日銀の金融緩和の「出口戦略」に関する考察

日銀の金融引締め=出口戦略に関して分かりやすくまとめられているのがなかなかないので、自分で書いてみる。ちなみに分かりやすいかどうかは知らない

金融引き締めとして考えられる手法はいくつかあるが、すでにFRBが採用していて日銀も採用を示唆している「超過準備預金の付利引上げ」に関して

現在、日銀がおこなっている「量的緩和」に伴って日銀内の各市中銀行の当座預金口座には莫大な残高がある(メカニズムは省略)

そして、その当座預金口座残高のうち、法定預金準備率を超える分に対して、日銀が市中銀行に対し金利=超過準備預金の付利を支払っている(補完当座預金制度/現在0.1%)

日銀は今後、インフレ率が上昇した際に、この利子率=名目金利を引き上げることで、実質金利を上げ、インフレを抑制する(実質金利=名目金利-インフレ率)

これが「超過準備預金の付利引上げ」という金融引締め手法

ちなみにFRBは数年かけてこの利子率を徐々に上げていき、現在は2.40%になっている

ところが、当然のごとく、この0.1%の利子率を上げるということは、日銀が市中銀行に支払う金利相当額が増加することを意味する

仮にインフレ率が2%になったとして、実質金利を上げるために超過準備付利率を現在の0.1%から2%に上げた場合、日銀が市中銀行に支払う金利相当額は、年間約8兆円になる

この支払いの原資は、日銀が保有している長期国債の金利収入等から支払われる
しかし、現在日銀が保有している約400兆円の国債から得ている金利収入は、約1兆2000億円
インフレを抑制するためには、市中銀行に8兆円払う必要があるが、収入が約1兆円しかない。全然足りない

この時点で日銀は倒産する

もちろん、インフレによって国債金利も上がるので、長期的には金利収入は確保できるかもしれない

しかし、それまでの間(何年~何十年)、日銀はずっと赤字になり、当然、倒産させるわけにはいかないので、その期間はずっと、年間何兆円もの損失を、税金=財政支出で補填し続ける事になる

ついでにいうと、同時に財政支出が増えるので、「財政絞ってインフレ制御」のはずが、どんどん財政支出することになって、インフレ制御もできなくなるかもね。知らんけど

まとめると、今後の金融引締め局面において、

「インフレ率の上昇に伴って、実質金利を上げるために超過準備預金の付利率を上げると、日銀は市中銀行に莫大な支払いをする必要があり、その原資の確保ができない場合、当然のごとく財政から補填する必要があり、財政支出が増える」

となる可能性があるよ、という考察でした。


※参考資料

準備預金制度とは何ですか? 超過準備とは何ですか?
https://www.boj.or.jp/announcements/education/oshiete/seisaku/b33.htm/

補完当座預金制度
https://www.boj.or.jp/mopo/measures/mkt_ope/oth_a/index.htm/

FRB議長下院証言、超過準備付利に与野党から批判集中  

量的緩和、マイナス金利政策の財政コストと処理方法
「日銀当座預金に対する付利を引き上げる場合」(p13)
https://www.rieti.go.jp/jp/publications/dp/16j032.pdf

量的・質的金融緩和からの出口に関する一考察
「付利の引き上げ」
http://www.sess.jp/publish/annual/pdf/an51/an01.pdf

参議院調査室作成資料 経済のプリズム
異次元緩和の出口を考える
http://www.sangiin.go.jp/japanese/annai/chousa/keizai_prism/backnumber/h27pdf/201514104.pdf

出口戦略、付利上げと国債売却組み合わせる可能性=原田日銀委員

2018年度 日銀決算データ
https://www.boj.or.jp/about/account/data/zai1805a.pdf
(現在の国債の利息収入や補完当座預金制度における利息支払が計上されている)

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