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目立ちたい人たち

以前、自分が演劇やお笑いなんぞをやっているのは単に目立ちたいからだという話を書いたことがある。

だからこそ、昨今世間を賑わせている都知事選の乱痴気ぶりには辟易している。自分も目立てるならば手段なんかは何でもいい側の人間だと思っていたが、どうやらそうではなかったらしい。目立てるなら何でもいいというのは、頓痴気な格好をして政見放送で支離滅裂なことを言ったり、候補者を乱立させて選挙看板をジャックしたり、滅茶苦茶なポスターを貼ったりする奴らのことを言うのだ。

選挙に立候補するには供託金という制度がある。遊び半分でただ目立ちたいだけのやつが立候補せぬように、都知事選に関しては立候補に際して300万円のお金を事前に納める必要があり、一定の得票数に満たない場合はこれを全額没収されるようだ。しかし逆に言うならば、300万円さえ払えば立候補者として何をやってもいいということになってしまう。制度の裏を突いた巧妙で卑劣なやり口である。300万円というのは大金ではあるが、300万円以上の費用対効果が見込めるならば投資する価値のある金額だ。ここまで大々的にやる輩がこれまでいなかったのは、単に候補者の善意に拠るところだった。恥も外聞もなくなったこと、『バズる』だとか『炎上商法』だとか、目立てば何でもいい、目立ったもん勝ちという価値観が世に蔓延してしまったことが原因なのだろう。腹が立ったとは言えまんまとこんな文章を書いてしまっている時点で奴らの思うツボなのは本当に腹立たしいことだ。

都知事選がR-1グランプリの1回戦みたいになっている、という意見を見た。エントリー料の2000円を払えば誰でも、舞台の上で、2分間好き勝手なことをやっていいし、プロフィールの写真とパフォーマンス中の写真が1枚ホームページに掲載される。金額や規模感は違うが、全く同じシステムだ。本当に自分の主義主張や思想を話すだけの人や、奇抜な格好をして奇声を上げるだけの人もたくさんいる。悔しいけれど言い得て妙だと思う。

とても嘆かわしいことだが、目立ちたい、自分を見て欲しいという願望は大なり小なり誰もが持つものだし、それを実現したいと思う気持ちは誰も止められないのだ。選挙の場合はそこに金儲けという大きな要素も絡む。今回の体たらくを受けておそらく何らかの法整備が進められることにはなるだろうが、また抜け穴を狙って馬鹿をやるいたちごっこになるだけだろう。目立ったこと、炎上したこと、何なら今後逮捕されて全国的に報道されたとしてもそれすら成功体験になってしまう。何というか、やり切れないっすよね……

選挙、行きましょうね。

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