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紅葉登山と秘境の水風呂

秋の気配はどこへ・・・、各地で10月の暑さを記録更新した。
気象庁によると30度を超える真夏日が3日間続くのは観測史上初めてのことで、日本で観測がはじまった1870年代の10月平均は15度前後だったが、近年は20度を超えることも珍しくない。
日本は徐々に四季を失っているのだろうか。

今回の紅葉登山は『伊予富士』である。
四国の真ん中を貫く山脈は西日本最高峰の石鎚山をはじめとした標高2000m近い山々が軒を連ねる。
例年の紅葉の見ごろは10月中旬であるが、この日は20度前後に加え湿度の高い一日であった。
登山道はいきなりの急登。汗だくになりながら分岐の桑瀬峠から伊予富士方面へ歩みを進める。
ここからは笹原広がる稜線。少しだけ色づきつつある紅葉を楽しみながら、森の縁を歩いていく。

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伊予富士直下は急な登りが特徴で、数メートル歩いては呼吸を整えないと次の一歩が出ない。
吹き出る汗に、1リットルの水分も底をついてしまう。
頂上直下の急坂を登り切り、山頂に立つが暑さと疲労でしばらく座り込んでしまった。
深く深呼吸し、あらためて視界を広げる。
目を奪われたのは西側の風景。頂上の向こう側で今まで見えなかった、頂上に立ってはじめて見える風景だ。

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頂上から延々と石鎚山に向かって稜線が続いていく。
山頂で展望とランチを楽しむが、水分が無く喉を詰まらせながらかきこむ。
眼下には通称UFOラインと呼ばれる町道瓶ケ森線があり、天空へと続く絶景ドライブコースとしても名高い。

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息を切らしながら登った稜線は、今にも雲に飲み込まれそうな勢いだ。

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雲海の壮大さに見とれながらの下山は、疲れを忘れさせてくれる。
やがて雲に飲み込まれ、濃いガスの中を進む。
山の天気はすぐに変わるというが、本当にその通りだ。
桑瀬峠に着く頃には雲は上空へと去り、再び青空が訪れた。
下山後、水場に顔をつっこみ思い切り水分を補給した。

登山の後は温泉とサウナだ。
山の麓にある『木の香温泉』に向かう。

今年、サウナにすっかりハマった僕は週1~2回のペースでサウナに通っている。【サウナ→水風呂→外気浴】
サウナの良さとは何だろうか。生理学的に論じてみたい。
「サウナ=気持ちい」というわけではない。
むしろ高温多湿の環境は不快感が増すだろう。
この時の身体は、外気温に耐えかねて危険信号を出すため交感神経が優位になる。
次に水風呂に入ると、身体が急速に冷やされる。
この時も同じだ。急激な温度変化により体の交感神経が優位になる。
その後、外気浴スペースで休憩をする。
このとき、サウナ⇒水風呂で交感神経優位になっていたとことから、逆に副交感神経が優位となり、身体全体が一気にリラックスモードに入るのだ。
水風呂によって収縮していた血管が解放され、体表温度も脈拍も平常時に戻る。
緊張から解放された時のホッとした感じ、自分の基準となる体温や脈拍へと一旦リセットされ、再起動されるときの感覚。
この感覚が自律神経を整えるのだ。そしてメンタルを安定させる。

この一連の動作をサウナーは『ととのう』と表現する。
そして、サウナ好きに共通するのが【サウナの主役は水風呂である】ということだ。
程よく冷えた水風呂があってこそ、最高の環境が整うのだ。
ほとんどの温泉・サウナ施設の水風呂は水道水だろう。
そのせいか、カルキ臭さもあるし、多数の人間が出入りし、水温が上がっていることも少なくない。
ここ『木の香温泉』の水風呂は違う。
石鎚山系に流れる良質な地下水を流しているのだ。
しかも水風呂の底には川石が敷き詰められており、川に入ったように肌あたりが柔らかく、自然そのものを満喫できる。

外気浴も気持ちいい。
広々としたウッドデッキから見上げると、空が一面に広がり、心と身体を癒してくれる。

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じっと雲を目で追う。
あの雲は山頂で見た雲海の切れ端だろうか。
風が心地よく雲を運び、心を運び、時間を運んでいく。

ぼくの紅葉登山はまだまだ続く・・・。

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