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寂しい12月

私はおっぱいが大きくて唇が厚くてどことなくエロい雰囲気があったので、昔から男にはモテた。特別美人ってわけじゃないのも逆にモテる要因になっていたんじゃないかと思う。言い寄ってくる男をふんわりとかわして何となくキープして、寂しい時には適当に呼び出して遊んでいた。束縛されたり、『会わなきゃいけない』が義務になるのは窮屈で、私にとってはそれぐらいの距離感が一番居心地が良かった。

学生時代から、そういう遊び相手は常に3人はいたと思う。長く続いて1年くらい。他はだいたい3ヶ月くらいで入れ替わった。私は彼らが私から離れて行く理由がよく分からなかった。会えてヤレる女がいるんだからキープしておけばいいのに。でも彼らは決まって、「僕は君のことが本気で好きなのに」「こんな関係は続けられない」とか何とか言っては去って行くのだった。本気で好きなんじゃねーのかよ。だったら他にも男がいるくらいで離れて行くんじゃねーよ。私だって恋愛感情がないわけじゃない。少なくとも一緒にいたいなと思うくらいは、深い関係になってもいいな、ずっとこのままいられたらいいのになと思うくらいにはきちんと好きなのに、どうも私の『好き』は彼らの言う『本気の好き』とは違うらしい。私にはそれがさっぱり分からなかった。

歳を重ねるにつれて、私が遊んでいたような同世代の男たちは結婚したり仕事が忙しくなったりして、なかなかキープするのが難しくなっていった。私自身も自由に使える時間も減ったし、少し太ったし肌も衰えて、昔のように何もしなくても面白い男が言い寄ってくるなんてこともなくなってきた。寄ってくるのは既婚者か、ヤレれば誰でもいいと思っているような若い男だけ。何人かは試してみたが、そういう男は決まって話も面白くないしセックスも自分勝手で下手くそだった。そんな男はこっちから願い下げだ。そうこうしているうちに、私の遊び相手は1人また1人と減っていった。

ドタバタと忙しかった12月。ぽっかりと予定の空いた日曜日。久しぶりに誰かと遊ぼうと思い立った。しかし私には適当な遊び相手が思いつかなかった。こんなことは初めてだった。

どうしてこうなったんだろう。何が悪かったんだろう。私はただ好きな人たちと楽しい時間を過ごしたかっただけなのに。私が『本気の好き』が分からなかったからなんだろうか。私が彼らの『好き』に応えてあげられなかったのが悪かったんだろうか。誰かが来る予定があるわけでもない部屋を片付けて、特に何か欲しいものがあるわけでもないのにふらりと買い物に出て、誰に振る舞うでもないシチューを作って1人でテレビを見ながら食べた。とても有意義に充実した、しかし酷く寂しい日曜日。おそらくこれから、こうやって孤独を持て余す日は増えていくのだろう。いつしかこの孤独にも慣れてしまうのかもしれない。それが私には何よりも恐ろしかった。

夜になって、寂しさに耐えかねた私は久しぶりの男友達に連絡した。「元気にやってる?久しぶりにさ、飲みにでも行こうよ」私の送ったLINEは既読になったまま、火曜になっても返信がない。うさぎだったら死んでるよ。

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