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新オフィスを創る:MHAKインタビュー

神泉オフィスの来客用のエントランスは特徴的な壁面のある空間になっていて、そこには訪れた人を中に誘導するかのように、曲線的で流れるような柄が描かれている。アート作品をオフィスに取り入れるというS2 Factoryとしては新しい試みがどのように創られたのか、アーティストMHAKとのインタビューを通じてその背景を探る。

Interview: MASATOSHI PONY KOIZUMI (S2 Factory)
Photography: GAI NISHIDA (S2 Factory)

MHAK as MASAHIRO AKUTAGAWA

1981年 福島県生まれ。 デザイナーズファニチャーや内装、様々な空間に影響を受け、絵画をインテリアの一部と捉えた「生活空間との共存」をテーマに創作活動を行う。抽象表現を追求し曲線で構築し反復する独自のパターンで、個人邸やホテルなど数々の内装壁画を手掛ける。これまでに国内はもちろん、アメリカ(ニューヨーク、ロサンゼルス、ポートランド)、アルゼンチン(ブエノスアイレス)、オーストラリア(メルボルン、シドニー)、イタリア(ミラノ)等で作品を発表。また、故郷である會津とのアートを通じた積極的な取り組みや、アーティスト集団“81BASTARDS”の一員としても活動している。

01 依頼までの経緯について

―― 新オフィスが決まった時、この壁面で「何か」を作れたら面白いだろうと考えていて、真っ先に思い浮かんだのがMHAKでした。まず直接連絡して相談させてもらったわけですが、普段はどういった形で依頼を受けることが多いですか?

MHAK
基本的には直接の依頼が多いですね。

所属しているギャラリーからの紹介もありますが、やはり何かしらの繋がりがある方が仕事もスムーズに進みますし、内容にもよりますが、全く関係性がない場合だと『自分である必要があるのか』と考えてしまうこともあります。

ありがたいことに最近は色々なところから連絡をいただくことが増えてきましたが、人との繋がりを大事にしてきたという判断基準は今も昔も変わらないですね。

―― 確かに仕事にしろ遊びにしろずっと現場や人との繋がりを大事にしてますね。

MHAK
そうですね。我々の世界って“ノリ”が大事じゃないですか。

遊び回る中で人に出会って、そこから『何か一緒にやろう』という話になり仕事に発展することも多いですし、その方が自分としても楽しめます。

毎日のようにどこかしらに顔を出すので周りからはタフだと言われることもありますが、今後も変わらないでやっていきたいですね。じっとしている方が辛いですから。

―― 実際この件がきっかけで、MHAKがOMUSUbeeとコラボした商品を販売する際に撮影場所として使わせてもらえないかと相談がきたわけだけど、今まで自分たちの事務所をそういった形で利用することはなかったし、繋がりのある人たちと何かできるのは面白かったです。

会津木綿を使ったルームシューズ

02 空間および制作について

―― 企画を進めるにあたり、事務所まで来てもらって話をさせてもらいましたが、物件の最初の印象はどうでしたか?

MHAK
非常に面白い物件だと感じました。普段は壁面でも平面に描くことが多く、こういった曲面に描く機会は少ないのですが、それだけに楽しみでもありました。

ミューラル・アーティストの為に開発したペンキ「STOKE / ストーク」

―― 元々空間と調和させることが得意なことは知っていたので、今回は事前に大まかなイメージを共有するくらいで細かいデザイン・レイアウトなどは現場で決めていきましたがどうでしたか?

MHAK
そうですね、差し色を入れて欲しいということ以外は任せてもらいましたが、信頼して任せてもらえるのはありがたいですね。

内装を見た時にいいものが描けるだろうと確信があったので、下書きも作らずに現場で直接描いていきました。

下書きはなく全てフリーハンドで描く

―― エントランスから壁面を巻くように柄を描いてますが、このあたりは当初予定せずに現場で相談しながら決めましたよね。一緒に決めていくライブ感が楽しかったです。何もない状態から二日間で仕上げてしまったのはすごかったです。

MHAK
描いてる最中に少しトラブルがあったり、足場の問題でレイアウトを変更しましたが、この規模だと大体それくらいの期間で描いてしまいますね。

MHAKらしい綺麗に管理された仕事道具

―― 内装や家具はインテリアデザイナーの石井さんにお願いしていましたが、今回みたいに壁だけお願いする場合、デザイナーとの連携が難しいケースもあると思いますがどうですか?

MHAK
今回のように建築家さんと自分が直接やりとりせずに依頼主を挟むような場合は割と多いですね。
相手の世界観などを汲み取りつつ、納得してもらえるものを描くのは大変ですが、そこは自分の得意とするところでもあるので今回も石井さんに気に入ってもらえてれば嬉しいですね。

―― 実際、石井さんも気に入ってくれたので流石だなって思いましたね。

MHAK
腹を割って話さないとわからないところもあるけど、そう言ってもらえると嬉しいです。

―― 自分たちも普段は制作する側なので、その汲み取る力はすごく参考になりました。今回はデザイナー選定やMHAKへの依頼など、状況に応じてフリースタイルで決まっていった部分が多かったですが、結果面白いものができて楽しかったです。

03 感想および今後の活動予定について

―― 今回の制作を終えてどうでしたか?

MHAK
予想取り自分のアーカイブとしてもいいものができたと思ってます。

―― HIDDEN CHAMPIONでMAHK特集の時に、うちのオフィス写真を使ってもらって反響があったので嬉しかったですね。

―― 今後の予定を教えてください。

MHAK
個人で言うと、2 年前の2022年に渋谷のPARCO MUSEUMで個展をしたのですが、あれは今までの作品を見てもらうアーカイブ展だったので、来年は10年ぶりくらいに個展を開催する予定です。
今回は新しい自分を見てもらわないといけないので、その準備に日々追われています。

―― そうすると今は制作に没頭してる感じですか?

MHAK
今は準備段階で新しいものを作り始める前の段階ですね。まだ明確なアイデアがあるわけではないです。

―― まだ新しいアイデアが決まっていない中で、個展の日程だけ決まっているのはプレッシャーになりませんか?

MHAK
プレッシャーですが、逆にこうやって色々なところで話をすることで自分を追い込んでますね。今は日々インプットのため遊びに出て色々なものを吸収してます、そのうちこれだっていうものが降りてくるはずなので、それを待ってます。

―― ありがとうございます!来年の個展を楽しみにしています。

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