見出し画像

週末読書メモ96. 『Humankind 希望の歴史 人類が善き未来をつくるための18章 』

(北海道十勝の農家6代目による週次の読書メモ)

本書では、ある過激な考えを述べよう。
(中略)それは、「ほとんどの人は本質的にかなり善良だ」というものだ。

世界は移り変わり続ける。そんなことが思い返される1冊でした。


昨年度の話題作のひとつ『Humankind』。

ホッブズのいう「万人の万人に対する闘争」からはじまり、性悪説よりの世界観でヒエラルキー社会を築いてきた近現代。

そんな時代に対し、人間の生来の本質、そして、これからの世界に対して、一石を投じた内容となります。


人間は本質的に利己的で攻撃的で、すぐパニックを起こす、という根強い神話がある。
(中略)「人間の道徳性は、薄いベニヤ板のようなものであり、少々の衝撃で容易に破れる」という考え方だ。真実は、逆である。災難が降りかかった時、つまり爆弾が落ちてきたり、船が沈みそうになったりした時こそ、人は最高の自分になるのだ。

ほとんどの人間は信用できない、とあなたが思うのであれば、互いに対してそのような態度を取り、誰もに不利益をもたらすだろう。他者をどう見るかは、何よりも強力にこの世界を形作っていく。
(中略)本書では、人間性についての肯定的な見方が正しいことを裏付ける、数々の科学的証拠を提供しよう。わたしたちがそのような見方を信じるようになれば、それはいっそう真実になるはずだ。

筆者ルトガー・ブレグマンさんも、人間は清濁併せ吞む複雑な存在であることを認めます。その上で、善き存在でいられることを信じ、それが前提となる社会の方が望ましいのではと。

その背景としてあるのは、近現代世界の成長の根幹となった資本主義・実力主義社会における功罪。

その詳細は、マイケル・サンデルさんの著書『実力も運のうち』に譲るとして、本作の筆者も同様の問題提起をします。


現代世界特有の分断や歪み。

それを解消する手段こそ、人間性を肯定的なものだという前提のもとに、企業や社会のシステムを進化させること、そう述べます。

本書の中では、政治分野・企業分野ともに、「冷笑から参加へ」、「両極化から信頼へ」変えた実例が紹介されています。

(企業側の例では、数年前に話題になった「ティール組織」を)

様々な考察が載せられている本書の中でも、特に示唆が大きかったのは、一個人としての処方箋です。

見知らぬ人との交流は、学ぶべきことであり、子どもの頃から始めるのが望ましい。
(中略)「旅行は偏見と頑迷さと狭量さを打ち砕く」
(中略)最も注目すべきことの一つは、自らのアイデンティティを保持できて初めて、偏見を排除できるということだ。誰もが違っていても何も問題もないことを、わたしたちは理解しなければならない。しっかりした基盤があれば、自らのアイデンティティのための頑丈な家を建てることができる。
そうすれば、そのドアを開け放つことができる。

世界の分断が深い問題となっている理由は、相手の世界を知らないこと、そして、受け入れられないことが大きいです。

それを打ち解かす鍵が、この抜粋の中にあるように思えてなりません。


本書の内容は、先史時代から近現代、そして未来にまで。

現代の性悪説寄りなシステムも含め、歴史を対局的に捉えると、ある時代の常識やシステムは、一過性のものでしかないことが再確認します。

その上で、現在は過渡期だと。

一気には変わらない。しかし、うねりを起こしながら、確実に変わっていくことも、また世界の理です。

「旅行は偏見と頑迷さと狭量さを打ち砕く」

偏見と頑迷さと狭量さを越え、これからの世界を生きていきたいなあ。


【本の抜粋】
本書では、ある過激な考えを述べよう。
(中略)それは、「ほとんどの人は本質的にかなり善良だ」というものだ。

人間は本質的に利己的で攻撃的で、すぐパニックを起こす、という根強い神話がある。
(中略)「人間の道徳性は、薄いベニヤ板のようなものであり、少々の衝撃で容易に破れる」という考え方だ。真実は、逆である。災難が降りかかった時、つまり爆弾が落ちてきたり、船が沈みそうになったりした時こそ、人は最高の自分になるのだ。

ほとんどの人間は信用できない、とあなたが思うのであれば、互いに対してそのような態度を取り、誰もに不利益をもたらすだろう。他者をどう見るかは、何よりも強力にこの世界を形作っていく。
(中略)本書では、人間性についての肯定的な見方が正しいことを裏付ける、数々の科学的証拠を提供しよう。わたしたちがそのような見方を信じるようになれば、それはいっそう真実になるはずだ。

進化の基本的な要因ははっきりしている。必要なのは、以下である。
多くの受難。
多くの苦闘。
多くの時間。
要するに、進化とはこういうことだ。動物は過剰な数の子どもを産む。その中で、環境への適応が他の子どもより少々うまい子は、生き延びる可能性が少々高く、自らの子を残す可能性も、少々高い。

世界の民主主義は少なくとも七つの問題に苦しめられている。徐々に腐敗する政党、互いを信頼しない市民、排除される少数派、政治への関心を失った有権者、堕落した政治家。税金を逃れる金持ち、そして、近代民主主義は不平等だという認識の高まりである。
トレスはこれらの問題のすべてを解決する策を見つけ、以来、十五年以上にわたって試行錯誤を重ねてきた。
(中略)それは、人間を自己満足的とか、怒れる有権者とは見なさない。代わりに、もし個々人の中に良心的な市民がいるとしたらどうなるか、と尋ねる。

彼らはただ、穏やかに、かつ慎重に、討議するだけだ。
(中略)疲弊した古い民主主義を苦しめる七つの疫病の治療薬になるかもしれない。
(1)冷笑から参加へ
(2)両極化から信頼へ
(3)除外から受け入れへ
(4)満足から市民権へ
(5)汚職から透明性へ
(6)利己主義から連帯感へ
(7)不平等から尊厳へ

見知らぬ人との交流は、学ぶべきことであり、子どもの頃から始めるのが望ましい。
(中略)「旅行は偏見と頑迷さと狭量さを打ち砕く」
(中略)最も注目すべきことの一つは、自らのアイデンティティを保持できて初めて、偏見を排除できるということだ。誰もが違っていても何も問題もないことを、わたしたちは理解しなければならない。しっかりした基盤があれば、自らのアイデンティティのための頑丈な家を建てることができる。
そうすれば、そのドアを開け放つことができる。

人間の本性についての現実に即した見方は、あなたが他者とどう関わるかに大きく影響する。だから、ここ数年間で学んだことを基盤とする、わたしの人生の指針一〇か条を紹介することは、価値があるだろう。
1 疑いを抱いた時には、最善を想定しよう
2 ウィン・ウィンのシナリオで考えよう
3 もっとたくさん質問しよう
4 共感を抑え、思いやりの心を育てよう
5 他人を理解するよう努めよう。たとえその人に同意できなくても
6 他の人々が自らを愛するように、あなたも自らを愛そう
7 ニュースを避けよう
8 ナチスを叩かない
9 クローゼットから出よう。善行を恥じてはならない
10 現実主義になろう

P.S.
農業インターン・副業・プロボノ大募集!

学年や年齢、農業経験の有無は問いません!
インターン・副業・プロボノに興味のある方は、ぜひご応募ください!
農業界の未来を、共に切り拓いていきませんか?

【①インターン】

【②副業・プロボノ】
※個別対応のため、TwitterのDMでお問合せください(下はイメージ)。

この記事が参加している募集

推薦図書

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?