それだけ
磁石が地面に落ちる。落ちるはずがないのに。
枯葉が舞う。舞うわけないのに。
ドアが僕を襲う。襲うはずがないのに。
言葉が僕を表してくる。知ってるはずがないのに。
何でもない方がいいと彼は言う。なんでもない事が怖くて堪らないのに。
なんでもない事を望む君がいる。なんでもないのは君の方なのに。
素晴らしいはずのあの旋律が、上へ下へ右へ左へ並んで流れて壊れて音がない。
音の出ないスピーカー。画の出ないモニター。
微笑む犬。吠える猫。
僕はスポンジだと思っていた。吸ってはいて吸って吐いて。
今はどうだ、右から左へと、左から右へと流れていくだけ。
それだけ。
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