松野恭平さんのラジオに出演して「近年の笠原弘子さんの音楽」について伺ってきました!【インタビュー記事】
先日、作曲家の松野恭平さんと元ライブハウス店長の福原和揮さんがオーナーを務められているお店「Cafe & Barオーケストラ」さんのポッドキャストに出演させていただきました!
↑オーケストラさんのWEBサイト
↑僕が出演させていただいたポッドキャストのリンク
その際、
「松野さんがプロデュースを務められるようになってからの笠原弘子さんの音楽について僕がインタビュー」
という企画で収録させていただいたのですが、
松野さんのご厚意で
「ポッドキャストでのインタビューの内容を僕のブログに記事として投稿」
させていただけることになりました!
近年の笠原さんの音楽面を深堀りしたインタビューだったので、ぜひ笠原さんファンの方に読んでいただきたい記事です!
それでは本編に移ります!
・松野恭平さん プロフィール
2007年「黒赤ちゃん」のVocal & Guitarとして、SONY MUSIC ARTISTS内 green dropよりメジャーデビュー。
活動休止後は、他アーティストへの楽曲提供や編曲、アニメの劇伴や音響効果制作など、作曲家としてのキャリアをスタート。
2016年以降、黒赤ちゃんの乾ひであきとともに、 音楽プロデュースチーム「DogP」としても活動中。
2022年からは自身のプロジェクト「未聴感ポップLab」で不定期に楽曲をリリースしている。
↓松野さんWEBサイト
SHU-TO.が「近年の笠原弘子さんの音楽活動」を気になり始めた理由/松野さんとの出会い
松野さん: 今日はよろしくね!まず「最近の笠原弘子さんの楽曲」を最初に聴いたとき、どんな風に思った?
SHU-TO: 初めて楽曲を聴いた時は「これだけのキャリアの笠原さんが最近の流行りのポップスを歌われていること」が凄いなーって思いました。
松野さん: あーそうかそうか!音楽性的にもね。
SHU-TO: 僕は沢田研二さんのような「キャリアを重ねても新しいことに挑戦されるアーティストさん」が大好きなので、今の弘子さんの音楽性は本当に素晴らしいと思っています。
そもそも僕が弘子さんのことを存じ上げるようになったのは、子供の頃CSで見ていた「機動警察パトレイバー」「るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚- 」「超時空要塞マクロスII -LOVERS AGAIN-」などのアニメがきっかけでした。
SHU-TO: そこから時を経て、3年前に「スーパーロボット魂」というロボットアニメソングのLIVEイベントを配信チケットで拝見したのですが、そのイベントに弘子さんが出演されてて、まず「笠原弘子さんが金髪になられてる!?」という点に驚いて…↓
松野さん: あー!そうだね!
SHU-TO: ステージでのビジュアルがきっかけで最近の弘子さんの活動について調べてみたら、LIVEの2カ月前にリリースされたアルバム「New Kissako」が出てきました。早速聴いてみたら「凄い!最近の流行りのポップスだ…!」って思って。
松野さん: なるほどね!LIVEきっかけでアルバムを聴いたんだ。
SHU-TO: 「New Kissako」の完成度に衝撃を受けて、「これは凄腕のプロデューサーさんがつかれてるのかも…」とXでポストしたら"プロデューサーさんご本人"から連絡をいただいて今に至ります(笑)。
松野さん: そうそう!「ありがとう〜」って送っちゃって(笑)。それでその後しばらく経ってから、「SHU-TO.くんに会ってみたい!」って思って、Cafe & Bar オーケストラで仲間内で集まる会にSHU-TO.くんを呼んだんだよね。
SHU-TO: その場で笠原さんのEP「深化」の制作陣の皆さんと初めてお会いして(笑)。
松野さん: 「それからの仲」って感じだよね。
松野さんが笠原さんのプロデュースを担当されるようになられたきっかけ
松野さん: 今日は僕がプロデュースに入るようになった「2018年以降の笠原弘子さんの音楽」をテーマにSHU-TO.くんにインタビューしてもらうような形でお話していこうと思います!
SHU-TO: よろしくお願いします!早速伺いたいんですけど、そもそもどういうきっかけで松野さんが弘子さんをプロデュースを担当されるようになられたんですか?
松野さん: 僕と弘子さんとの出会いは、2009年に弘子さんの「はちみつライブ」っていうアコースティックLIVEがあって、それに僕がバックバンドのギターとして参加したのがきっかけなんですよ。
松野さん: そこから9年くらい連絡は途絶えていました。時が経って、僕が2017年に「ひとり暮らしの小学生」という漫画原作のアニメで主題歌を制作することになったのですが、僕が作ることが決まった段階ではボーカル担当が決まっていなくて…。
だから「松野さんのお知り合いで誰か歌ってもらえる方いませんかね?」みたいに言われたんだけど、作品自体も"昭和が舞台の作品"だったから、
「あ!笠原弘子さん…もう9年前だけど一回バックバンドやったし、歌ってくれないかな〜」
って弘子さんの事務所に連絡してみたら快く引き受けてくださったんですよ。
SHU-TO: そういう経緯での繋がりだったんですね…!そこから松野さんが弘子さんをプロデュースされることが正式に決まったのはいつ頃なんですか?
松野さん: 「ひとり暮らしの小学生」が出てからすぐに、「タマ&フレンズ うちのタマ知りませんか?」というアニメを作られてる方から
「笠原弘子さん、今新曲作ってるんですか!?ならウチのアニメの主題歌もお願いします!」
という連絡が来て、そこからすぐに「Tama & Friends」という曲を作ってアニメの主題歌をやったんですね。
松野さん: というのが2本立て続けに決まったから、「この"笠原&松野"の座組良いのかもね。じゃアルバムまで作っちゃいますか!」って作ったのが2021年発売のアルバム「New Kissako」。これが18年ぶりのオリジナルアルバムになって。
SHU-TO: タイアップ、タイアップでお仕事をされるうちに、正式に組まれることになって、この方向性になられたんですね。
楽曲内では「弘子さんが自分の足で歩いている」ような見え方にしたい
SHU-TO: 音楽性について伺いたいんですが、松野さんが弘子さんの楽曲を作られる上で「どういう楽曲でも絶対この要素は入れよう!」という"軸"みたいなものはおありなんですか?
松野さん: 楽曲の中で「弘子さんが自分の足で歩いているような見え方にしたい」というのは大切にしてるかな。
これは、弘子さんご自身が「昔は"大人が決めたことを言われた通りにやる"という仕事が多かったけど、今は"自分で決めたことをやってみたい"」と仰っていて、その辺りのイメージをコンセプトにしてるのもあって。
SHU-TO: 弘子さんご自身が"今やりたいこと"を音楽にされてるんですね。
松野さん: それもあるし、楽曲のテーマとしても「前向き/前を向いて歩いている」というのを出していきたい。
「今の弘子さんの等身大」を表現出来るように、昭和のアーティストのような「演出されたアーティスト像」にはならないようにしてるかな。
SHU-TO: 確かに「日常的なテーマの楽曲」も多いですからね。
SHU-TO.が分析した近年の弘子さんサウンドの特徴/松野さんからのアンサー
SHU-TO: 今回松野さんからインタビューさせていただくにあたって「近年の弘子さんのサウンドの特徴」をいくつかまとめて来たんですけど、一緒に見ていただけませんか?
松野さん: あら〜ありがとう!楽しみ!
①ちょっと攻めたジャンルの楽曲が多い
SHU-TO: 近年の弘子さんの楽曲はバンドもののポップスが中心ですが、中にはニューウェイヴっぽいトラックだったり、ラップが用いられたりなど、攻めたジャンルの楽曲も存在されているように感じます。
それでも、アレンジの際は
「ピアノを基調に、優しいリズムやきらびやかな音色/楽器を使われて、一貫して"ポップ"に仕上げられている」
のが特徴の1つだと思いました。
この「攻めた曲が多い」「アレンジはポップに」という点は松野さんが元々意図されてるんですか?
松野さん: あー!何でだろうな〜。難しい…。
でも「長いキャリアのアーティストさん」がよく陥りがちな"惰性で何となく続けている感"が感じられるのはダサいじゃないですか(笑)。
だから"攻めたジャンルの曲が多い"のは「そうならないように!」って意識してるからかもしれない!
SHU-TO: そうだったんですか!?「結構色んなジャンルの曲があるけど優しい音だな〜」と思って聴いてました。
②トラックと弘子さんの歌声との化学反応/弘子さんの歌い方
SHU-TO: "そういったトラック"と"円熟した弘子さんの歌声"の組み合わせでまた新たな化学反応が生まれていると思います。
個人的に「弘子さんが90年代の楽曲ではあまり使われていなかった声の跳ね方やアクセントの付け方などを駆使されて歌われてるな〜」と感じたのですが、そのあたりはいかがですか?
松野さん: 確かにそうだね。声の出し方は弘子さんご自身にしか分からないけど…。
SHU-TO: 楽曲のジャンルごとに歌い方を変えられてて「歌い分けの技術が巧みすぎる…」と感じたんですよ。
「"カッコいいトラック"と"優しいトラック"で声の跳ね方が全然異なっている」ところとか。
松野さん: あー!それそうなんだよね!本当に僕もいつもビックリするんだけど…声優さんだからなのかな。
やっぱり声の幅が広いし、曲によってちゃんと「歌を演じる」ように歌い分けされるよね。
③所々のメロディに"アイドル歌謡っぽさ"を感じる
SHU-TO: 「最近の流行りの感じの曲調でも、少し懐かしさを感じる」
という点も特徴の1つだと感じました。
そう感じた理由は
「歌のメロディがアイドル歌謡っぽい点」
にあるのかなって思って。
松野さん: えっーとね、「アイドルっぽくしよう」とは思ってないけど、「若々しくあろう」とは思ってる!
だからそれが理由でそう聴こえるのかもしれない。元々弘子さんご自身も若々しい方だからね。そのイメージに合わせて作ってたらそうなっていって。
SHU-TO: となると「若いアーティストさんに曲を作るというイメージ」で制作されてるんですか!?
松野さん: そうしてる。「長いキャリアがあるから」とかは考えてないかな。
④ギターがカッコいい!!LIVE演奏を意識しているのかもしれない…
SHU-TO: 「曲中のギターがロックでカッコいい!!」って感じたんですけど、これはLIVEで演奏した時に盛り上がるように作られてるんですか?
松野さん: それはね〜「LIVE映え」とかは意識してなくて。
レコーディングでは、一緒に弘子さんの楽曲を制作してる海津信志くんがギターを弾くことが多いんだけど、ただ「海津くんのギターがカッコいい」からMIXの時に音が大きくなってるだけだと思うよ(笑)。
SHU-TO: じゃ「ギターが元からカッコいい」から印象的に聴こえるんですね(笑)。
松野さん: そうそう。レコーディングで良いプレイをした楽器はMIXの時に音が大きくなるからね!
「深化」で新たに3人のクリエイターさんが参加されている意図
SHU-TO: 続いて去年の11月にリリースされたEP「深化」について伺いたいと思います。
ほぼ全曲を松野さん&海津さんで制作されていた「New Kissako」と異なり、本作では新たに3人のクリエイターさんが楽曲を提供されていますが、これにはどういう狙いがおありなんですか?
松野さん: 元々"ひとり暮らしの小学生〜Tama & Friends〜New Kissako"への流れは
「良い流れが出来てそのまま突っ走った」
みたいな感じがあって、多分見え方としても
「弘子さんに新しいプロデューサーがついて、その座組でアルバムまで作った」
という空気感が感じられたと思う。
だからあの時はそれで良かったんだけど、
「"本来の笠原弘子"は色んな作家さんの色んなタイプの楽曲を歌いこなすアーティスト」
だったはずで、
「New Kissakoまでのコンセプトを今後も引きずっちゃいけないな。一段落させないと。」
って思ったんですよね。
松野さん: 弘子さんのキャリアを10〜20年後に振り返った時に「"2018年から松野恭平の曲しか歌わなくなりました"という歴史にしてはいけない」ということをまず思いました。
それはプロデューサー目線でも「そういうことはしちゃいけない」って思ったし、作曲家目線で見ても「それは重すぎて背負えない…」って思った(笑)。結構悩んだんですよ、「深化」リリースまでの間。
SHU-TO:「新しいクリエイターさんに楽曲を書いていただくかどうか」を悩まれてたんですね。
松野さん: 悩んだ結果、新しいクリエイターさんにも曲を書いてもらうことになったんだけど、
「弘子さんより年下のクリエイターさんたちが弘子さんの歴史を支える」
という見え方はアリだと思って。
「色んな作家さんの楽曲を歌う」というところは昔に戻しつつも、「"下から支えてる感"は昔とは違うように出来たらいいかな」って思って、「深化」の制作スタイルが出来上がった感じだね。
SHU-TO: 若いクリエイターさんも参加されてますよね。奥村アキラさんとか。
松野さん: 奥村さんもそうだね。やしこば(小林健二郎)さんも僕より……上か(笑)!
やしこばさんは僕より年上だった!でもみんな弘子さんより年下ってことで。
SHU-TO: 奥村さん、やしこばさん、青山亮さんが新たに参加されたことで、更に音楽ジャンルが幅広くなっているように感じています。
やしこばさんの「静かな夜に」はアンビエントっぽいですし、奥村さんの「BAYSIDE AMBLE」は令和ポップ(透明感のあるピアノロック)っぽくて。
そこに、海津さんによるファンク進行の「成せる業~ナセワザ~」や、松野さんによるカントリー進行の「ケセラセラなんて言いたくない」も収録されてて「カッコいいEPだな〜」って思って聴いてました(笑)。
松野さん: あー!嬉しい!
昔の作品をなぞって作っても正しい弘子さんの歴史にはならない
SHU-TO: その上で、
「松野さんがクリエイターさんに弘子さんの楽曲制作を依頼される時にどういう風に発注されているのか」
が気になっていまして。
例えば
「全く新しいものを作りたいので、昔の弘子さんの曲は敢えて聴かないで自由に作ってください」
ってクリエイターさんにお伝えされているのかと考えてました。
松野さん: そうだね。「◯年代の弘子さんっぽくっていうのはやらないでほしい」って言ってる。というのも「弘子さんの音楽性はずっと移り変わっている」のにそこでまた「昔っぽく戻しちゃう」のは違うと思うし。
ちゃんと「今の作家が今っぽい曲を書く」というのが流れとしては正しいと思ってる。
SHU-TO: やっぱりそうだったんですね…。
松野さん: ディレクション面だと
「大きなコンセプトだけ伝えて作ってもらった曲に、"僭越ながら…"って感じでちょっと注文を入れてる」
かな。
例えば、海津くんが作った「Lovely Treasure」は「イントロをちょっと変えてほしい」って言ったくらい。そんなもんです。
元々1番の後にあるロックっぽい間奏がイントロにもあったんだけど、アルバムの1曲目にしようと思ってたから、「明るく始まるようにイントロを変えてもらえないですか?」って頼みました。
それ以外は海津くんが作ったまんまだね(笑)。
SHU-TO: じゃ最初から"1曲目にする曲"として制作されてたんですね。
松野さん: そう。"1曲目 or シングル曲"として考えてた。
SHU-TO: やしこばさんの「静かな夜に」と奥村さんの「BAYSIDE AMBLE」もそういう感じのディレクションだったんですか?
松野さん: そうだね。「静かな夜に」は、最初に作ってもらった時は
「後半からアップテンポなビートが入って盛り上がるアレンジ」
だったんだけど、「最後まで静かなままでいいかも」って伝えて直してもらった(笑)。
松野さん: 「BAYSIDE AMBLE」も「イントロにギターソロもう1本入れてほしいな〜」って伝えたくらいかな。
SHU-TO: 次のアルバムもこの制作スタイルは継続なんですか?
松野さん: そう。次のアルバムもこの制作スタイルで、もうちょっと作家さんを増やして作れたらいいなって思ってます!!
弘子さんのバンド「ネコプリズム」について
SHU-TO: 最近の弘子さんは「ネコプリズム」というバンドをされてるんですよね?やしこばさんがバンマスで。
松野さん: そう。去年までは僕がバンドをやってたんだけど、今はやしこばさんに代わってもらって。僕も先々月に下の子供が産まれて忙しくなってきたのもあるし、そもそも僕は「自分は作曲家」っていう思いが強くて。。
「僕がギター弾くよりも誰かギタリストさんに入ってもらったほうが良いよな〜」って思ってたからクオリティを重視してこういう形になったね。
SHU-TO: じゃ「バンドのことはミュージシャンさんに任せよう」という意向でこういう形になられたんですね。
やしこばさんは先日のオーケストラでの食事会で初めてお会いしたんですけど、その時「小沢健二さんが僕の全てなんです!!」って熱く語られてて。。
なので「"渋谷系サウンドのスペシャリスト"のやしこばさんが手がけるバンドの音」と「近年の弘子さんの楽曲」はとても相性が抜群だと思ってます!
松野さん: うんうん。相性がいいよね!そう思う。
次回作がリリースされたらまたオーケストラジオでインタビュー回を
SHU-TO: 僕が伺いたかったことはこんな感じです!次の弘子さんのアルバムも楽しみにしてますね!
松野さん: ありがとうございます!
ちょっとまたね、次のアルバムが出たタイミングで、オーケストラジオの「SHU-TO.くん&松野」の回をやりたいなって思ってます。"NEWアルバムについてのSHU-TO.評"を伺えたら嬉しいなって(笑)。
SHU-TO: ホントですか!是非サウンドについて伺わせてください!
松野さん: 多分来年になると思うから、「SHU-TO.くん&松野」の回はまた1年後くらいにやれたら嬉しいです!
SHU-TO: 楽しみにしてます〜。今日はありがとうございました!