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サブカル・オタカル・移民文化の育まれかた

毎週水曜の早朝(7〜8時)にやっている、文化雑談会「トーキョーアーツのれん会」の話題を共有するnoteです。

先週(2018/7/11)は、「どうすれば文化が育っていくか」というテーマの博士論文について白熱の議論が展開されました。サブカル/オタクカルチャーから、移民や多文化共生まで。今後の予定と今週のオススメ本情報もあります!

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—今週のおすすめ書籍---
起業への挑戦
ガイ・カワサキ (著), 三木俊哉 (翻訳)
http://bit.ly/THEARTOFTHESTART
一言コメント:NPOのスタートアップにもおすすめ!
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〔前回ののれん会では...〕

◎まずは、久々にご参加のSFC非常勤講師の菊地映輝さんがひげを生やしてきていたので、ひげの話題から
ペニシリンと髭の関係性の話題が出て、でも、真偽を確かめられないまま、フェザーミュージアム(岐阜県関市)なんていう博物館も発見しました。
▼世界初の刃物総合博物館「フェザーミュージアム」
http://bit.ly/feathermusium

◎まさに、雑談から始まりましたが、その後菊地さんが執筆中の博士論文のテーマ「どうすれば文化が育っていくか」ということについて語り合いました。

論文は、主にサブカルチャーやオタク文化などの若者文化がどのように成長していくのかというテーマでリサーチ。
文化政策の領域の議論でも サブカルチャーへの言及が少ないとのこと。
また、サブカルやオタク文化は、誰かが意図的に成長させるのではなく、野放しに育つものとされているかもしれないが、そんなことはなく、それを都市空間から見ていきたい。
都市空間の中でサブカルを育てることに貢献する施設や空間についての言及が既存の文化政策論で取りこぼされているのではないかと思われる、という背景。

演劇集団地下空港主宰の伊藤さんからは、昨年ロンドンに行った際、ショーディッチ(イーストロンドン)あたりが、グラフィティだらけだった事に触れ、野放しで文化が生まれる気配があったと。
また、イギリスはカウンターカルチャーが強く、正当文化があって、そこに対する若者文化としてのカウンターカルチャーの立ち位置もはっきりしているように感じるとのこと。

一方、菊地さんからは、日本のサブカルだとカウンター性はあまり重要とされていないとした上で、サブカルチャーだったものが、サブでなくなるという流れがあると指摘。サブカルかそうでないかを分けるのは、ラベルが貼れるかどうかで、「〇〇族」から「〇〇系」に変わるとき、ラベルが付いたときにサブカルとして認識されるといいます。

また、最近はネットのせいかもしれないが、集団に名前がつかなくなってきている。また、本人たちもそこにこだわらなくなっているという話や「つくし世代」という新たな側面も紹介しました。

▼参考図書
- 『族の系譜学ユース・サブカルチャーズの戦後史』 難波 功士 (著)
http://bit.ly/zokunokeifugaku

- つくし世代 「新しい若者」の価値観を読む (光文社新書) 藤本 耕平 (著)
http://bit.ly/tsukushisedai

また、別の視点では、ナイトカルチャー/ナイトタイムエコノミーにも着目していて、いまひとつ日本で定着しないことの理由には、稲作文化の「夜は寝なきゃいけない」DNA的な視点もあるかもと。
以前にものれん会で紹介したロンドン市長の出したビジョンは、ナイトカルチャーは夜遊びだけでなく、都会人の生き方の多様性を保証することを謳っているという話も。
▼24 Hours London Vision
http://bit.ly/London-24hour-vision

◎女性のオタク文化について、そもそもコミックマーケットや同人誌即売会の参加者の大半は女性だが、宮崎勤事件や宅八郎のイメージで男性が多いというイメージができた。また、秋葉原よりも以前から池袋のほうが漫画屋はおおかった。一方、秋葉原が男の人が多いのでオタク=男性というイメージになったのではないかという考察も。

◎呼ばれ方、名前のつけられ方
続いて、アイデンティティと名付けられ方の話題に。
かつて、族や系というものと雑誌が強い関係があった「アニメージュ」「宝島」「ビックリハウス」などのサブカルからアンアン、ノンノンのアンノン族まで。

アート系だと「コンテンポラリーダンス」/「野獣派」などのカテゴリーもあるが、当事者のアーティスト側からは嫌われる傾向もある。

また、他人から与えられたネガティブなイメージを、自らポジティブに転嫁して使う例として「ニガー」呼称は典型的
黒人同士では使うけれど、他人種に使われたらブチ切れる、なんていう例も。

◎プロテストカルチャーと共謀について
大学院で行政学を学ぶの熊田さんからは、ドイツのプロテストカルチャー(抗議文化)の話題。
カウンターの動きを「運動」(二人以上で活動をすること)につなげる
ラベリングされたことに対して、ジョークっぽく言っているのが運動的に見える

また、セゾン文化財団の福冨さんからは、LAでは、2人以上で申し合わせてなにかやると「共謀」とされる。
と指摘し、熊田さんからは、今、日本の「共謀」も2人以上で準備行為をするだけで犯罪となりそうなので、そこが議論となっていると応答。国際条約上は3人以上で「共謀」(TOC条約 http://bit.ly/wiki-toc )だが、それが2人という話になっている。

ちなみに、法律では大きく英米法と大陸法があり、日本(大陸法)では、思っただけでは逮捕できない。英米法だと思っただけで逮捕できる、という特徴がある。
▼大陸法と英米法(コモン・ロー)の違いはこちらで。
http://bit.ly/tairikuhou

◎若者カルチャーの生まれる場所の話しに戻り、文化醸成には空間が影響する、という点を指摘した上で、文化が生まれる街には、以下3つの機能があるとしました。1. アイデンティティを付与する空間(街全体がその集団に対して優しいということ、ショップの袋などのアイコニックなもの)、2. ネットワークを作るための空間(ショップなど)、3. 活動を実践するための情報や手段を提供する空間。
これらは、秋葉原だけでなく、下北沢の若者文化、巣鴨の高齢者文化などにも同様の傾向がある。

とはいえ、インターネットでだんだんそれが壊れているよね、というのが大事なところ
最近は、秋葉原はオワコンという側面が出てきている。昔は電気パーツセンターだったのが、アパホテルになっていて、実は海外からの来訪者の期待値は高い(上位3位以内)が、満足度は低いとも。外国人にも日本人のオタクにも受けない、という状況が見えてきている。
ただ、角地のベルサール秋葉原(三菱銀行跡地)の1階がイベントスペースになっていて、そこで行われるイベントが効いている。人から見られるということが重要。

という話が出たところで、以前のれん会でも話題になった「喫茶ランドリー」の田中元子さんが提唱する「1階のまちづくり」にも通じるという話題にも転じました。1階=グランドレベルが開かれていないと街は死んでいく。商店街で店舗だったところがペンシルマンションに生まれ変わり、1階がエントランスや居住者の駐車場になってしまう。それが、だんだん増えていくことで、かつてそこを歩く人に開かれていた通りが味気のないエントランスだけの通りにかわっていく=街が死んでいく。
▼『マイパブリックとグランドレベル ─今日からはじめるまちづくり』田中元子 (著)
http://bit.ly/mypublicandgroundlevel

◎台北のオタク街
話題は戻って、菊地さん、台北のオタク街がどこにあるかという調査をした
台北駅近くの電気街には秋葉原のような文化はなかった。ただ、台北駅の地下「台北シティーモール」にオタク文化があり、近接エリアに東南アジア労働者系の人たちが多い場所がある。両者とも出店料が安いことが特徴。また、台北の渋谷と呼ばれる西門町にもオタク街があるのだが、そちらは輸入の日本的なオタク文化の場として「カワイイ」傾向がフィーチャーされていて、「メイド喫茶」「アニメイト」などが出店している。

地下空港の伊藤さんは、今住んでいる西川口の多民族性がすごい、と。
隣の蕨のURは半分以上中国人が住んでいるが、とても整然と暮らしている。また、ワラビスタンと呼ばれるクルド人コミュニティができている。西川口〜蕨に特殊な移民街ができているという、現状を教えてくれました。
四ツ木(葛飾区)のエチオピアコミュニティも面白いらしいという話題など
▼コムアイの東東京開拓ルポ 多国籍な移民との出会いから始まる調査(CINRA.NET)
http://bit.ly/easttyo-com-i

ということで、菊地さんの博論をネタに情報量の多いのれん会となりました。
相当長くなったので、このへんで。

朝っぱらから、こんなふうに語り合ってます。
どなたでもご参加歓迎です。

2018.7.11 @両国門天ホール 7名参加
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