懐@natsuki

あの日止まったままの時計の針が もう一度動き出した 描いた夢の続きを叶えるために 新し…

懐@natsuki

あの日止まったままの時計の針が もう一度動き出した 描いた夢の続きを叶えるために 新しいページをめくり……僕は刻む

最近の記事

aurora(3/3)

3 時は経つ。雪で見えなかった地面が少しずつその姿を現す。 もう会えない。あの日使ったギターはあの場に置いたまま。近づくことも出来ずにいた。もし彼が倒れていたらと思うと足が竦んだ。 きっと生きていても、もう嫌われてしまった。もうここにも現れることはないだろう。幻のようなものだったんだと言い聞かせる。あの時間は帰ってこない。 心に住み着いた彼を思う。何度も何度も繰り返す。考えることすら嫌になる。怯えるという事悲しいという事嬉しいという事。でもいなくなって初めて、今までにない

    • aurora(2/3)

      2 次の日も次の日も。ふらりとどこからか現れ。他愛もない話を一方的にしたかと思うと、俺が口を開けば静かに聞き、時に笑う狼の姿の悪魔に、彼の言った、仲間というものを、どこかで意識し始める。俺はいつの間にかこの悪魔に取り憑かれたようだ。 なかま。なら。見せてもいいのかな。 唯一できる特技は、ギターを弾き。歌を歌うこと。初めてできた仲間に。勇気を出して聞かせてみせると決めた夜。またいつも通りふらり現れた悪魔。 今日は、ちょっと、みせたいものがある。とだけ告げる。 自分のお

      • aurora(1/3)

        1 雪のちらつく、雪深い山。森の中。 俺は狼族の狼だ。 いつも群れと少し離れた場所に一匹でいる。 慣れたかと言われたらよく分からない。 灰色の世界、自分ひとり青い毛並みで産まれてきた俺は群れでは、受け付けられず。親にすら見捨てられた……んだと思う。 幼い頃からずっと群れから離れて生きてきた。だからなんとも思わない。これが俺の普通。これが俺の毎日。 そんな毎日は良くも悪くも今日で終わってしまったらしい。夕焼けに照らされ空から現れる大きな翼。 ヒトリで何やってんの??

        • 夕暮れ時

          夕暮れ時。 線路沿いの道。 カタンコトンと電車は走る。 風に乗って遠くで聞こえた。 寒いねと何気ない会話にも 返せない程溢れそうな言葉 聞こえてしまいそうな心音 そんな時は 立ち止まって距離を置く かじかむ指をポケットに入れると かちゃりと小銭とジッポが当たる また一呼吸。 紫煙が後ろへ後ろへとゆっくり流れる 抑えなきゃ わかってるだろう 自分のキモチに蓋をする 決して向けてはいけない感情 なんで。どうして。いつから 自分はこんなにも醜く卑しい 前を歩く背中。