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aurora(3/3)
3
時は経つ。雪で見えなかった地面が少しずつその姿を現す。
もう会えない。あの日使ったギターはあの場に置いたまま。近づくことも出来ずにいた。もし彼が倒れていたらと思うと足が竦んだ。
きっと生きていても、もう嫌われてしまった。もうここにも現れることはないだろう。幻のようなものだったんだと言い聞かせる。あの時間は帰ってこない。
心に住み着いた彼を思う。何度も何度も繰り返す。考えることすら嫌になる。
aurora(2/3)
2
次の日も次の日も。ふらりとどこからか現れ。他愛もない話を一方的にしたかと思うと、俺が口を開けば静かに聞き、時に笑う狼の姿の悪魔に、彼の言った、仲間というものを、どこかで意識し始める。俺はいつの間にかこの悪魔に取り憑かれたようだ。
なかま。なら。見せてもいいのかな。
唯一できる特技は、ギターを弾き。歌を歌うこと。初めてできた仲間に。勇気を出して聞かせてみせると決めた夜。またいつも通りふらり
aurora(1/3)
1
雪のちらつく、雪深い山。森の中。
俺は狼族の狼だ。
いつも群れと少し離れた場所に一匹でいる。
慣れたかと言われたらよく分からない。
灰色の世界、自分ひとり青い毛並みで産まれてきた俺は群れでは、受け付けられず。親にすら見捨てられた……んだと思う。
幼い頃からずっと群れから離れて生きてきた。だからなんとも思わない。これが俺の普通。これが俺の毎日。
そんな毎日は良くも悪くも今日で終わってしまっ