車のT社が消える日

ー「ついに来たか」

「ああ」

ため息をついた。

ー「なんでこうなったんだっけ?」

「C国に電動化で負けたからだ。そもそも予兆は見えていた。」

ー「え、そうだっけ?」

「地方では、ガソリンスタンドが少しずつ消えていた。
   2019年時点で松山の実家近くでは、
   ガソリンスタンドよりもコンビニのEV充電器の方が近かった。
   駅から離れれば、なおさらだった。
   ガソリン車を買っても燃料を入れるための燃料が必要だった。
   そんな中で、C国が安価な電気自動車を投入してきた。
   自動車を持ちたい人は、そちらをどんどん買った。
   T車よりも電池の容量は小さかった。
   だけど、地方のコンビニの多くがEV充電器を持っていた。
   それに、個人が充電器を買って、アプリで電力を売りはじめたりした。
   もう、容量なんて、山に行く以外は関係なかった。
   遠くに行くなら、シェアリングで長持ちする車を借りるか、
   乗せてもらえればいい。
   T車の日本でのシェアはどんどん下がっていった。」

ー「あれ、でもアフリカなんかはガソリン車の需要があるんじゃないか?」

「同じ勘違いをT社もしたんだ。ファクトフルネスを呼んだか?」

ー「ああ。ロングセラーの本だろう。」

「あの本が出されたのは2018年だが、
    その時には発展途上国と先進国の区別は崩れていて、
    中間に位置する人の方が多いことは指摘されていた。
    電力が通じている人々が多くを占めていることも。
    なのに、まだガソリン車をアフリカの方々が求め続けると考えていた。
    C国はアフリカのインフラ整備事業に投資していた。
    インフラ整備のついでに、C国規格のEV充電器を設置していった。
    インフラ整備後に、自由貿易協定を結んで、安価な電気自動車を投入した。
    その後の、T社が外国に占めるシェアの下りっぷりは、悲惨だった。。」

ー「うーん。。」

「ちなみに面白いのは、
    昔働いていたトヨタの下請け企業は生き残ってることなんだ。」

ー「え、なんで。」

「エンジンを作る仕事をしてるとこだったんだが、
   化石燃料から高効率でエネルギーを取り出す技術を作って、
   それを用いた発電機を作ったんだ。
   こいつが不動産系にうけた。
   君もそうだが、多拠点で住む人向けの家に住んでるだろ。
   そこで人が住んでいない時の電力消費を減らしたい運営社が、
   化石燃料で動く発電機を使って、
   住んでる時だけ発電するようにしてるんだよね。
   あの会社は、すぐに潰れると思ってたんだが、盲点だった。」

ー「ああ、だから燃料代って領収書に書いてたのか。」


この記事が参加している募集

推薦図書

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?