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週末読書メモ54. 『人を助けるとはどういうことか 本当の「協力関係」をつくる7つの原則』

(北海道十勝の農家6代目による週次の読書メモ)

支援の価値・意味を考え直される一冊。


帯に書かれたコピー、「どうしたらあの人の役に立てるのだろう?」。

この本では、「協力関係」の原理原則が読み解かれていきます。本書の素晴らしい点は、一見精神論かと思いきや、その中身は、理論と具体例が連ねられた極めて実務的であることです。

支援とは、人間関係の基本である。

仮にあらゆる文化が、人間関係においてどれだけ相手を尊重しているかを定義する公正さや互助と行ったルールで支配されるとすれば、交換される社会的通貨は何か。それは愛情、思いやり、認識、受容、賞賛、そして支援である。

著者エドガー・H・シャインさんは、「支援とは、人間関係の基本である」と述べた上で、社会的通貨でもあると言います。

つまり、支援を機能させられなければ、関係性・社会が上手く成立しないことに繋がります。


その上で、本書が過去の協力や支援に関する論考と一線を画すことは、クライアントと支援者の力関係の不均衡さを問題視したことです。

当初の力の不均衡 ー クライアントが支援者に依存するという暗黙の了解と、クライアントと支援者のそれぞれが当然相手に期待しているものの曖昧さ ー のせいで、両者に不安感と緊張感が生まれている。これには対処しなければならない。

どんな支援関係においても最初は、またその後も、重要なのはクライアントの問題の中身や支援者の専門的知識ではなく、本当に必要なものを双方が理解するためのコミュニケーションのプロセスなのである。

一般的に、クライアントに対し、支援者の方が力が上になりがちですが、著者は、双方が尊重されつつ、公平である方が望ましいと言います。この真理に至れたのは、本当の意味で人の役に立つ、立ち続けることの難しさから、著者が目を逸らしてい無いからです。

現実、「親切のつもりで」、「相手の助けになるように」とった行動が、実は相手にとってはそうでなかったということも少なくありません。それを起こす原因こそ、クライアントと支援者の力の不均衡にあると、著者は突き詰めました。

確かに…これは本当にその通りで。

多様さとフラットさを備えた組織は、多様な情報が交わる場を創出するため、イノベーションの鍵として取り上げられます。ただ、それだけに留まらず、日々の活動においても、支援・協力がより大きなアウトプットに繋がるのは、大きな示唆があります。


また、監修者の金井壽宏さんは、有名な『サーバント・リーダーシップ』の監訳もされています。

従来のリーダーシップとは異なるあり方を示した有名な一冊。トップダウンは、もちろん早いです。しかし、トップダウンだけでは、実現できないフラットな繋がりによる価値の創出があると。

ただ、その上で、いかにスピード感やオーナーシップをも伴う組織を作り上げていくべきか。

ああ…それを実現されているのが、アメリカの巨大テックカンパニーのGoogleやNetflixなのか…

TOYOTAやドラッカーという、一時代前のベストプラクティス・理論から学べることは多く、今でも拠り所にし続けているけれど、今の世界の最先端をもっと知る必要があるなあ…そこにレガシー産業の突破口があることは間違いありません。

話が広がってしまったけれど、支援学の重要性を心に入れるとともに、無知の知、学びの穴を常に気付けるようにしていきたい。


【本の抜粋】
支援とは、人間関係の基本である。
(中略)支援の状況がほかの状況と違うのは、誰かに何かを成し遂げさせようと、人が意識的に手を貸そうとする点である。

われわれは人生の早い時期に、二つの文化的な原則を学ぶ。最初の原則は、二つのグループの間におけるあらゆるコミュニケーションが、相互的なプロセスであるべきだということだ。
(中略)二番目の基本的な原則は、文明社会におけるあらゆる関係の大部分が、年少期に演じるすべを身につける、台本どおりの役割に基づいているということだ。

仮にあらゆる文化が、人間関係においてどれだけ相手を尊重しているかを定義する公正さや互助と行ったルールで支配されるとすれば、交換される社会的通貨は何か。それは愛情、思いやり、認識、受容、賞賛、そして支援である。

支援者になりそうな人に暗示しておきたいのは、社会経済と、われわれが暮らしている社会という劇場を意識することだ。
(中略)誰もが心得ておかねばならないことがある。日々の生活の中で、支援そのものが重要な社会的通貨であり、適切な対応がされなければ不均等が生じるということだ。

当初の力の不均衡 ー クライアントが支援者に依存するという暗黙の了解と、クライアントと支援者のそれぞれが当然相手に期待しているものの曖昧さ ー のせいで、両者に不安感と緊張感が生まれている。これには対処しなければならない。

どんな支援関係においても最初は、またその後も、重要なのはクライアントの問題の中身や支援者の専門的知識ではなく、本当に必要なものを双方が理解するためのコミュニケーションのプロセスなのである。

支援関係における7つの原則とコツ
原則1 与える側も受け入れる側も用意ができているとき、効果的な支援が生じる。
・コツ1 支援を申し出たり、与えたり、受け入れたりする前に、自分の感情と意図をよく調べること。
・コツ2 支援したいとか、支援されたいとかという自分の欲求がよくわかるようにすること。
・コツ3 支援しようという努力が快く受け入れられなくても、腹を立てないこと。
原則2 支援関係が公平なものだと見なされたとき、効果的な支援が生まれる。
・コツ4 支援を求める人は気まずい思いをしているということを思い出そう。だからクライアントの本当の望みは何か、どうすれば最高の支援ができるかを尋ねること。
・コツ5 あなたがクライアントなら、何が役に立ち、何が役に立たないかというフィードバックを支援者に与える機会を探そう。
原則3 支援者が適切な支援の役割を果たしているとき、支援は効果的に行われる。
・コツ6 まずは調べてから、どんな支援の形が具体的に必要とされているかを推測すること。
・コツ7 支援する状況が続く中で、あなたの演じている役割がまだ役に立つものかどうか、定期的に調べること。
・コツ8 あなたがクライアントなら、もはや助けられていないと感じたとき、恐れることなく支援者にフィードバックを与えよう。
原則4 あなたの言動のすべてが、人間関係の将来を決定づける介入である。
・コツ9 支援者としての役割の中では、人間関係に与えそうな衝撃によって、自分の言動をすべて評価すること。
・コツ10 あなたがクライアントなら、やはり自分のあらゆる行動がメッセージを伝えていることを自覚するべきだ。
・コツ11 フィードバックを与えるときは、現実の姿の記述にとどめるようにし、判断は最小限に抑えること。
・コツ12 不適切な励ましは最小限にすること。
・コツ13 不適切な修正は最小限にすること。
原則5 効果的な支援は純粋な問いかけとともに始まる。
・コツ14 純粋な問いかけからつねに始めるべきである。
・コツ15 求められた支援がどれほどお馴染みのものに聞こえても、これまで一度も聞いたことがない、まったく新しい要求だとして考えよう。
原則6 問題を抱えている当事者はクライアントである。
・コツ16 関係を築くまでは、クライアントの話の内容に関心を示しすぎないよう注意すること
・コツ17 あなたがすべて知っていると思う問題とどれほど似ているようでも、それは他人の問題であって、あなたのものではないことを絶えず思い出そう。
原則7 すべての答えを得ることはできない。
・コツ18 支援の対象となる問題を分かち合うこと。

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