サイカイ〜忘れられない夢〜

睡眠中にしばしば夢を見るが、だいたい起きるとその内容を忘れてしまう。
ただ1つだけ、どうしても忘れられない夢がある。

夢の状況から説明しよう。

その夢は、おそらく大学生と思われる僕視点で始まった。
ゼミらしき集団と一緒にいる僕らの前に、同年代と思われる複数人の男女が一列に並んでいる。
その中に一際目を惹く、明らかに日本人ではない、金髪の女の子がいた。

その場はゼミの新入生歓迎会のような感じで、ひとしきり並んだ男女の挨拶?のようなものが終わると、各個バラバラになり、先輩であると思われる僕たちと話す流れになった。
そこで僕はあの金髪美女と話しているのである。

僕は現実世界ではあり得ないようなキレキレのトークで金髪美女を笑わせていた。
透き通るような美肌、シュッとした高い鼻、ぱっちりお目目、彼女の美貌から目が離せなかった。
傾国の美女とはよく言ったものだ。

しかしそんな楽しい会話の中、目が覚めてしまうのである。

起きてからというものの、ぼんやりとした意識の中、彼女の事を考えていた。

どっかで会ったことある気がするなー。

そう言えば名前聞いてなかったなー。

聞いてもいない彼女の名前を思い出す。

東欧っぽい顔立ちだったな、仮にロシアだとしたら、なんとかコフか?いや、なんとかチョフ?
いや、女の子だからなー。
なんだろ。

ある名がすっと頭に降りてきた。
思い出したのではない。
降りてきたのだ。


「ナターシャ?」


僕は尋ねるように呟いた。

「ナターシャぁぁぁ!」

彼女の名前はナターシャだ!
信じて疑わない。
これ以上彼女に合う名前が無いように思えた。

喉につっかえていた物が取れた僕は、シャワーに向かう。

シャンプーをしながらふと疑問に思った。

「でもなんでナターシャって降りてきたんだ?」

どっかで見たことある名前なのかな。

記憶を総動員して、過去を探る。

あれそう言えば、、、

ホテルでアルバイトしている僕は、派遣会社からやってくるバイトの方々と仕事をすることが多い。
毎回毎回、違う人と一緒に仕事をするので、名前は覚えても仕事が終わると忘れてしまうことがほとんどである。
ある日来た派遣のバイトの方は、普段働いている方々と違っていた。

金髪。筋の通った鼻。ぱっちりお目目。

あれ、似てるな。

あの人なんて名前だったっけ?



「ナターシャぁ?」



「ナターシャだ!」



アドレナリン大分泌

シャンプーの泡立ちが段違いだった。

まてまて、決めつけるのはまだ早い。
彼女の出身地どこだっけな。

えーと、えーと、



「ベラルーシ?」





「…………」





「ベラルーシってどこ?」

すぐにシャワーを終え、携帯を手に取り、Google mapを開く。

検索欄にベラルーシと入力する。

検索。



「東欧じゃん!!!」


約1万1000もの湖を讃え、6つの主要河川が入り組む肥沃の土地から、
彼女は次元を超えて僕に会いに来たのである。

いちずぅ〜

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