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週末読書メモ128. 『数の発明 私たちは数をつくり、数につくられた』

(北海道十勝の農家6代目による週次の読書メモ)

概念が、いかに世界の中で作られ、育ち、影響を与えるのか。

その示唆に溢れる1冊。


「数」。

あまりにも、当たり前のものすぎて、改めて考え直すことすら無い概念。

筆者は、前々回に取り上げた『ピダハン』の筆者の実子であり、幼少期にアマゾンの奥地で、数の存在しない世界で生きた経験があります。

その経験がある筆者だからこそ、改めて、数という概念自体を、数と世界の関係を見つめ直した内容となっています。


人間も他の動物と変わらず、3を超える量は常に的確には把握できないーー数がなければ。数を知らないとすると、3を超える対象を知覚した場合、その量はだいたいこのくらい、と推測することしかできない。

まず大前提として、過去の何千前、何万年前の歴史を辿ると、人類すら3を超える対象を知覚できていなかったと言います。

数の言葉と感情習慣は、人間の数的思考の精度を一段と磨き、生まれ持った脳の自然な発達だけでは到達できないところへ引き上げる。これが、数を数えたり計算したりする能力が発達し、受け継がれている社会で成長することの帰結だ。そのような伝承と能力とは、結局のところ数の言葉の存在の上に成り立っているのである。

正確な数量を、言葉で、あるいは言葉を用いず身振りなどで表現する行為は、わたしたちの営みの、知的可能な側面のほとんどすべてに変化をもたらしてきた。

そこから、これである。ピラミッドを含む巨大な遺跡、そして、農耕社会の実現には、数という概念が不可欠です。

数という概念が生まれ、計数力も高まる中で、社会や文化、人々の思考や思想の成長へ変化を与えていったと。


ある文化と文化が、数をはじめとする数量を扱う道具を採り入れるよう、相互に圧力を及ぼしあってきたという構図だ。
(中略)文化習俗の変化は往々にして、数を扱う道具を新たに獲得することが必要で、新たに獲得された道具がまたさらなる文化的行動の変容を促し、それがまた、数体系をさらに高度化する。それがまたさらに…と続く。

数の言葉と感情習慣は、人間の数的思考の精度を一段と磨き、生まれ持った脳の自然な発達だけでは到達できないところへ引き上げる。これが、数を数えたり計算したりする能力が発達し、受け継がれている社会で成長することの帰結だ。そのような伝承と能力とは、結局のところ数の言葉の存在の上に成り立っているのである。

そうだよなあ…ただの数字としてしか扱えないのか、四則演算から微分積分、確率まで扱えるのか。

昨今だと、コンピュータサイエンスの隆興の土台ともなっている数学。これまでも、そして、これからも、数の言葉の高度化によって、社会が更なる進化をする未来は予見されます。

(数体系が進化するほど、脳の自然な発達から乖離すればするほど…起こり得るのは、より一層の格差で。改めて、数学を学び直したい…!)


言葉の形式は思考の形式を生む。
(中略)数を持たない社会を順繰りに見てきた結果、わたしたちは数の言葉が人の思考プロセスに違いを生むと結論するに至った。
(中略)数の言葉に通じ、数える習慣のある者だけが数量のほとんどを正確に分別できるのだ。

本書でのテーマは「数」でありましたが、総じて言えることは、言葉(つまり概念)が、人の思考プロセスに大きな影響を与えるということ。

人間が生存し、適応するための手法をどんどん研ぎ澄ましてこられたのは、「文化的ラチェット」のおかげだ。
(中略)言い換えると、わたしたち人間の種としての成功は、集団を構成する個々人に、先人たちや同時代人たちの行動のうち有利なものを学び模倣する力があったことに大きく預かっている。

言葉によって、人の知覚は変わり、それは、伝承ことができます。

自分はどのような言葉を知るべきか、また、どのような言葉を作り、広めることができるか。

そんなことも、改めて思い考えさせられる1冊となりました。


【本の抜粋】
人間が生存し、適応するための手法をどんどん研ぎ澄ましてこられたのは、「文化的ラチェット」のおかげだ。
(中略)言い換えると、わたしたち人間の種としての成功は、集団を構成する個々人に、先人たちや同時代人たちの行動のうち有利なものを学び模倣する力があったことに大きく預かっている。

人間も他の動物と変わらず、3を超える量は常に的確には把握できないーー数がなければ。数を知らないとすると、3を超える対象を知覚した場合、その量はだいたいこのくらい、と推測することしかできない。

子宮は、すべての刺激を退けられるわけではなく、わたしたちはまず子宮の中で、それ以後もずっとわたしたちの認知や行動に影響を及ぼし続ける物体ーー指と初めて出会う。
(中略)少なくとも大多数の人にとっては、こうした数の言葉、それも多くは手指をもとにしている言葉群が、整数の世界への入り口になる。

数の言葉と感情習慣は、人間の数的思考の精度を一段と磨き、生まれ持った脳の自然な発達だけでは到達できないところへ引き上げる。これが、数を数えたり計算したりする能力が発達し、受け継がれている社会で成長することの帰結だ。そのような伝承と能力とは、結局のところ数の言葉の存在の上に成り立っているのである。

言葉の形式は思考の形式を生む。
(中略)数を持たない社会を順繰りに見てきた結果、わたしたちは数の言葉が人の思考プロセスに違いを生むと結論するに至った。
(中略)数の言葉に通じ、数える習慣のある者だけが数量のほとんどを正確に分別できるのだ。

ある文化と文化が、数をはじめとする数量を扱う道具を採り入れるよう、相互に圧力を及ぼしあってきたという構図だ。
(中略)文化習俗の変化は往々にして、数を扱う道具を新たに獲得することが必要で、新たに獲得された道具がまたさらなる文化的行動の変容を促し、それがまた、数体系をさらに高度化する。それがまたさらに…と続く。

正確な数量を、言葉で、あるいは言葉を用いず身振りなどで表現する行為は、わたしたちの営みの、知的可能な側面のほとんどすべてに変化をもたらしてきた。

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