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ブラックで思い出した黒歴史

話題の『仮面ライダーBLACK SUN』を途中まで観た。仮面ライダー50周年記念のリメイク作品、さすがに気合いが入っているなという作りでなかなかに見応えがあった。観ていてふと、自分が中学生ぐらいの頃に書いた短い小説を思い出した。


俺は歩いていた。


……そんな書き出しで、男がひとり夜道を歩いているところから始まる話だった。主人公は戦争のために作られた不死身の人造兵器。何百年もの間幾多の戦場で戦い、たくさんの人を殺してきた。自分は何のために生まれたのか、このまま人を殺すためだけに生きる人生に意味はあるのか……男は歩きながらずっとそんなことを自問する。やがて男は彼の命を狙う敵集団に襲われ、いつものように難なくそれを撃退する。その戦いの中か、或いはその戦いの直後に何かがあって(何せ30年も前に書いたものなのでうろ覚えである)、男は自ら静かに機能停止することを選ぶ。そんな話だった。

当時は『スレイヤーズ!』や『ロードス島戦記』などの、いわゆるファンタジーラノベブームだった。中学生の僕はラノベ作家になりたくて、剣と魔法のファンタジー小説のようなものをちょこちょこと書いていたのだった。おそらく当時ハマっていたラノベの、叙事詩的な一人称で書かれる文体と、吉川英治の『宮本武蔵』にインスピレーションを受けて書いたものだったような気がする。そういえば当時まだ連載中だった漫画『ドラゴンボール』も人造人間編が始まった頃だったかもしれない。意識したわけではなかったがそこの影響も多分にありそうだ。ルーズリーフに手書きで10枚程度の小品で、当時の自分にしては珍しく曲がりなりにもラストまで書き切ったものだったと思う。劇中で細かく触れられることはないが、主人公の男の人造兵器としてのスペックや、男を作った『王国』やその周りの世界の設定なんかも別に細かく考えたような記憶がある。自ら機能停止を選ぶというラストは生ぬるいと思ってあれやこれや考えたが、結局それ以上のラストは思いつかなかった。

自分が昔書いたものは割と捨てずに残してある方なのだが、これはルーズリーフに書いたこともあって今はもうおそらく残っていない。段ボールを漁ればどこかから出てくるだろうか?文字通り中二病丸出しの、まさに黒歴史と言ってもいいような作品だが、それでも自分で書いたものは自分で産んだ子供のように可愛いものだ。なんてことを言いつつすっかり忘れていた我が子の姿を、血にまみれて戦うダークヒーローを観て30年越しにふと思い出したという話でした。

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