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明石市教育委員会主催研修「まなびプランをつかった保護者との連携」Vol.1

今年度よりLITALICO教育ソフトを市内全校の小中学校と養護学校に導入している兵庫県明石市にて、教育委員会主催でLITALICO教育ソフト(特に個別の教育支援計画と指導計画を作成することができる「まなびプラン」)を使った保護者との連携というテーマで研修が行われました。一般社団法人UNIVA理事の野口晃菜さんを講師に迎えた研修の様子をレポートします。

開催日時:令和4年8月8日(月)
場所:オンライン
参加者:37名

野口晃菜さんご紹介

一般社団法人UNIVA理事、国士館大学非常勤講師
LITALICO教育ソフトアドバイザー

小学校6年生~アメリカ・イリノイ州へわたり障害児教育に関心を持つ。小学校講師からLITALICOの研究所長としてインクルーシブな社会のための自治体・学校、少年院、刑務所との連携に取り組んだ。その後一般社団法人UNIVAの立ち上げに参画。NHKの番組監修や記事、書籍の執筆も行っている。

インクルーシブ教育システムとは

インクルーシブ教育システムは何かということをお話しするにあたって、まず2021年1月の「新しい時代の特別支援教育のあり方に関する有識者会議」報告に書かれている内容より、いくつか重要な点を抜粋してお伝えします。

・特別支援教育はすべての学校で実施
・共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システムの構築
・すべての教師に求められる資質、専門性
「新しい時代における特別支援教育の在り方に関する有識者会議」報告より(2021)

ここで注目したいのは、本報告において、すべての教師が身につけるべき視点として、障害者が受ける制限は障害により起因するものだけではなく、社会における様々な障壁と相対することによって生ずるという「社会モデル」の考え方を踏まえているということです。

医学モデル(個人モデル)と社会モデルとは

医学モデルは、障害のある人が社会に適応するためにはその個人の障害を改善したり、治療する必要があるという考え方です。一方で社会モデルは、個人と社会環境の相互作用の中に障害があるという考え方で、障害のある人がいることを前提として環境の側を変えていくという考え方です。

教育の文脈では、「その子の力を高める」という観点に経っているので医学モデル的なアプローチが多いですが、社会モデルの視点も大切だと考えます。車いすユーザーが中心となって設計されているため、健常者が利用しにくい飲食店を紹介している動画を視聴することで、社会モデルの視点がなぜ必要なのかを考えてもらいたいです。

このような動画を視聴すると、いかに私たちが当たり前に過ごしている日常は障害のない多数派を中心にしたものなのかが分かります。学校もその視点を大切にするべきではないのでしょうか。


困難さは環境との相互作用で起きる

大人でも自分自身に変化がある、または環境に変化があることで困難さを感じます。それは子どもも同じで、困難さの原因を考えることが重要です。また、困難さは個と環境との相互作用で起きますので、原因を考えるときに、個の要因だけに目を向けるのではなく、環境側の要因も考えられるといいですね。

例)教室をよく出て行ってしまうAさんについて、個と環境のミスマッチを考える
困難さが起きているときに、周りの環境はどうかなということを観察してもらうと、その困難が何によって引き起こされているのかが分かると思います。アプローチ方法に関しても、個と環境の枠組みで考えるとうまくいくことがあります。特に集団の中に入ると難しいお子さんについては、通常学級や交流学級の先生と一緒に解決方法を考えるとよいかと思います。

インクルーシブ教育システムの推進

インクルーシブ教育システム推進における最終の目標は障害の有無に関わらず、一人一人が自分らしく生きていく社会「共生社会の形成」です。

インクルーシブ教育を実現するためには「共に学ぶ」ということを最大限追及することが重要です。ただ一緒にいるのではなく、活動に参加し、充実した時間を過ごしつつ生きる力を身に着けていきます。そのためにも、基礎的環境整備や合理的配慮が必要不可欠です。

合理的配慮とは

合理的配慮はその人の権利なので、下記画像のようなプロセスで調整を図る必要があります。合理的配慮には、すぐに実施できることと、そうではないこと(例えば車いすユーザーの生徒のためにエレベータを設置するなど)があるため、すぐに実施できないことでも代わりにどのような配慮ができるかを相談して合意形成していくプロセスが大切です。

一度決めた合理的配慮は計画に書いて、それが適切であったかを評価する必要があります。個別の教育支援計画に合理的配慮について記載がされていることは、受験の時や就職の時に同様の配慮を受ける根拠になります。普段からそういった合理的配慮を受けてきたという実績や根拠がないと、実際に受験の際にテスト時間の延長や、問題にルビを振るなどの対応が難しい場合があります。

まなびプランと自立活動

自立活動は、障害による困難さを軽減するために特別に設けられている指導領域のことです。自立活動はすべての活動の土台となるため、自立活動の時間で指導するだけではなく他の時間も意識して指導をしていく必要があります。自立活動の指導内容で大切なことは以下のようなことです。

①通常の教育過程ではカバー出来ていないところを指導する
②一人一人に合わせて目標や内容を設定する

自立活動の内容は、どの障害種別でも活用できるよう6区分27項目が学習指導要領で設定されています。少々わかりづらいこともあるかもしれませんが、自立活動はすべての活動の土台となるので、子どもが障害とうまく付き合っていくためにとても重要な項目です。

(自立活動の指導例)
他の子や先生に困った時に伝えることが難しい子どもに対して、一緒にコミュニケーションカードを通級で作成し、それを通常の学級でも使えるように練習しました。はじめは通級に通っている子どもの合理的配慮を目的としてコミュニケーションの練習用に作ったカードでしたが、実際にこのカードを通常学級でも使ってみたところ評判がよく、あと3セット作ってほしいとの要望があったそうです。

子どもの障害種別や在籍学級に関わらずカードを活用するようになり、多様な子どもがいることを前提としたユニバーサルな学級づくりに近づいた例ともいえるでしょう。

まなびプランでの位置づけ

LITALICO教育ソフトの製品の一つである「まなびプラン」では個別の指導計画で指導の領域や目標、指導の内容を設定することができます。その際にアセスメントや児童生徒の願いなどいろいろな方法で児童生徒に適切な目標・手立てを設定できるようになっているのが特徴で、先ほどお伝えした自立活動の6区分27項目から目標を探すことも可能になっています。

どこから目標を選んでも自立活動の項目に結びついており、通級だけでなく通常学級でもどのようにして設定した目標を達成できるようにしていくのか、という視点を持ちながら計画を立てていただくことが大切かと思います。

自立活動の指導のポイント

自立活動の指導は以下のポイントに気を付けて行うと良いでしょう。

  • 自立活動の時間における指導と、それ以外の時間を連動させる

  • 通級や特別支援学級の対象でなくても、特別支援教育の対象児童生徒には土台に自立活動がある

  • 個別の指導計画に自立活動の目標と内容を明確に記載する

研修の続きはVol2の記事にお進みください。

特別支援教育に携わる先生方をサポートするために開発された「LITALICO教育ソフト」は現在全国で50自治体様ほどにご導入いただいております。初年度は無償トライアルという形での導入が可能となりますので、「LITALICO教育ソフト」について気になる方は下記問い合わせ先よりお問い合わせくださいませ。

お問合せ先

TEL 050-3138-4614(平日9:30-17:30)
Mail iep_sys4school@litalico.co.jp
HP https://s-edu-soft.litalico.jp/
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