2021年共通テスト<化学>個人的レビュー

2021年共通テスト化学、全問解答するのに40分かかりました。参考までに、センター試験が軒並み30分前後で解けていた、ただし昨年は45分要しました。
全体的な感想としては、「これセンター試験の延長線上だね」という問題と「これ二次試験だね」という問題がはっきりしており、立ち回りの判断さえしっかりとやれるかどうかがカギだったと思います。化学を二次試験で使い、二次試験の対策をしていた人にはそこまで苦労しなかったのではないか?(ただし満点を取るのはしんどいと思う)、一方で化学不得意という人には相当きつく、予想平均点は53点程度と予想します。毎年当たらないのですが、、、
解説・分析、というよりも個人的感想を以下に記します。なお、共通テストへの賛否はここでは言及しません。ネタバレ注意!(高2以下の人は解いてから読んでください)

第1問
問1 センター試験の延長(センター試験そのもの?)の点取り問題。
問2 同上()
問3 同上()
問4ーa 蒸気圧の演習をしっかりやっていればなんてことはないが、蒸気圧がわかっていないとアウトであろう。なお、「値が1刻みでない軸」を持つグラフを読み取らせたいという意図を感じる(値を選ばせるのではなく、答えさせている)けれど、大学へ行きたいならばこれくらいは読み取れないとね(10が5分割されているので、1目盛りが2刻み)。
問4ーb まず問題文に書いてあることを読めば、最初は気液平衡で温度を上げたら全部蒸発したことは容易にわかる。とすると①か②である。あとは、たとえば計算しやすい27℃(300K)での全気化状態の圧力をざっくりと計算してみると(選ぶだけだからざっくりで問題なし)3×10⁴Paであることがわかり、①とわかる。まじめに計算するだけが能ではない。

第2問
問1 酸化チタンの光触媒作用は日本人(藤嶋昭御大)が発見者ではあるし聞いたことがあってほしいところだが、知らなくても「光合成に当たる反応はグルコースの燃焼の逆反応なんだから吸熱でしょ」と言えてほしい。
問2 出題ミスだというつもりはないけれど、問題文を読んで、「生成した水は電池から出ないということでいいんだろうな・・・?他に物質が電池から出たり入ったりすることはないんだろうな?」と考え、問題を3回くらい読み返した。それを書いてしまうとヒントになってしまうということなのかも知れないけれど、酸素が空気中から取り込まれるという問題である以上、それ以外の物質の出入りは無いということを、何らかの形で示す必要があるのではないか。むず痒さを覚える。
問3ーa 状態図の形を覚えていて、かつ見方がわかっていれば楽勝。なお状態図はちゃんと書いたほうがよい(心の中で思い浮かべるだけだとミスする危険が大)。状態図を忘れていたとかわからないという状態だと沈没。
問3ーb 問題文にちゃんと「水素結合1本あたり水2個が関与している」と書いてあり、水分子1個あたり「正味で」4本の水素結合をしていると考えるとアウト。0.5本が4つで正味2本と考える(SiO2において、SiにO4個が結合しているからSiO4だ!と考えるとアウトなのと同じ)。これは正解率が低そう。
問3-c 化学エネルギーは温度によって異なる・・・ということを考えたことがある高校生はごく僅かなのではないか。そんなこと思ったこともないという人がほとんどのはずで、そういうところを基本事項の根幹のところで突いてくるのであれば、せめて問題文に「化学エネルギーは(実は)温度によって変わる」ということを書いておいてあげてほしかったというのが個人的感想。

第3問
問1 点取り問題でしょう。
問2 同上。「知識偏重を脱するんだ!」と言っていても、知識は必要、ただし知識だけでは解けない。
問3 aは知識から瞬時でしょうね。b、cは問題が言っていることを丁寧に読み取る必要がある。cは計算もしっかり要求される。なんといっても鉄とシュウ酸の錯イオンを壊し、それ以外に反応でできたシュウ酸イオンも定量の対象になっているので、数量関係をしっかり捉える必要がある。そして「反応で減少したシュウ酸イオンは合計で0.0027mol→反応で減少したFe3+錯イオンはその2倍の0.0054mol反応で減少した」を見抜ける必要がある(bがヒントになる)。これは早稲田あたりで出てもおかしくない問題。

第4問
問1 点取り問題でしょう。
問2 点取り・・・だと思うけど、「乾性」と「硬化」は違い、かつ乾性が酸化で硬化は寧ろ還元に当たる!(付加と考えるのが普通だけれども)ということでひっかかった人が結構いそう(出題者がそれを狙ったか?は不明だけれど)
問3 これも普通の問題。アルコールの分子内脱水でシストランス異性を考える必要があるが、問題文にそう書いてあるのでひっかかったら恥ずかしいよ~(どうせなら「立体異性体も区別する」とすればよかったのに:これ書くなら空気電池の問題でもきちんと酸素以外の物質の出入りはない旨を書いて欲しかったなあ)
問4 これは点取りかな。もっとも、高分子のきっちりとした知識が必要なので、コロナのため学習が間に合わなかった人にはきつい。
問5 これはどちらかというと算数だね。読み取れれば難しくない(脱水縮合されているから分子量から18を引き忘れたうっかりさん用の選択肢①もしっかり用意されている)
第5問
問1 a,b,cと3問あるが、いずれもグルコースの問題のふりをした平衡の問題。鎖状構造は「僅かなので無視してよい」とあり、ということは平衡定数がいたってシンプルな形になるため、計算も楽。cはまともにバランスシートを考えたりせず、「βーグルコース0.10molを追加したといっても、それαーグルコース0.20molで反応を開始したのと同じことだよね!」と考えれば、「平衡のときの量もα、βのいずれも2倍だね」とすぐわかる。bは方眼紙を使わせたいようだけれど、「つまりグルコースが0.066molになるところだよね、それ0.5hと1.5hのあいだじゃん、それ選択肢から1つしかないじゃん」とすぐわかるよね・・・?
問2 グルコースの1位にメタノールが脱水縮合しているので、水に放り込んだだけでは何も(開環も)起こらない(とても長い時間放置しておけば別だけど、目盛りにちゃんと5時間が書いてある)。ただこのタイプの選択肢で①を選ぶのは勇気が必要かもしれない。
問3-a 一瞬「ん?」となったが、Yがアルデヒドで、ZはYを酸化したものだ、そしてそれは選択肢の中では1つしかないということ。
問3-b 読み取れれば楽勝。グルコースが分解されて、aで考えたホルムアルデヒドとギ酸「のみ」ができる(問題文に書いてある)。いずれも炭素原子を1個だけ含む。そしてそれが2molと10molできる。つまり炭素原子が12mol。グルコースには炭素が6個あるので、元のグルコースは2mol!


ところで、苦労しそうな問題は(個人的に思うところだが)第2問 問3-c、第3問 問3ーcの2つだけ(第2問 問3-bも正答率が低いかもしれないが時間をかけて悩む問題ではなくさっさと解いて間違えてしまうタイプ)。この2問の配点は合計8点なので、「90点以上を取りたい」というのであればこの2問を後回しにしてしまうのがよい、こうなると、いわゆる難関大を受験するという場合でも立ち回り方が重要だということになりそうで、このようなことも含めてもやっぱり二次試験っぽくなったよなあという感想を持っています。ただ来年以降は苦労する問題の割り合いが増えることもあり得るので、立ち回り(全体を見て、頭から解いていくか?難しい問題は後に回すか?など考える)の判断は来年も大事になりそうです。

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