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『ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝 - 永遠と自動手記人形 -』

愛について語ることはこそばゆい。

愛について描いた作品を観ることもまた、どこか気恥ずかしい。

そんなご時世でまっすぐに「愛」を描いた物語だと思った。

思えば、テレビシリーズから一貫して『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』は、愛を記し、愛を届け、愛を識る物語であった。

そして本作は、自分の人生や愛が価値のあるものであると信じられる、そんな気持ちになる作品であった。

京都アニメーション制作の人気アニメで、2018年にテレビ放送およびNetflixで世界配信された「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」の新たな物語を描く外伝。愛すること、愛されることを知らずに育った主人公のヴァイオレット・エヴァーガーデンが、「自動手記人形」と呼ばれる代筆業に就き、さまざまな依頼人からの思いを手紙にしたためていく中で、次第に愛を知っていく姿を描く。外伝となる本作では、良家の子女のみが通うことを許される女学園を舞台に、未来への希望や期待を失っていた大貴族の跡取り娘イザベラ・ヨークと、彼女のもとへ派遣されてきたヴァイオレットとの出会いから生まれる物語を描く。監督はテレビシリーズで演出を担当した藤田春香。新登場キャラクターのイザベラ・ヨーク役に寿美菜子、テイラー・バートレット役に悠木碧。
「映画.com」解説より

今回の軸になる登場人物は2人。

自分の人生になにひとつ期待せず、なかばやさぐれて生きるイザベラ嬢。

それから、自分の仕事を「価値のないもの」と思っているベネディクト。

※画像は映画公式HPより

イザベラ嬢はヴァイオレット・エヴァーガーデンと出会うことで、次第に心をほぐしていく。

そして、代筆業「自動手記人形」であるヴァイオレットに手紙の代筆を頼むことで、自分の愛を、届けていく。

ベネディクトは、自分が届けた手紙をきっかけに、「手紙を届けること」の意味を知る。

ひとつの「愛」がめぐりめぐって様々なところに波及して、誰かの生きる糧となり、笑顔となる。

その媒介となったヴァイオレットもまた、孤児で「武器」として戦闘訓練を受けて育ち、戦争で両腕を失っているが、かつて大切な人から貰った「愛」を元に、誰かの気持ちを届ける仕事をしているのだ。

愛、愛というとお綺麗で、恵まれた人々のもの、と思われるかもしれないが、ヴァイオレットもイザベラも過酷な過去を持っているし、ベネディクトの毎日毎日何年も同じ作業を続けていて、うんざり飽く気持ちもわかるのだ。

そんな中でも、貴方の愛に意味はあるし、貴方の行いにも意味はある。何より、誰かを愛すること、愛情を伝えることは素晴らしいと感じさせてくれる物語だった。

今回の愛情は、いわゆる男女の間の恋愛感情ではないので、そういうのが苦手な方にも観て欲しい。

本作で描かれるそれは、「存在そのものを慈しむ愛」だ。

奇をてらった演出や派手さはないが、画面は常に美しく、特に衣装デザインは見惚れるほど美しかった。

最後の風の描写が印象に残った。

アニメ本編をみていなくても差し支えないと思う。

何度でもじっくり観たい映画だった。

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