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週末読書メモ106. 『競争優位の戦略 いかに高業績を持続させるか』

(北海道十勝の農家6代目による週次の読書メモ)

600ページを越える大著。だからこそ触れられる、稀代な人物の思考法。


「経営戦略」という理論の道を拓いたマイケル・ポーターさん。

彼の代表作である『競争の戦略』。

その続編であり、姉妹本が本書『競争優位の戦略』となります。前著が業界構造と競争業者の行動を述べた本であったのに対し、本書では会社自体に焦点を当てています。


いやー、内容が重い笑。

前著『競争の戦略』も485ページと大作でしたが、本書『競争優位の戦略』は更に内容が増え、なんと659ページにも至ります。

訳者あとがきにもある通り、「この本は、読みやすい本にしようと意図」されたものではありません。筆者が蓄積している膨大な事例を駆使しながら、強固な原理を展開し切っています。

「戦略を考え、活かす」ことは軽々しく行えるものではない、という強い意志を、自らの書籍を通じて、世に問うているようにも感じます。


どんな競争戦略を選ぶかを決める場合に、基本になる中心的質問が二つある。第一の質問は、業界が長期にわたって収益をもたらすかどうか、すなわち、業界の魅力度がどの程度か、さらに、魅力度を左右する要因は何か、である。
(中略)第二の質問は、一つの業界の中で、会社の競争的地位が他社より強いか弱いかを決める要因は何か、である。

競争優位は、会社を全体として観察することによっては理解できない。競争優位は、会社がその製品を設計し、製造し、マーケティングをやり、流通チャネルに送り出し、各種のサービスをやる、といった多くの別々の活動から生まれてくるのである。
(中略)したがって、会社が行うこれらすべての活動とその相互関係を体系的に検討する方法が、競争優位の源泉を分析するのに必要である。

ポーターさんの一貫しているスタンスは、上記からも垣間見れる通り、手を抜かず調べ、考えた上で、戦略(解)を導いてくということ。

それは、デカルトの4つの規則(明晰・分析・総合・枚挙の規則)を地で行っているようにも思えます。

憶測ではなく事実から。検討する事象を分解し、各要素から統合的なまとまりへ。そして、最後には全体として整合性のある道筋に。

デカルトの4つの原則自体は、過去にも目にしたことがあり、少なからず実践していた気になっていましたが、本物による本気の実践を目の当たりにすると、ただただ背筋が伸びます。


本書の中でも、最も印象的であったのは下の部分。

競争上重要な不確実性を見つけることが、業界シナリオづくりの核心である。ところが、不確実性の源泉は見分けにくい。経営者は非連続的な変化を判別すること、つまり在来の知恵を放棄することをむずかしいと感じる。不確実性を見つけるには、業界構造の各要因を一つ一つ検討して、不変、確定、不確実の三つに分類する必要がある。

なるほどーーー!不確実性を見極めるコツは、事象を不変/確定/不確実の3つに分類することだと。

首尾一貫して、物事をざっくり大まかに考える無意味さを述べてきた筆者だからこそ、世界の事象すら、このように鮮やかに切り分けられるのか。不変/確定/不確実の3分類は、本当に得ていて妙で。この枠組みは頭に刻みたいです。


その世界の大家であり天才という人物が、本気で書き切った本は、ジャンルを問わず、内容はもちろんのこと、その思考経路が胸に残ります。

(歴史を見れば、過去だとプラトンやアリストテレスが然り)

もはや追いつけるレベルを超えてしまっているけれど、同じ人間として、少しでもその領域に近づけるように、過去の自分を超えていけるように、これからも足掻いていきたいです。


【本の抜粋】
私の前著『競争の戦略』は、業界構造と競争業者の行動を述べた本であった。この本は、前著の姉妹書であって、主として、会社自体に焦点をあてて述べている。会社を競争優位の土台となる基本的活動に分解する方法を説明し、競争相手と対比した会社のコストの診断法、コスト地位向上の方法を述べている。
(中略)この本はまた、会社にとっての買い手が何を価値と認めるかを理解する手掛かりを述べている。

競争優位は、基本的にいうと、買い手のために創造できる価値から生まれる。これは、同等の便益なら他社よりも安い価格という形をとるし、あるいは、プレミアム価格を相殺して余りあるほどの特異な便益の提供という形をとる。

会社が成功するか失敗するかを決めるのが、競争である。
(中略)競争戦略とは、競争の発生する基本的な場所である業界において、有利な競争的地位を探すことである。

どんな競争戦略を選ぶかを決める場合に、基本になる中心的質問が二つある。第一の質問は、業界が長期にわたって収益をもたらすかどうか、すなわち、業界の魅力度がどの程度か、さらに、魅力度を左右する要因は何か、である。
(中略)第二の質問は、一つの業界の中で、会社の競争的地位が他社より強いか弱いかを決める要因は何か、である。

競争優位は、会社を全体として観察することによっては理解できない。競争優位は、会社がその製品を設計し、製造し、マーケティングをやり、流通チャネルに送り出し、各種のサービスをやる、といった多くの別々の活動から生まれてくるのである。
(中略)したがって、会社が行うこれらすべての活動とその相互関係を体系的に検討する方法が、競争優位の源泉を分析するのに必要である。

良い競争業者の条件
・信頼性および活力
・はっきりと自らの弱点を自覚していること
・ルールをわきまえる
・仮説が現実的である
・コストの知識にくわしい
・業界構造を改善する戦略をもつ
・戦略目標を狭く決めている
・適度な撤退障壁をつくる
・自社と調和しうる目標をもつ

競争上重要な不確実性を見つけることが、業界シナリオづくりの核心である。ところが、不確実性の源泉は見分けにくい。経営者は非連続的な変化を判別すること、つまり在来の知恵を放棄することをむずかしいと感じる。不確実性を見つけるには、業界構造の各要因を一つ一つ検討して、不変、確定、不確実の三つに分類する必要がある。

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