どんどん手が離れていく
もりもりご飯を食べていた息子が急に食べなくなった。
最初、夫から「ご飯を食べない」と聞いたときは風邪かな?珍しいな、と思っていたが、自分が食事番になってわかった。
自らの意思で食べないことを選んでいる。
自我が育っていることに感動しつつ、さて、困った。
用意したものを残されるのは、つらい。そしてもったいない。
かと言って無理やり食べさせても機嫌が悪くなる一方だ。
メニューを変えてみたり、自分で食べさせてみたり、色々工夫したけれど、食べるのは半分くらい。
そんなこともあるか、とある程度食べたところで切り上げても、後からお腹が空いたと泣いたりしない。
今まで足りない足りない!と騒いでいたのが嘘のようだ。
イヤイヤ期のはしりだろうか、とドキドキしていたら、保育園でこんな話をきいた。
「今日は給湯室で洗った哺乳瓶を調理室まで運んでくれたんです。それも3回も!
3回目は1人でトコトコ上手に歩けていましたよ」
ああ、なんて尊いのかしらわが子……。
もうそんなこともできるようになったんだ。
どんどん人間に成長している。
そこで少し大人になったんだと見方を変えて、またドキドキしながらごはんを並べてみた。
すると、みずからスプーンを持ってぱくりぱくりと食べ出すではないか。
もちろん、手元は覚束ない。うまく掬えないこともある。口に入る直前でぺとり、と落としてしまい、スプーンだけを口に含んでいることも。(それでもなぜか意に介してないようだ)
かえしのないお皿を使っているので、量が少なくなってきたら掬いやすいよう手助けしたが、ほとんど自力で食べてしまった。
どうやら、自分で食べたかったらしい。
自分の食べたいものを、自分のペースで、自分の食べたい順番で。
その日は、ちゃんと完食してくれた。
あまりにも突然のことで、なんだかびっくり。
もう哺乳瓶も仕舞ってしまったし、ハイハイより歩く方が増えてきたし、靴に興味津々だし、着替えに協力してくれることもある。
スプーンを出せばぱくぱく食べていたあの子が、自力でごはんを食べたり、拒否したりする。
ああ、どんどん手が離れていく……。
嬉しいようなさみしいような、でもこぼされるし新たな問題は出てくるんだけど、やっぱり、喜ばしい。
そして、ちゃんと自我が育ってきている。
だからひとりの人間として、息子をちゃんと尊重しなくちゃいけないんだなぁ。
そう、今更ながら自覚した。
もう赤ちゃんじゃなくて、お子さんなんだ。
その後、着席やエプロンを拒否をされたりはするものの、ご飯はふつうに食べてくれるようになった。
あの時期はなんだったんだろう。
人と人のぶつかりあい、って感じがして、ヒヤヒヤ、ドキドキしたけれど、私はああいうの、実は嫌いじゃないんだなぁ。
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