見出し画像

湯船と滑舌と宇多田ヒカル

入浴中、湯船に浸かりながら滑舌トレーニングを行うのが、一つのルーティンとなっている。

滑舌に関しては子どもの頃から密かに気にしていた(気にしている)。「さ行」を発音する際に舌が滑らかに動かない感じがあったり、「ら行」を発音する際に意図しない巻き舌になるのがコンプレックスだった。滑舌良く流暢に発音する人を羨望の眼差しで見つめる程度には気にしていた(気にしている)。

だが、気にしてはいるものの、一時的に熱心にトレーニングして、興味関心が薄れてきたら勝手にやめて、トレーニング熱を触発されるような体験があったら、再び奮起して取り組むも、やはり「喉元過ぎれば熱さを忘れる」といった具合に、徐々にやらなくなっていく、そんな感じを長年続けて、今に至る。当然、滑舌が改善された実感は得られるはずもなく。そんなダメな自分を変えるための一つの手段が「継続的に滑舌トレーニングを行う」だったわけだ。

僕は、数多の失敗体験から「モチベーション」に頼って「やる・やらない」が左右されること自体を排除することに努めた。いわばロボットのように、半自動的に、滑舌トレーニングを行う環境づくりを構築することを試みた。そこで白羽の矢が立ったのが「ながらトレ」だ。

僕は湯船に浸かる習慣が昔からある人間だ。どれぐらい拘りがあるかと言えば、大学時代、下宿先の部屋を探す際に、ユニットバスではなく、トイレとお風呂が別々になっているタイプに限定して部屋探しをするぐらいには拘っていた。たとえ、多少家賃が割高になったとしても、毎日、お風呂に浸かって疲れを癒すことだけは譲れなかった。ユニットバスでも湯をはることは不可能ではないけれども、毎日となると、やはり、トイレと風呂が別々の家に住むのがベターと言えよう。

以上のことから「湯船に浸かっている間は滑舌トレーニングを行う」というのを習慣化すれば、半自動的に、毎日続けられるのではないか、と思い至ったわけだ。

結果は、今のところ、概ね順調と言って良いだろう。なぜ「概ね」と枕詞をおいたかというと、深酒をして帰って来た時などは、湯船に浸かると健康上よろしくないというのもあって、サッとシャワーで済ませてしまって、滑舌トレーニングが出来なかったりするからだ。また、湯船に浸かっても良さげだけどお酒は入っているよ、ぐらいに酔っている日は、ついつい滑舌トレーニングするのを忘れて「ババンババンバンバン♪」「いい湯だな♪」なんて歌い出しそうな上機嫌で入浴を楽しんで、そのまま風呂から上がって、しばらく経ってから「あっ、今日やってないわ・・・」と気付く日もある。ゆえに「概ね」と付けた。点数に表すならば、70〜80点が妥当といったところか。

滑舌トレーニングに取り組むたびに宇多田ヒカルのことを思い出す自分が居る。あくまでも僕の記憶の中の話なので、間違っていたら申し訳ない、と前置きした上で書くのだけれども、Mステ(ミュージックステーション)のフリートークタイムの際に、宇多田ヒカルが「タクシーでライブ会場に向かっている途中に、(歌うための)ウォーミングアップをしていたら、運転手の人に『歌手を目指しているの?頑張ってね』と言われて。今から歌いに行くところなんですけど、っていう・・・。(苦笑)」などと言っていた覚えがある。そんなことを思い出しつつ、脳内で宇多田ヒカルとフュージョンした気分に浸りながら、日々、せっせと滑舌トレーニングに励んでいる今日この頃である。

湯船に浸かりながら。
宇多田ヒカルに浸りながら。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?