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勝手に10選〜 THE BEATLES 後期JOHN作曲編(後編)〜

(前記)
それでは張り切ってJOHN作曲編の後半に移る。

・A Day In The Life
1967年に発表されたアルバム"Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band"のラストを飾る曲だ。

ポールの提案による架空のバンド、サージェント・ペパーズのライブとしてのコンセプトに合わせると、この曲は位置的にアンコールの曲となるが、ジョンにはそんな意図は無かった。

大半がジョンにより制作されているが、ミドルエイトはポールが書いている。
歌詞は新聞を読んで、知人の御曹司の交通事故死や、ランカシャーに4000個の穴が空いていることを知り、あとは戦争映画を観ていたなど、まさに人生の中のただ1日を記している。

曲の出だしもアコースティックギター、ピアノ、ベースで美しくかつ優しく始まる。

面白いのは、そこ?というタイミングでリンゴのドラムが入ることで重厚感が増す。
この曲全体に通してリンゴのドラミングはオカズが多く、実に変化球的なドラミングを披露しているが、実にこの曲に華を添えているのだ。

そして、この曲の核心と言えるのが、ジョンのパートからポールのミドルエイトに移行する際に”I'd love you to turn you on”というフレーズが入る事だ。
”turn 〜 on”とは、スイッチを入れる、照準を合わせる、などの意味を持つが、スラングではセックスとも訳される。スイッチを入れる、セックス、まあドラッグを絡ませると、なるほどなフレーズである。

そして、このフレーズの直後から、総勢40人のオーケストラに対して、ジョンとポール、そしてジョージ・マーティンから、”一番低い音から徐々に最高音まで音を出す”、”即興で誰とも被らない音を出す”、”隣の音を気にせずに音楽的オーガズムに達する様に”、などの提案がなされ、この曲の一つの象徴であるパートが完成する。

そして、軽やかな、ポールの少年時代のありふれた日常を描いたミドルテイクの後でジョンのパートに戻る前に、オーケストラをバックにダークな雰囲気の"Ah〜”というボーカルが入るパートがあるが、実に面白いのは、このボーカルが誰によるものか未だに判明しておらず、議論の的になっている。

曲のラストはピアノによるコードEの1発であるが、これは3台のピアノで同時にEを鳴らし、3回オーバーダビングすることによって、9台のピアノの音に仕立て上げている。

実に語りどころが満載の曲である。

音楽をアートとしての側面から堪能できる名曲なのだ。

・Revolution
1968年にシングル”Hey Jude"のB面として発表された曲だ。

アルバム”The Beatles、通称ホワイトアルバム”に”Revolution 1"としてこの曲のスローバージョンが収録されているが、元々の原曲は”Revolution 1"である。

ジョンはこの”Revolution 1"をシングルとしてリリースしたがったのだが、周りからテンポが遅いとの指摘があり、テンポアップしてギターにディストーションを加え、この曲が完成した。

実にストレートで、構成もシンプルでイカしたロックンロールナンバーだ。

歌詞は社会情勢、政治的見解に首をつっこむビートルズとしては初めての歌詞である。
誰だって変化を望んでいるが、方法はどうなのか?と一歩下がって冷静に静観している印象だ。

そんなイカした曲だが、PVも4人が揃ってミニマムに歌っている姿がと最高にカッコ良いのだ。

このPVはオケだけ流してボーカルは実際に歌っているのだが、この曲のキーはB♭であり、画像で弾いている(ふりをしている)キーはAなのはなぜだろうか。”Revolution 1"ならキーはAなのだが。

・I Am The Walrus
1967年にシングル”Hello Goodbye"のB面として、後にアルバム”Magical Mystery Tour"に収録され発表された曲だ。

ジョンが”鏡の国のアリス”に触発されて作られた楽曲だ。

ジョン曰く”100年経っても色褪せない曲”だ。

歌詞はもはや言葉遊びである。もう聴き手に投げているかの様だ。
サビのエッグマンは”鏡の国のアリス”の登場人物では無く、セックスの際に女性の腹部に卵を割る妙な癖を持つ知人のあだ名である。

実に唯一無二の世界観を持つ楽曲である。ジョンがエレクトリックピアノとメロトロンとリードボーカルで、ジョージがギター、ポールがベース、という組み合わせにジョージ・マーティンが実に粋なオーケストラを加えた。

主軸となるのは、ジョンの曲とジョージ・マーティンによるオーケストラのケミストリーだ。
破茶滅茶なコーラス、”リア王”の朗読までスパイスとなり、この世界観を形成しているのだ。

ジョンの言う通り、実に、ただ単にカッコ良い曲としてではなく、何回リピートしても飽きない。
ジョンは”この曲には何かがある”と述べている。
ジョンですら”何か”としか表現できなかった魅力を筆者にできる訳がないのだ。

・ACROSS THE UNIVERSE
1970年に発表されたアルバム"LET IT BE"に収録された曲だ。

この曲は1967年のある夜にジョンが妻であるシンシアの取り止めのない話にイラつき、部屋を出た時にこの曲の最初の1行が浮かんだ。
"Words are flowing out like endless rain into a paper cup"である。

そこから一気に曲が出来た。
ジョン曰く”イライラの曲が宇宙の曲に変わっただけ。曲が勝手に変わっただけ。”だそうだ。

私生活、音楽、において非凡な経験と挑戦を重ねに重ねた後に、いざ、ほぼ弾き語りに近い実にシンプルかつソリッドでストレートなこの楽曲の言葉にできない迫力、魅力に圧倒されるのだ。
ジョージによるタンブーラがスピリチュアルな世界観に見事な華を添えている。

この曲は最初、1968年に世界自然保護基金のチャリティーソングとして発表された。このバージョンはテンポが上げられ、キーがE♭になっている。
このバージョンは”Past Masters 2"にて聴くことができる。

そして1970年にアルバム”Let It Be"に収録されるに至るが、次はフィル・スペクターがプロデュースをして、今度はテンポを下げられキーがD♭となる。コーラス、オーケストラも加わることになる。
そして、長きに渡り、このフィル・スペクターによるバージョンがこの曲の定番となる。

しかし時が流れ、1996年に発表された"The Beatles Anthology 2"や2003年に発表された"Let It Be... Naked"で、やっと元のキーであるDが聴ける様になったのだ。

ビートルズの楽曲において、この曲は筆者のフェイバリットだが、テンポ、キーが変わらず、余計な手出しをしていない"Let It Be... Naked"バージョンが1番しっくりくるのだ。

・Come Together
1969年に発表されたアルバム"Abbey Road"のオープニングを飾り、シングルでも発表された曲だ。

1956年にチャック・ベリーが発表した楽曲"You Can't Catch Me"をベースに作られ、当初はアップテンポの陽気な曲だった事もあり、聴いたポールは余りにもチャック・ベリーの曲に酷似していると判断し、ジョンにテンポを落とし、アレンジを変える事を進言し、完成に至るが、後に案の定チャック・ベリー側から訴えられた。

実にソリッドなロックだ。

Aメロはほぼベースとドラムだけで成り立っていると言ってもよい。
ただポールのベースと、リンゴのドラミングが圧巻であり、実に華を添えている。

サビになるとディストーションの効いたギターが前に出てきてハードロック調となる、この緩急が魅力なのだ。
ポールによるエレクトリックピアノ、低音のサイドボーカルも更に見事に華を添えている。

歌詞は言葉遊びだ。以前の日本版では翻訳不能とまで書かれた。
しかし"Shoot Me"のフレーズは実に皮肉な運命そのものだ。

ジョンによる、ブルージーで、ソリッドな重厚感に満ち溢れるロックに身を委ねれば良いのだ。

(後記)
ついついジョン・レノンの楽曲となると熱が入り、長文となってしまった点を筆者は反省すべきだ。

ビートルズの中期では、自由奔放に、勝手気ままに、実験的に楽曲を制作していたジョンが、一回りしてソリッドな楽曲を追求するストーリーが映画の様に興味深い。

ジョン・レノンは天才だったのか、ロックの神様が送り込んだ天使だったか、外見は気取った影の努力家か、などは解る筈がない。

ジョン・レノンとは、そういう摩訶不思議で魅力満載のアーティストであり続けるのだ。

読んでくださった方々へ
ありがとうございました。



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