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週末読書メモ45. 『企業変革の核心』

(北海道十勝の農家6代目による週次の読書メモ)

「危機意識」の重要性と扱う技術が書かれた本としては最高峰の一冊。


チェンジマネジメントの世界的大家、ジョン・P・コッター。

彼を有名にした『企業変革力』、続く『ジョン・コッターの企業変革ノート』、『カモメになったペンギン』は、どれも素晴らしい内容でした。

特に、コッターさんを有名にした”8段階の変革プロセス”は、その実用性が、数多あるビジネスフレームワークの中でも傑出しています。

「8段階の変革プロセス」
1. 危機意識を高める
2. 変革推進チームをつくる
3. 変革のビジョンと戦略を立てる
4. 変革のビジョンを周知徹底する
5. 行動しやすい環境を整える
6. 短期的な成果を生む
7. さらに変革を進める
8. 新しい文化を築く

本作『企業変革の核心』は、上記の8段階の中でも、第1段階「1. 危機意識を高める」に焦点を絞り、多くの成功・失敗事例から、そのエッセンスを導いていきます。


本書の核となる内容は、下記となります。

「本物の危機意識を高める基本戦略と四つの戦術」
■基本戦略
頭(理性)と心(感情)の両方に訴えかけ、目を覚まさせ、行動を促す

■戦術

1. 外を内に呼び込む
・内の認識と外の現実との乖離、組織内の現状を明らかにする
・七つのノウハウを使って外の変化を伝え、実感させ、体験させる
2. 危機感を行動で示す
・重要度・優先度の低いことは切り捨てるなど、危機感を自らの行動で表す
・会議、会話、メモ、メールなどあらゆる機会を生かして「このままではいけない」と訴える
3. 危機を好機とみなす
・危機を逆手にとり、自己満足を打ち砕く絶好の機会として利用する
・慎重に対処し、不用意に大混乱を起こさないようにする
4. 変革否定論者に対処する
・現状維持にこだわる人間を退場させる、または無力化させる

上記のように、綺麗事抜きの内容が素晴らしいかったです。豊富な事例はもちろん、組織に変革を始めるための戦略・戦術が事細かに書かれています。

変革においては、闘い・修羅場は避けては通れません。

著者は、変革においてネックになることは、合理的な理由ではなく、感情的な理由であることから目を逸らしていません。そのため、具体的な戦術は、人間心理・組織政治を絡めた、ダークサイド・スキルまで、しっかりと書かれていることが、コッターさんの魅力です。


リーダーが危機感を持つ重要性は、ファーストリテイリングの柳井正さんの『経営者になるためのノート』でも強調されていました。

(※抜粋『経営者になるためのノート』)
経営者は常に危機感を持って経営をせよ

自分たちは、いつも断崖の上を歩いている、ちょっとでも油断があったら、真っ逆さまに落ちてしまうという危機感を持ってのぞむが「正常な経営」なのです。
「危機感を持つ」とは、自分の状態や成績を客観的に評価しながら、慢心しないよう、努力を続けることです。

両者の著書を読んで分かったことは、危機意識を持つことは、突然の大きな問題・困難を防ぐこと以上に、常に進化を求め、競争から振り落とされないためであることです。

現状への満足・油断は、安定を求め、変化を抑制。その結果、大きな成長が無くなる。競争の無い、進化の無い世界であれば、それでも良いのかもしれません。しかし、全世界での苛烈な競争下となった現代で生き残るには、尚更、危機感を持って、変化・進化し続ける必要があると。


前週のアーネスト・シャクルトンによるエンデュアランス号漂流の物語では、リーダーが常に"希望"を生む重要性が描かれていました。

今週は、一転し、リーダーは常に危機感を生む重要性が描かれています。

つまり、リーダーは、複数の人格を高次のレベルで持つ必要があると。

統合された人格を持つことか…あるべき姿・そこに至る過程ともに、定義しにくいことこの上なく笑。けれども、目を逸らさず、取り組むしかない。


【本の抜粋】
ほんとうの危機感を抱いている人は、重大な課題に「いつか」「都合のよいときに」取り組もうとは考えない。いま手を付け、いまから前進しようとする。重大な問題とは、ここでは成功や存続や勝利のカギを握るような課題を意味する。本物の危機感を持っていたら、「まずは会議を開こう」とはならない。「今日はこれとこれを達成しよう」となるはずだ。

自己満足というのは、客観的に評価した結果として満足すべき状態なのではなくて、「われながらよくやった」という感情なのである。合理的な分析に基づく意識的な判断ではないから、こうした感情を抱いていることは意識されにくい。この点は非常に重要である。

大勢の人を動かすことを考えてみよう。このままでは危ない。私についてきてほしい。君たちには絶対にできる ー 孔子た呼びかけが効果を発揮するのは、結局は頭よりも心に訴えかけるときだ。
(中略)「偉大な指導者は、人々の心と頭を味方につける」とよく言われる。ここで、「頭を味方につける」だけではない点に注意してほしい。それに「頭と心に味方をつける」でもない。心が先、頭があとなのだ。

デービットの行動が発するメッセージはわかりやすい。
「何事も放っておいてよくなるということはない。雇用を確保し、インフレを上回る生産性の向上を実現し、安全で魅力的な職場を維持するためには、ライバルより早く、ライバルより賢くなければならない。これまでと同じことをやっていても競争には勝てない。競争はつねに新しい試みを求める。なるほど、われわれは過去に成功を収めた。そのことに誇りを持ってよい。だが過去の課題をクリアしたからと言って、将来もクリアできるという保証はどこにもない。未来には、新たな困難が待ち受けていることだろう。だが未来には、新しいチャンスも必ずあるのだ」

否定論者は理性的に考えた末に行動しているのではない。変化は危険だという思い込み。変革に対する本能的な不安。あるいは指揮を執るのは自分だ、自分をのけ者にした連中が成功するのは許せないという怒りと嫉妬。はっきりと意識していないにせよ、彼を突き動かすのはそうした感情である。

場面が変わり状況が変わっても危機意識を維持するための基本中の基本は、社外で何が起こっているかを絶えず知らせることだと思う。ただ尻を叩くだけでは、社員は乗ってこない。そもそも社員は社長の言うことを疑ってかかる傾向にあるのだから、なおさらだ。かといって、ひたすら売上げや利益を強調するのも効果的ではない。自社を取り巻く環境に目を凝らし、何かもっと根源的な真に迫ってくるものを察知したとき初めて、「われわれはまだまだだ。もっとやらなければいけない」と感じるようになる。

成功の後で危機感が薄れることを防ぐ最善かつ最終的な解決は、危機意識を企業文化に根付かせることである。
(中略)そうした文化を育てるのに、とくに目新しい秘訣は何もない。必要なのは基本的な行動である。すなわち、望ましい行動をリーダーが自ら示すこと。それが成功につながることを実証すること。そうした行動が会社の新しい伝統として根付かせ、価値判断の基準とすること。そのために、経営管理上のあらゆる手段や制度を活用すること。

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