに掲載していた創作の再掲載です。
2011年に開設した現在のブログ内で行った、これらの物語の紹介はこちら◆「物語をアップします」)
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