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発達障害の大学生支援、学業や就活支援を学年ごとに考えてみる

前にも書いた「発達障害のある学生支援」。前回とは違った角度で、大学生のことを考えながら書いてみようと思います。テーマは「学年ごと」の支援内容についてです。

3つのスキルを交えながら

福祉職、就労支援者の視点で考えると、発達障害のある学生さんを支援する上で、3つのスキルが整理しやすいと感じてます。それは、「ライフスキル」「ソフトスキル」「ハードスキル」の3つです。

ライフスキルとは、日常生活スキルのこと。食事、睡眠、運動、お金、身だしなみなどを言います。ソフトスキルは業務以外に関するスキルのことを言い、言葉遣いや報連相、指示理解などのコミュニケーション面や職場での態度や立ち振る舞い、時間管理、優先順位づけ、休憩の過ごし方など、挙げると結構たくさんあります。また、ハードスキルは、業務スキルとも言い換えることができ、PCスキル、手先の器用さや道具の扱い方、語学や専門知識などとなります。

これら3スキルの視点も交えて、学年ごとに必要な支援を考えてみます。

1回生の支援は現状把握と関係づくり

入学時に、手帳や診断の有無を開示するかどうかで変わってはきますが、「履修登録のサポート」「配慮事項の聞き取り」「学内資源の周知」などが、まずは必要な支援となりそうです。1回生への支援は大学入学後の最初の支援でもあるため、学生さんと大学関係者との「出会い」は大切となると思います。まずは、学生さんの希望や気になることを聞き取り、大学として支援できることをお伝えしていく感じでしょうか。
上記3つのスキルで考えると、「ライフスキル」がまずは重要になりそうで、高校とは違う大学生活ですから、「生活リズム」「時間管理」「相談するスキル」「金銭管理」などは、学生支援の中でアプローチしていきたいポイントでもあります。ライフスキルは、学生さん一人ひとりによって身につけてる内容に違いもあり、今までの育った環境によってもスキルの習得状況は多様に違いが出てきそうです。まずは、一人ひとりの状況を聞き取り、4年間の大学生活がうまくいくように現状把握するのがこの学年での支援ポイントなように思います。
また、学生さんの話を聞くと、大学生になってやりたいことのひとつに「アルバイトしたい!」はよく聞く話です。ご家族からすると心配もあるようですが、「短期バイト」「派遣のバイト」「年末年始などの期間限定バイト」など、雇用期間の終わりが明確なものだと、仮に職場でミスや迷惑かけることがあっても、最小限の失敗経験で済ますことができます。アルバイトは、就活や就職する上で就労イメージを広げる良い機会にもなるため、大きく失敗しないように安全を担保しつつ、スモールステップで周囲のサポートを受けながらバイト探しを支援できると理想なように思います。

2回生支援は特性からくる課題把握を

2回生になると、大学生活も1年が経過し、学生さんなりに大学生としてのリズムも掴んでこられた時期かもしれません。学業も少しずつ難しくなり、学部によっては専門知識を深掘りしていく時期にもなってきます。発達障害の特性から考えてみると、「得意苦手のアンバランスさ」は徐々に目立ってくる学生さんも出てくる時期でもあるように思います。1回生の時は問題なく取り組めていたことも、専門知識を身につけていく過程の中で得意不得意が顕在化したり、苦手なことを克服しようと努力するあまり、メンタル不全などで心身の調子を崩す学生さんも出てきそうです。
ライフスキルに当てはまる「日常生活スキル」で、学生生活に支障をきたしているのなら、生活スキルを身につける講座の開催や学生相談などで個別的な関わりと助言が継続的に必要となるように思います。1回生は支援無しで大丈夫であっても、2回生3回生と学年変わるごとに支援の内容・量が変化することはポイントとして押さえておきたいところです。

3回生はスキマ時間で就活準備支援を

専門分野の知識習得や学業の難易度アップ、ゼミの参加など、3回生になると今まで以上に求められることも増えてきそうです。学業は忙しくなり、授業で求められることも増え、ライフスキルで言うところのスケジュール管理や優先順位付けなどの自己管理は、この時期において重要なスキルのひとつとなるように思います。また、下半期からは企業説明会やインターンシップなど就活に向けた動きが増える時期でもあり、授業のない「スキマ時間」に就活関連の予定を入れる必要もあって、発達障害の特性の一つである「実行機能の課題」が支援の必要性と繋がる可能性はたくさんありそうです。
学生相談やキャリアセンターなどの学内支援においては、実行機能を補う支援として「スケジュールの管理方法」「困った時の相談方法」「企業とやり取りする際のマナーや振る舞いの教示」など、ライフスキルに限らず、ソフトスキルを教える必要性も出てくるため、学生支援は個別的に幅広く進めていくことがポイントとなります。
また、3回生は、就活の動きが徐々に出てくるのもあって、学生さん本人も、周りのご家族も、卒業後のことを我が事として意識し始める時期でもあります。障害者雇用で就活するかとか、発達障害の特性理解を職場にどうお願いするか(合理的配慮のこと)など、学内の支援に加えて、私たちが運営する学外プログラム(就活のススメ)などで就活準備に取り組むことも必要な支援のひとつになるかと思います。

4回生は、卒論+就活or学業専念で進路支援を

4回生の卒業学年は、学業、卒論、就活など、やるべきことが盛りだくさんの時期でもあり、卒業という期限の迫った学年でもあって、焦り、不安、見通しが持てないなど、心配事は尽きない感じかと思います。発達障害の特性のひとつに「こだわり・想像力の特性」があり、この特性は「見えないことが想像できない」といった特徴があるため、卒業後の未来・将来が見通せない卒業学年は、何かとストレスがかかりやすい時期でもあります。
卒業後の就職を見据えて考えてみると、ライフスキル獲得による日常生活の安定が図られてることは前提となりそうですし、言葉遣いや報連相、ビジネスマナーといったソフトスキルは就活の面接などで評価されることもあって身についてる必要性もあり、ハードスキルの業務スキルで言えば、専門知識の習得や資格取得なども卒業までにある程度のレベルに達しておく必要がある…なんて色々考えてしまうと、やることが多い中、卒業までの期限が迫っていることは頑張れることにも限界があり、こだわり・想像力の特性はネガティブに影響することが多そうな気がします。
学内の支援としては、卒論+就活の両立で進められそうかを見極めつつ、担当教員やキャリアセンターとの学内連携は重要となりそうです。また、両立が難しい学生さんの場合は、まずは学業に専念して確実に卒業できることを目指し、卒業後の進路のひとつとして、学外連携で地域の「就労移行支援事業所」「就業生活支援センター」などを紹介するのも一つの支援かと思います。
また、学外での支援では、3回生と同じく学外の就活プログラムを勧めることで、学生さん自身の自己理解支援を促すことも必要な支援のひとつになりそうです。卒業学年なら、在学中から地域の就労移行支援を利用することも可能ですので(一部、市町村による)、福祉サービスを使いながら、卒業後のことを考えていくことを提案する支援も良いかと思われます。

まとめ

「学年ごと」でざっくりしたまとめになりましたが、いかがでしたでしょうか。学生さんの状況を考えると、個別性も高いため、なかなか一概には言えない気がします。ただ、3つの必要なスキル以外に、学内支援と学外支援の組み合わせは、学生支援をする上で大切な支援アイデアになるように思います。

理想を言えば、ライフスキルは1回生から2回生ぐらいで身につけて、3回生や4回生になるにつれてソフトスキルとハードスキルを意識的に身につけていく。ライフスキルは他の2スキルの土台となるものでもあるので、早いうちに土台作りができると理想です。

それに、特に重要なスキルは、「周りに助けを求めるスキル」なようにも思います。何かうまくいかないことがあれば「相談する」「アドバイスをもらう」「誰かと話す」など、一人で抱え込むことなく、誰かの力を借り、誰かと一緒に将来のことを考えていくことで、少しは不安も解消されますし、就職した後も上司や同僚を頼りながら職場定着もしやすくなるように思います。

大学生の支援は、4年間の有期限ということもあって、本人なりの納得感も大切にしながら支援を進めることは支援者として難しさを感じることは多いものです。有期限だからこそ、学生さんなりに気持ちもたくさん揺れ動くわけですから、時には支援者も一緒に揺れ動きながらこの先のことを少しずつ考えていけると良いような気がしてます。

大学生の支援、まだまだ考え続けてみたいと思います。

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