見出し画像

チキンのトマト煮裁判

ある有機栽培農家が、『チキンのトマト煮』という料理名の使用禁止を求めて裁判を起こした。

チキンのトマト煮という料理は、チキン『と』トマトを一緒に煮込んだ料理である。にもかかわらず、チキン『の』トマト煮という表現はチキン『を』トマトで煮たかような誤解を与える。これは誤用であり、更に言うならば鶏肉よりもトマトを下に見ているトマト差別である。チキンとトマト、引いては肉と野菜は平等に扱われるべきだとして、野菜の地位向上を訴えた裁判であった。

当然ながら訴えは棄却された。そうなることは見越した上で、問題提起と話題作りになればいいという思惑があっての訴えだったようだが、それも完全に裏目に出た。裁判はニュースで取り上げられるとコメンテーターの失笑を買い、自身のyoutubeで公開されていた裁判の意図を説明する動画は、そのむちゃくちゃな内容と、ドヤ顔で語る原告の独特なビジュアルでネット民たちの格好のおもちゃになり、様々なコラ画像が出回ることになった。そうこうしているうちに肝心の本業の方で産地の偽装や脱税が発覚してしまい、裁判を起こしていたはずが今度は訴えられる側になってしまった。野菜の地位向上なんてことを言っていたはずが、有機栽培=胡散臭いという風評被害まで生み、同業者からも煙たがられることになったのだった。

とは言え、問題提起と話題作りという点では意図した通りになったのかもしれない。トマト差別はともかく、こういう変なことを言う変な人は何を言ってもいい、というような差別意識の根深さは、今回の件でまた明るみになった。いろいろと考えさせられる事件であった。

よろしければサポートいただけると、とてもとても励みになります。よろしくお願いします。