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週末読書メモ136. 『ジャン・クリストフ(4)』

(北海道十勝の農家6代目による週次の読書メモ)

「私は文学の作品を書くのではない。信仰の作品を書くのである。」


偉大なるフランス文豪の偉大なる作品。その最終巻。

『ジャン・クリストフ』を座右の書にされている『読みたいことを、書けばいい。』の筆者田中泰延さん。

田中さんは、本書をこう語ります。

信念とは?芸術とは?成熟とは?という巨大なテーマが、大長編でなければ語れない分量で描かれている。

『読みたいことを、書けばいい。』

我が意を得たりというか…

この真意を掴むにも、計4巻、約2,000ページの必要だったと思い返します。


僕の第一の義務は、自分のなしてることをりっぱになすということだ。

すべて自分のなすことに、すべて自分の苦しむことに、すべて自分の愛することに、すべて自分の憎むことに、無制限に没頭する者こそ、驚異に価する人であり、この世で出会い得るもっとも偉大な人である。熱情こそ天才のごとき者であり、一つの奇跡である。

本書最大のテーマは、信念。

ただロマン・ロランの特徴であり、魅力は、主人公を才気煥発で、最初から最後まで英雄街道を走るような人生で描いていないこと。もちろん才能はあれど、幼少期から成熟期まで様々な苦悩、逆境の中であっても、その情熱の灯火を消さない魂を読者に伝えようとしていました。


クリストフの魂はその雲雀のようであった。やがてふたたび落ちること、そしてなお幾度も落ちること、それをみずから知っていた。しかしまた知っていた、下界の人々に天の光明を語ってきかせる歌をさえずりながら、火の中へとたゆまずふたたびのぼってゆくことを。

「汝はよみがえるであろう。休息するがよい。すべてはもはやただ一つの心にすぎない。からみ合った昼と夜との微笑み。愛と憎悪との厳かな結合、その階調。二つの強き翼をもてる神を、われは歌うであろう。生を讃えんかな!死を讃えんかな!」

何度だって、何度だって、蘇ることだ!と。

これこそ、ロマン・ロランの考える信念のあるべき形なんだろうなあ。

終始暗い内容で、正直に読んでいて、面白さを感じにくい部分の多い物語であっても、何故か心に残るものがある作品です。


ベートーヴェン交響曲第9番「歓喜」。

この物語を読み、ベートーヴェンがいかなる信念を持っていたのか、いかなる生き様をしていたのか。それを知る前と後では、この音楽の印象も変わります。何という心境を、人生を、音楽に込めていたのだろうか…


「私は文学の作品を書くのではない。信仰の作品を書くのである。」
人は信ずる場合には、結果を懸念せずに行動する。勝利か敗北かは問うところではない。「なすべきことをなせ!」

人は信ずる場合には、結果を懸念せずに行動する。勝利か敗北かは問うところではない。

「なすべきことをなせ!」

なすべきことをなそう。その言葉を噛み締める、そんな名作でした。


【本の抜粋】
僕の第一の義務は、自分のなしてることをりっぱになすということだ。

どの新しい時代にも、一つの美わしい熱狂が必要である。若き人々はそのもっとも利己的な者でさえ、満ちあふれた生活力をもっている、不生産的であるのを好まない精力の資本をもっている。彼らはその資本を、一つの実行かあるいは ーー(いっそう慎重に)ーー 一つの理論に費やそうとする。

温かい光よ、われわれのために明日輝き出すべき正義の太陽よ、汝はもうすでに輝いているのではないか。すべてはかくも善く、かくも美しい!人は富者であり、強者であり、健康であり、愛している、予は万人を愛している…ああ人はいかに仕合わせぞ!明日人はいかに仕合わせになることぞ!…

すべて自分のなすことに、すべて自分の苦しむことに、すべて自分の愛することに、すべて自分の憎むことに、無制限に没頭する者こそ、驚異に価する人であり、この世で出会い得るもっとも偉大な人である。熱情こそ天才のごとき者であり、一つの奇跡である。

クリストフの魂はその雲雀のようであった。やがてふたたび落ちること、そしてなお幾度も落ちること、それをみずから知っていた。しかしまた知っていた、下界の人々に天の光明を語ってきかせる歌をさえずりながら、火の中へとたゆまずふたたびのぼってゆくことを。

会いせられている人々のもつ力は、離れているときにますます大きくなる。愛する者の心は、彼らのうちのもっとも懐かしい事柄ばかりを覚えている。遠く離れた友からはるかに伝わってくるおのおのの言葉の反響は、敬虔な震えを帯びて静寂のうちに鳴り響く。

「汝はよみがえるであろう。休息するがよい。すべてはもはやただ一つの心にすぎない。からみ合った昼と夜との微笑み。愛と憎悪との厳かな結合、その階調。二つの強き翼をもてる神を、われは歌うであろう。生を讃えんかな!死を讃えんかな!」

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