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ハッピーエンドの作り方

物語には色々な終わり方がある。愛する人と結ばれる、世界を救う、宿敵を打ち倒す、事件が解決する……一般的にはそんなふうに終わる物語をハッピーエンドと呼ぶのだろう。しかし個人的には、たとえ何も困難を乗り越えていなくとも、道端に咲く花を見つけるだとか、見上げた星空が綺麗だったとか、温かいベッドに入って眠りにつくだとか、そういう小さな瞬間をハッピーエンドと呼ぶ方が好きらしい。単純に時間軸で考えるならば、ハッピーエンドに限らずいかなるエンディングも終わりではなく、必ずその後が存在する。世界を救った勇者が姫と結ばれるハッピーエンドの向こう側、そこには「2人は幸せに暮らしましたとさ」では済まない物語があるはずだ。どうせ物語は続くのだから、ハッピーエンドなんてものは意味を成さない……とまで言うと極論だが、永遠に続く時間軸をどこで切り取ってエンディングとするかは結局作者の裁量となる。エンディングの先の物語にも無限の可能性があるならば、分かりやすい節目で区切られるよりも小さな瞬間で終わってくれた方がその先を想像して物語に広がりが生まれる。あくまでも個人的な好みの問題だが、僕にとってはそうなのだ。

電車が駅に着いた。仕事は憂鬱だが、新しい一日の始まりという視点だけで考えるなら朝というのは気持ちのいいものだ。これから始まる新しい物語に向かって、僕は自動改札を通り抜けた。

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