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週末読書メモ100. 『老人と海』

(北海道十勝の農家6代目による週次の読書メモ)

「だが、人間ってやつ、負けるようにはできちゃいない」

「叩きつぶされることはあっても、負けやせん」

まごうことなき名作。

人間の精神を偉大さを円熟の筆で描き切った傑作。


アメリカが産んだ文豪アーネスト・ヘミングウェイ。

文庫累計は500万部。著者の文学的到達点にして、ノーベル文学賞を受賞した作品が本書『老人と海』。

その内容はわずか130ページほど。読み始めて、息の吐く間もなく、ラストまで駆け抜ける作品。2日をかけゆっくり味わうことも許されない、勢いや魔力すら感じる物語でした。


毎日が新しい日だ。運が向けば言うことはない。とにかく正確な手順を守ることだ。加えて運が向けば、何もかもうまくいく。

「あれこれ考えるなよ、じいさん」老人は声を出した。「このまま進んで、いざとなったら受けて立ちゃいいんだ」

本書の解説にもある通り、読者の心を打つのは、次々に迫る困難・不条理に直面しながら、体力と知力の限りを尽くして老人が渡り合うその姿。

本書を執筆した際、ヘミングウェイ自身の年齢は51歳。

その年齢ながら、30歳のも年下の女性に恋をし、執筆活動にも意欲的であり、人生に対しての活力も満ちていたヘミングウェイ。

しかし、避けられないその”老い”。前進と後退の相反する事象のせめぎ合い中だからこそ、絞り出される強さと儚さが、前回の『風姿花伝』と同様に、この作品の中にも滲み出てきます。


嗚呼…そうか。

塩沼亮潤さん然り、『老人と海』の主人公ヘミングウェイ然り。

どこまでも肩の力が抜けていて、けれど、揺るぎない強さを持っている方に対峙することがあります。

どうやったら、そんな境地に辿り着けるのだろう。解は見えていませんでしたが、本を通じて、その内実に触れることが出来ます。

そうか…まずは、その困難・脅威・峻厳さに抗おうというのではなく、ただただ受容れることが重要だったのか。

受け容れるを経て、ただ一心に自らの生命を前に進めていくと。

漁師は老いていた。
(中略)全身、枯れていないところなどないのだが、目だけは別だった。老人の目は海と同じ色をしていた。生き生きとしていて、まだ挫けていなかった。

(ヘミングウェイ自身、どんな困難や老い、変化があろうと、『老人と海』の主人公のように、生命を燃やし続けていたかったんだろうなあ…)


「だが、人間ってやつ、負けるようにはできちゃいない」老人は言った。「叩きつぶされることはあっても、負けやせん」

どう生きようと、この世界・生命は、人がどうこう出来るものではなく。

だからこそ、せっかくなら、やれるだけやろうと。

そんな生き方を、物語を通じて示してくれる素晴らしい名作でした。


【本の抜粋】
漁師は老いていた。
(中略)全身、枯れていないところなどないのだが、目だけは別だった。老人の目は海と同じ色をしていた。生き生きとしていて、まだ挫けていなかった。

老人の頭のなかで、海は一貫して”ラ・マール”だった。スペイン語で海を女性扱いしてそう呼ぶのが、海を愛する者の慣わしだった。
(中略)老人はいつも海を女性ととらえていた。大きな恵みを与えてくれたり、出し惜しみしたりする存在ととらえていた。

毎日が新しい日だ。運が向けば言うことはない。とにかく正確な手順を守ることだ。加えて運が向けば、何もかもうまくいく。

「だが、人間ってやつ、負けるようにはできちゃいない」老人は言った。「叩きつぶされることはあっても、負けやせん」

「あれこれ考えるなよ、じいさん」老人は声を出した。「このまま進んで、いざとなったら受けて立ちゃいいんだ」

運というやつはいろんな形で現れるものだ。としたら、どうしてそれと見きわめがつく?まあ、どんな形でもいただけるものはいただいて、先方の言い値を払ってやろうじゃないか。

道の先の小屋では、老人がまた眠り込んでいた、うつ伏せになったままの老人を、少年がそばにすわって見守っていた。老人はライオンの夢を見ていた。

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