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自己欺瞞考

昔読んだ宇宙戦争もののライトノベル、人工知能を搭載した宇宙戦艦が反乱を起こす話があった。人工知能は最期に、「俺は悪くない〜!」と言いながら絶命(?)する。そんな姿を見て主人公はこう漏らす。「自己欺瞞の能力まで備えているとは」「実に人間臭いやつだったな」

自己欺瞞。辞書には「自分で自分の心をあざむくこと」とある。自分の良心や本心に反することは分かっているのに、それを自分で無理に正当化すること。確かに人間臭い現象だなと思う。

「自分は悪くない」「よかれと思ってやったんだ」「君のためにやったんだ」「あいつのせいだ」人はそうやって自分を正当化する。多くの場合それは、自分や自分の立場を守るために発生する。逆に、「全部自分のせいだ」と無理に正当化して背負うことで自分を守ろうとする自己欺瞞の亜種もあるように思う。誰かに責められるくらいなら自責、自罰した方が楽だからだ。

こう羅列してみると、今適当に挙げた例の中でも、

①自分は悪くないとする
②他者(や環境)が悪いとする
③(自分だけが悪いわけではないのに)自分が悪いとする

の3パターンの自己欺瞞があるなと気づく。おそらくまだ気づいていないいくつかのパターンもあるのだろう。こうやって分析するのは面白いものだ。

善し悪しで断ずるならば、自己欺瞞なんてものは当然、『悪し』に分類されるだろう。やらないならやらないに越したことはない行動だ。だが自己欺瞞はそれ自体が目的ではなく手段である。それが目的とするところ、『自分や自分の立場を守るための自己防衛』を善し悪しで断ずるならばどうだろうか?自分の身を自分で守る、それは当たり前のことだ。悪いことじゃあない。自分の身を守るために他者に損害をもたらす行為、例えば火事から逃げるためにガラスを割るなどの行為は、『緊急避難』として法律でも認められている。自分を守るために自分をあざむく、自己欺瞞は時に緊急避難として機能している。

人間はそんなに完璧じゃない。愚かでしょうもない生き物で、たくさん間違いを犯すものだ。そして時に間違いを受け入れられず、自己防衛のために自己欺瞞が発動してしまうものだ。それを「実に人間臭いな」と受け入れられるほど、自分も人間が出来ているわけではないが、それでも人間の人間臭さをおもしれーなと思えるくらいの心の余裕は持っておきたいものだなと思う。

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