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勝手に10選〜THE BEATLES初期PAUL作曲編〜(後編)

(前記)
それでは、張り切って後半へ進む。

・I've Just Seen A Face
1965年に発表されたアルバム"Help!"に収録された曲だ。

実に、明るく疾走感のある演奏でアコースティックギターのストロークメインの曲であるが、カントリーにスキッフルの要素をプラスした印象でる。

ジョージの12弦のアコースティックギターと、ポールのガットギター、ジョンが12弦のアコースティックギターを弾き、別トラックにジョンがアコースティックギターを弾いて計4本(計5本の説もある)ギターを用いて演奏されており、ビートルズの曲の中で始めてベースが弾かれていない曲だ。

筆者も昔ギターでこの曲を弾いて、こんな音でないなあ、などと思っていたが出るはずもない。相手はビートルズのギター4本だ。

間奏のソロもジョージによら12弦アコースティックギターにより、ソリッドかつシンプルで実に心地よい。

ポールのボーカルも実にのびのびとした印象で
ピュアなラブソングを歌い上げ、ハーモニー(ポールに聴こえる)もばっちりハマっている。

この曲は、もっと評価されてよい。

・Yesterday
1965年に発表されたアルバム"Help!"に収録された曲だ。

ある夜、ポールが就寝中に夢の中でメロディが流れてきた。
目を覚まして、慌ててメロディを忘れない様にスタジオへ向かい、コードを付けて曲を完成させた。

あまりにも自然に完成した為に、周りに誰かの曲ではないか、と聞いて回るも(1か月以上だったらしい)知らないといわれ、自身が作曲したオリジナルである事を確信した。

…どこかで聞いた事のある話である。

ストーンズのキース・リチャーズが"I Can't Get No) Satisfaction"のギターリフを手にした話と同じなのだ。

音楽の神様はたまにこんな悪戯をするのであろうか。

話を戻し、しかし、仮タイトル"Scrambled egg"として作曲から作詞、アレンジなどを含め、"Yesterday"として、レコーディングにたどり着く事まで約1年を要した。

レコーディングでは、ポールがギター1本で弾き語ると、他のメンバーはこれ以上の楽器は不要と判断する。
そして、ジョージ・マーティンの提案で弦楽四重奏が加えられ、この世紀の名曲が誕生したのだ。

それから長きに渡り、失恋ソングの最高峰に君臨していたが、後にポール本人が、あの曲は亡くなった母親の事を歌った、と自ら証言した。

まあ、歌詞に対して聞き手の解釈は自由であり、どんな形であれ大名曲は大名曲であり続けるのだ。

・We Can Work It Out
1965年に"Day Tripper"と両A面シングルとして発表された曲だ。

明るくテンポも良く、カントリーも仄かに香り、メロディも端正なアコースティックロックである。
楽曲の殆どがポールによるものであるが、ミドルエイトはジョンによって追加され、ワルツになる箇所はジョージのアイデアだ。

なるほど、曲に合わせて幾分楽観的な歌詞に対して、ミドルエイトで別の人格が突っ込んでいる様にも受け取れる。

色んな意味で愉快な曲であるが、実に興味深い事は、この曲は誰が何の楽器を弾いているのか、誰の記憶にも記録にも無く未だに何も判明していないのだ。

・Drive My Car
1965年に発表されたアルバム"Rubber Soul"のオープニングを飾る曲だ。

ギターリフが主軸となる骨太ロックだ。
ベースラインもギターリフに沿って演奏されている。

歌詞は、私はスターになるから私の運転手になりなさい、と言われた男との対話形式であり、なんだかヘンテコリンな歌詞にも受け取れるが、"Drive My Car"とはスラングでSEXを意味する事を知れば、なるほどな歌詞なのだ。

ポールとジョンによるダブルボーカルが実にクールで、ポール自身の演奏によるサビに入るピアノ、ブレイクの"beep beep yeah"というクラクションの模倣、ポールによる間奏のスライドギターソロなどか見事に融合した名ロックだ。

・Michelle
1965年に発表されたアルバム"Rubber Soul" に収録された曲だ。

ポールは他のアーティストの手法を模倣し、自らのスタイルに再構築するのが得意であり、この曲はギターにおけるフィンガリングの神様であるチェット・アトキンスの手法から、着想を得た曲だ。

以前出席していたパーティーで、他の出席者がフランスの歌を合唱しているのを目の当たりにして、感化され作られた曲であり、曲調もフランス風、歌詞も一部フランス語だ。

実に美しい曲である。
ここまで記したこの曲の完成に至るまでのエピソードが見事に花を咲かせている。
途中から何事も無かったかの様に登場するギター(どういうエフェクトかは解らない)はジョージによるものだ。

しかし、このポール・マッカートニーのキャリアにおいて作られる幾多のバラード達の幅広さ、ポールのポテンシャルの大きさには驚愕しかない。

これら名バラードの数々が、1人の人間から生み出された事が実に驚きなのだ。

(後記)
今回はビートルズ初期のポールによる楽曲を10選して感じた事は、ビートルズ初期はかなりの割合でジョン・レノンがイニシアティブを担っていた事だ。

曲数が多ければ良い、とは勿論言わないが、野球で例えるならば、全試合に出場して、3割40本のホームランを叩きだすジョンに、地道に出場機会が与えられた他のメンバーが追付いしているのが初期のビートルズなのか。

いやしかし、ポールの打率、密度は半端ではない。
今回この10選をした事によって、ポールのポテンシャルの広さを否が応でも知らされたのだ。

ほんっと、ビートルズって凄いですね!

読んでくださった方々へ
ありがとうございました。

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