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発達障害克服してみた 第二章④ ケアレスミスの克服とまとめ

 (この記事は2021/11/03にリライトしました)
 
 さて、第二章最後の項となる「ケアレスミス」についてです。自分でどうやったらケアレスミスを克服できるかを考えた結果、まず結論から述べると、ケアレスミスの原因には発達障害者が抱える「自閉的要素」が大きく関わっているのではないかなと考えています。

 この自閉的要素に焦点を当てたとても分かりやすい克服法がありますので、薬を使用せずにケアレスミスを克服した来未炳吾さん(現在は平極ルミさんとして活動)のブログを紹介したいと思います(ケアレスミスはこう治せ)。
 端的に内容を要約すると、一つ一つの行動を行う時にまるで仏教のヴィパッサナー瞑想のように、何気なく行っている行為を一つ一つ細切れにして心の中で実況し、それを徹底的に意識づけるという方法です。これを書かれた来未さんは私よりもかなり症状の重い発達障害を抱えていらっしゃったのですが、このような方法で薬を使わずにケアレスミスを克服された素晴らしい事例です。ここから読み取れることは、ADHD者にありがちな注意欠陥というのは、本当に注意力が0(欠陥)なのではなく、注意力のベクトルが外界(もしくは集中すべき対象物)ではない別の方向に向いてしまうということを指し示しているということを意味します。そもそも注意力自体が存在しないのであれば、このような方法では決してケアレスミスを克服することが出来ないからですからね。やはり発達障害というのは軽度な自閉的傾向を示しているわけですが、外界よりも自己に注意が向きやすい性質が原因ではないのかなと考えています。

 そして、私自身も多忙の際にケアレスミスが発生すると書きましたが、多忙な時には「あれもやらないと、これもやらないと」と、頭の中が一杯一杯で目の前のことに対して意識が散漫な状態だったのですね。この焦りもケアレスミスに大きく関連してきますが、これも焦ることのメリットを真剣に考えることで克服が可能です。当時の自分は、焦ることで周囲に一生懸命頑張ってます感をアピールできるような感覚もありましたし、またその焦りという一種の刺激に依存していたような感覚があります。
 しかし冷静に考えてみると、いくら頭の中で焦り行動を早めたところで、自身の肉体には時間・空間の制約があるので、せいぜい通常時の2-3割増し程度のスピードアップにしかなりません。倍速以上のスピードで出来るならミスをして最初からやり直したとしても時間的にはお釣りが来ますが、2-3割程度なら、やり直しがあれば余計に時間を食うだけです。故に焦ったところで百害あって一利なしということに気づき、忙しい時ほど思考を鎮めて、目の前のことを一つ一つしっかりとこなすことを意識しました。

強迫性障害の原因の一つかもしれない

 発達障害者では二次障害の一つとして強迫性障害を抱える人も多くいるらしいです(リンク)。僕自身もカギを閉めたのか?とかで何度か往復してしまうことが多く、時に疲弊してしまうことがありました。何度も確認してしまう原因として、当事者自身が過去にケアレスミスを色々な人から糾弾されてきた故に過敏になってしまうというのもあるんですが、最大の原因は「自閉的要因」にあるのではないかと考えています。
 自分がなぜ何度も確認してしまうのか考えたところ、「自分がカギを閉めるなどの特定の行動をキチンとこなしたという自覚が持てない」ことが原因ではないかと気づいたのです。ケアレスミスが目立つ発達障害の人は上で述べたように、注意力が外部に向かず、自己の内面世界に向きがちなので、目の前の行動を無意識に夢遊病のようにこなしてしまいます。そのため、自分がその行動をやったのかどうかが自己の記憶の中で曖昧となり、それがきちんと行動をこなしたことへの自信に繋がらないことが原因ではないかと思ったのです。

 これの克服法なのですが、自分の勤めている化学系メーカーのある習慣の中に答えがありました。皆さんは「指差呼称」ってご存じでしょうか?「しさこしょう」とも「ゆびさしこしょう」とも呼んだりします。有名な例は駅員さんなどが特定の対象を指差しながら「○○よし!」と言って確認するやつです。これの凄いところは目視のみで対象物を確認した場合と比べて、指をさし、声を出して確認をすることでミス(ヒューマンエラー)が六分の一に減少するという研究結果もあります。やはり声を出し、指を差すという肉体を使用する行為によって、無意識に行動をするのではなく自覚をもって行動が出来るようになるので、ケアレスミスが減少するのでしょう。自分もこれを生活に導入したところ、(勿論大きな声を出すのは恥ずかしいので、小声でかつ指も小さく周囲に見えないように差しますが)ミスも減りますし、何よりも確実に行動したという記憶と自信が手に入るので、強迫的に何度も確認をするということがなくなりました。

マルチタスクが出来ない原因の一つかもしれない


 他にも、この「あれもやらないと、これもやらないと」という意識の状態が発達障害者のマルチタスクの出来なさの原因の一つではないかと考えています。一般的に定型発達者はマルチタスクをこなせて、発達障害者はそうではないと言われることが多いです。しかし定型発達者をよくよく観察してみると、マルチタスクと言っても本当に同時にこなしているのではなく、あるタスクを集中して最速でこなした後、次のタスクに集中するというシングルタスクの連続であって、結果としてマルチタスクに見えているだけなのです。

 つまりおかしなパラドックスとなってしまいますが、定型発達者の脳内はシングルタスクであるが故にマルチタスクが可能であり、一方発達障害者は脳内がごちゃごちゃでマルチタスクとなっている故に、何も上手くできずシングルタスクすらも満足に出来ないということなのです。
 もちろん、マルチタスクにも色々とあって「電話をしながらメモを取る」や「黒板に書かれたものをノートに写す」という本当に同時にこなすタイプのマルチタスクが出来ない場合には、ここで紹介したような意識の持ちようでは解決が難しく、原始反射の統合などの対処が必要になってきます。それに関しては後述させてください。

 いずれにせようつ症状に引き続き、先延ばし癖・優先順位・ケアレスミスといった諸問題を私はこのようにして薬を一錠も飲むことなく克服してしまいました。一般的にうつも発達障害も脳内の神経伝達物質のバランスの異常や脳の欠陥と言われ、積極的にそれらのバランスを一時的にでも整える投薬が行われます。ですがこれらを薬なしで乗り越えた以上、これらの異常というのはあくまで表面的に表れた事象であって、本当の原因・真の原因というのがさらに上流に存在するのではないかと考えたのです。それが何かを解き明かすことが出来れば、本当に薬なしで全てを克服できるのではないか、そしてどんなに重度の発達障害を抱える人でも回復の道が開けるのではないかと思ったのです。

 (第3章に続く・・・・)
 



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