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御百度参り

都にある神社は、100日間毎日お参りすると何でも願いが叶うという言い伝えがあった。

ピサロという魔族の若者は、世界征服するという願いを叶えるために神社への御百度参りを始めた。雨の日も風の日も、前の日に遅くまで飲み会があった日も、ちょっと熱っぽいなという日も、仕事の納期が迫っていて寝る間もないような日も、ピサロは欠かさず毎日お参りをした。そしてとうとう100日目、願いは叶って世界はピサロの物となった。

ピサロの野望を打ち砕くために立ち上がったのが、サンオサール王国の勇者フリオニールであった。ピサロが御百度参りを始めて一週間目、神社の石段の下にある団子屋のおみっちゃんに向かって得意げに世界征服の野望を語っていたのを、フリオニールはたまたま聞いたのであった。

フリオニールも、ピサロの世界征服を止めるために御百度参りを始めた。雨の日も風の日も、合コンがあった日も、デートの日も、彼女の二股が発覚した日も、彼女と別れた日も、フリオニールは欠かさず毎日お参りをした。そしてとうとう100日目、フリオニールの願いは叶い、ピサロの世界征服は一週間で終わったのだ。

実に93日もの間、ピサロとフリオニールは同じ神社に毎日お参りをしていたことになる。2人は自然と顔見知りになり、挨拶を交わす仲になっていた。ピサロの願いが叶う日、ピサロはフリオニールに、「今日、僕の願いが叶うんだ」と言った。「僕もあと一週間なんだ」フリオニールはそう答えた。「願いが叶って魔王になったら、僕はおみっちゃんに告白をしようと思うんだ」ピサロは照れくさそうにそう言った。「応援するよ。一週間後僕の願いも叶ったら、3人で飲みに行かないか」フリオニールはそう言うと、ピサロと固い握手を交わして別れた。LINEは交換した。

一週間後、フリオニールの願いは叶って、ピサロはもう魔王ではなくなっていた。しかし彼の傍らにはおみっちゃんがいた。約束通り3人は飲みに行き、朝まで楽しい時間を過ごした。フリオニールはピサロに、自分の願いのことなどは何も話していなかった。ピサロの願いを破るような願いを持っていたこと、そして話すべきことを話していなかったこと。フリオニールはピサロに後ろめたさを感じていた。しかし、ビールを飲みながらおみっちゃんと笑うピサロの顔はとても晴れやかで、フリオニールの心配は杞憂に終わった。勇者フリオニールの活躍で、世界に平和が訪れたのだった…!

翌日から、フリオニールはまた御百度参りを始めた。ピサロと元カノが幸せになること、そして今度こそ二股じゃないことを願って。

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