全方位に優しい物語に対する1ファンの所感「Free!-Dive to the Future-」
好きなアニメがもうすぐ終わってしまう!
やだやだやだやだ終わらないで!!
と本気で思いつつ実は、満足できていません。
要所要所で尊く、可愛く、感動し、泣けるものの、全体としてどうもピンとこない。
私の心が動き足りない。
いまいちのめり込めずモヤモヤしています。
なぜなのか考察してみました。
そうしたところ、それなりにシリーズが続き、登場人物も増え、ファンもしっかりついたことによる長編シリーズの罠とも呼べる症状なのではと思い至りました。
もちろん、どんな物語創作にも通ずる話です。
すべては「全方向にやさしくしすぎた」。
これが原因かと思います。
全方向にやさしくするメリット・デメリット
【メリット】
・見たかった景色が見られた
・どのキャラクターのファンも喜ぶ
・不公平感が出にくい
【デメリット】
・物語の本筋がわかりにくい
・掘り下げが足りない
・なかなか話が進まない
・尺が足りない
一見みんな喜びそうですが、デメリットの方が本質的なダメージが大きいのではないでしょうか。
八方美人はやっぱりダメよ。
いや悪くないけど、決めるとこ決めないとダメよ。
というわけで、具体的に語らせてください。
まだ最終回が残っているので判断するには早いかもしれません。
が、なんかもうマグマのようにふつふつどろどろと何かが渦巻いているので吐き出させてください。
いつも「Free!」の話をしていると思われていそうですが、そう今回も「Free!」です。
◇◇◇
アニメ「Free!」は水泳もので、類稀な才能を持ち、見るものを魅了する泳ぎをする七瀬遙(男)が主人公。
現在放送中の3期「Free!-Dive to the Future-」(以下「3期」)は、かつて大切な友人を泳ぎ負かし傷つけてしまったことで「早く凡人になりたい」と思っていた主人公が、競泳の道に進むと決め、地方から東京の大学に進学し世界を目指すというストーリー。
今まで高校、中学時代を描いていたので、今回は「大学生編」とも言われています。
期待に反し、閉じたままの世界
3期では、新しい環境、新しい目標に飛び込む主人公にとても期待していました。
才能があり、関係者に注目されていたとはいえ、これまであまり勝ち負けに関心がなく、勝負の世界でガッチガチに戦ってはこなかった主人公。
新たな仲間やライバルと出会い、世界の広さを知って、もがきながらも進化していくんだろう。
これまでにない、七瀬遙がみられるに違いない。
大海原に乗り出した主人公の新しく刺激的な日々を期待していました。
始まってみたら話があっちこっちへ
実際、出だしはそんな感じだったのでワクワクしていたのですが、話数が進むにつれ、地元にいる後輩たちの話や、ライバル校の話、過去に遺恨を残した友人との再会、怪我で戦線離脱したキャラクターの話など、「一方その頃彼らは」方式にあらゆるところへ話が飛びます。
もちろんその1つ1つは感動的で、可愛く、知りたかった所でもあり、泣けて、尊い。
しかしどうにも駆け足で、話の軸がどこにあるのかわかりにくい。
そして、せっかく上京して大学に進み、環境が大きく変わったのに、画面に登場する人物に代わり映えがせず、延々と地元と同じ人間関係から広がらないのです。
ちゃんと主人公もライバルや新たなコーチと出会い、今までやらなかったことをしたりします。でもその辺りの話が動き出したのが大体10話くらい。(全12話)
もっとこういう話が見たかったな!
なんだか話があちらこちらに行っていて、主人公がどーんと軸にいない印象です。
ある意味、全キャラクターを大事にしようとしてくれていて優しいのです。
でも、結果的に駆け足で、エピソードが薄くなってしまっている。
例えば私は橘真琴という主人公の幼馴染が大好きで、芹沢尚というキャラクターを、なんというか師と仰ぐように愛していますが、たとえ彼らが1秒も出てこなくても、3期では勝負の世界に挑む主人公の話を描いてほしかった。
こんなことを書くと同じファンに怒られそうですが……。
実際には各キャラクターにファンがいて、長く続いているだけあってファンもなかなかに情熱的なので、登場シーンを削ることは制作側も難しかったのかもしれません。
それでも私は、たとえ推しの出番が削られても、新しい世界に飛び込んだ主人公の物語に集中して欲しかった。
それだけ主人公のことが好きなのかもしれません。
どんな物語でも、主人公を好きになれないと深くはハマれませんもんね。
主人公いじめが足りない
もっと主人公に焦点を当てて欲しかったの一言に尽きるのですが、さらにいえば主人公いじめが足りなかった。
これまでのシリーズで七瀬遙の強さに安心していたので、3期ではボッコボコにしてほしいなぁと思っていました。
ここで言う強さは、何があってもノーダメージということではなくて、例え傷だらけになり倒れても、また立ち上がり歩み出せるだろうという強さです。
井の中の蛙とは言わないまでも、いままで勝負の世界からやや距離を置いていた分、広い世界に出て、思いっきり負ける経験もして欲しい。
そこから更に強くなる主人公がみたい。
実際、初めて圧倒的に距離を離されて負け、奮起する姿は描かれました。
欲を言えば、もっとそのあたりを深く、しっかり見たかったなと思います。
どうもすべてが都合よすぎる
そして主人公いじめが足りない、という話にも通じるのですが、どうもすべてが都合の良い方向に動きすぎているように感じました。
私たちは確かに推しの笑顔がみたいし、推しの夢はなるべくなら叶って欲しい。
でもそれは決して、推しに都合よく話が転がって欲しいという意味ではないのです。
時に挫折し、未熟さをさらけだし、不恰好で目も当てられず、遠回りしたとしても、ただ真摯に生きて欲しい。
そういう姿が見たいと私は思っています。
そういう意味では、彼らは決して不誠実に生きているわけではないのですが、どうも全てが上手く転がりすぎて、のめり込めないところがありました。
(以下、ネタバレを若干含みます)
後輩達は全国大会へ進めるし、大学生組もバンバン基準タイムを超えていく。
ハッピーならハッピーでいいのですが、尺の都合でハッピーな部分だけを描かれることが多く、どうせならもっと深く描いて欲しかったなんて思います。
とても感動的なのに、全国大会の部分だけ見せられてもな……と感動が引くのも早いのが残念でした。
さらに、新キャラが登場しても、主人公と同郷だったり、既存キャラクターの血縁者だったりと、伏線を回収すればするほど世界が狭まっていくように感じるのも残念でした。
主人公の地元はどんだけ優秀な水泳選手量産してるのよ!と突っ込みたい感じです。
でも続編はきっとやばい面白い!
ここまで批判的なことばかり書いてしまいました。
でも、国内では金城、世界では王者アルというかなり強力なライバルが登場し、今後面白くなってくるんだろうなぁと確信しています。
もしかしたら続編が決まっているからこそ、各方面を丁寧に描いていたのかもしれません。
が、ファンはそんなこと知りません。
最初から例えば2クール目や劇場版があるとわかっていたらもう少し心穏やかに見れたかと思います。
ただ、全方位に優しかったため、好きなシーンや良かったシーンも結構あげられます。
おそらく、他のファンの方もそうでしょう。
私だったらこんな感じです。
・中学生とは思えない推しの妖艶な悪戯っぽい微笑み
・成人して酒が飲めるようになった推し
・俺はフリーしか泳がなくない七瀬
・「バカ旭」「俺は天才」「僕は天才」
・夢がみつかってよかったね夏也(まさか見失っていたとは!)
・遙とアルが初めて泳ぐシーン(すごく好きです)
・熱くなる七瀬(凛に見せたい)
・真琴の指先から飛び立つてんとう虫
・軽々と色々突破してくれる岬くん
・宗介ぇ
・私は日和くんだいぶ好きです
うん、思ったよりありますね。
それでもモヤモヤするのは、やっぱりみんなに優しかった分、展開が早く表面的で尺が足りない印象であり、世界がなかなか広がらず、本筋が何だったのかわかりにくいからだと考えています。
例えば3期から見た人が、「どんな話かよくわからないなぁ」「結局本筋はなんだったんだろう?」と思って終わりそうなのが、いちファンに過ぎないのに僭越ですが悔しいのです。
物語を紡ぐ中で、何を優先し、何を切るか迷う場面はあると思います。
ここを切ったらファンが悲しむかな、と頭によぎることもあるでしょう。
そんな時は、「本筋がブレ、話が薄まるくらいなら、たとえ推しといえども切って欲しい」といういちファンの声を思い出していただけたら幸いです。
とはいえ、まだ最終回があります。
もしかしたらモヤモヤを吹き飛ばす素晴らしい最終回かもしれない。
今期だと「ルパン三世 PART5」が視聴者のストレスを吹っ飛ばすクールで痺れる最終回でした。
というかここまで書いてきて、3期は登場人物全員が「未来へのスタート地点に立つ」物語だったのかもしれないと思い至りました。
サブタイトル通りに。
(でももう飛び込んで泳ぎ始めてくれていいと思っているよ!!!)
なにはともあれ素敵な最終回になるといいな!
あと続編がありますように!!!
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