aurora(1/3)


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雪のちらつく、雪深い山。森の中。

俺は狼族の狼だ。
いつも群れと少し離れた場所に一匹でいる。
慣れたかと言われたらよく分からない。
灰色の世界、自分ひとり青い毛並みで産まれてきた俺は群れでは、受け付けられず。親にすら見捨てられた……んだと思う。
幼い頃からずっと群れから離れて生きてきた。だからなんとも思わない。これが俺の普通。これが俺の毎日。



そんな毎日は良くも悪くも今日で終わってしまったらしい。夕焼けに照らされ空から現れる大きな翼。


ヒトリで何やってんの??


俺の周りをバサりと旋回しながら降りてくるモノ。鳥とは違う羽。……悪魔族??聞いた事しかない、象徴する大きな翼と大きな角、手足の長い爪。遠く周りを見回し、悪魔は茶化したようにそう言い。群れを一瞥してからまたこちらに目をやった。


まるで独りで居ることを言われたようで、何故かちくりと胸が傷んで、その場から離れるように早足で歩き出す。けれど。悪魔は追いかけてくる。

どこまでもついてくる悪魔に諦め、立ち止まる。


……なんでついてくるんだ


だってお前逃げるんだもん


逃げるから追いかけたかったのかもね。ケケといたずらに笑って返された。


で??なんで逃げてんの。俺怖い??


群れの中では自分に興味を持たれることもない。まるで見えていないよう。そこに俺はいない。毛並みの青い狼なんて珍しいのはそっちじゃないのか??……久しぶりの感情に頭がついて行かない。一方、悪魔族を見るのは初めてか……と独りごちて。

やっぱこの姿じゃ怖いよな……と言った悪魔は自分と同じような青い毛並みの狼へと姿を代え。これなら怖くないだろうと問いかけてくる。その光景に思わずこくり、と頭を下げた。
変わった自分の姿をまじまじとみながら。


そいや。みんなあっちいたけど。なんで一緒じゃないんだ??行かなくていいのか??

別に……

ふうん。

……俺………周りと、違うから……
自分の手足を見ながら
ぽつりぽつりと言葉を紡ぐ。


なんだそんなことか、


今は俺と同じだぞ??とくるりとその場で回ってみせる。ふわりと青い尻尾が揺れた。

なってやるよ、今日から俺が。仲間に。あまりにも軽く交わされた言葉に俺は圧倒され。心の中に踏み込んでくる悪魔をどうしていいかわからない。




まぁ今日は帰りますよ、と。
なあんか歓迎されてなさそうだし。

ざわめき出す群れを横目に


……またね。


風が巻き起こったと思うと元の悪魔の姿。大きな翼を広げ、まだちらつく雪の空へ離れていった。
いったい何が起きたのか。ただ胸がどくりどくりと脈打ちほんの少しだけ暖かくなった手を握った。

つづく