渋谷 龍介

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    テーマを気にせず好きなものを思いのままに綴ります

最近の記事

テスココ湖を思って

テスカトリポカへの愛を綴りたいのに、なんかもうどうすればいいのか分からない。 信仰が欲しいと思う。そこに物語があれば幸せだと思う。だから神話に心を奪われるのです。そして生きるのって辛いな、と感じるのです。 ブラッド・キャピタリズムも麻薬カルテルも、確かに知らない世界を垣間見てるようでドキドキもワクワクもするが、そんな心踊るような話じゃない。どちらかというと全く逆の、気の詰まるような読後感。 黒よりも昏いミトナルのような世界で、暴力の化身かと思う化け物コシモがその身に似つ

    • 残像に口紅を

      世界から「あ」がなくなり、「愛」も「あなた」も消えた中で、最後の「ん」が消えるまで果たして「にんげん」は存在していたのだろうか。 音がなくなりゆく現実と虚構の調和の中で、それでも残像の愛を向けた先は「にんげん」なのではないだろうかと思えるこの一文が心に残る。 だからこそ最後に消した音は「ん」であると願っているし、これは決して五十音の秩序でないと信じている。 そして口紅という表現になるのだろうと。 「本当に失いたくないものは、遠ざけておくものだ。」とは、言い得て妙だと思う。

      • 隔月記

        『狐笛のかなた』を読んで ふとしたきっかけで手にした『狐笛のかなた』 著者の作品は『鹿の王』しか読んだことがなかったのですが、読んでみると面白くて頁をめくる手が止まらなかったので、原風景に馳せる想いと滅びゆく種の精神性に関して呪いを込めて書き連ねていきます。 作品を通して垣間見える原風景 本書はジュブナイル小説に該当する立ち位置だが、大人こそ読んで楽しめる文学作品と思う。 序章「出会い」から始まる、野を「野火」と呼ばれた小狐が駆ける描写は、幼き頃どこかで見たような「あっ

        • 月記 20221001

          文章を書く練習として、「日記を書きたいな」といつも思うのですが、しんどいので月記にしました。 仕事で書く日報も苦手なのに、余白の時間で日記なんて書ける訳がない、ということで。 月記であればせめて続けて欲しいなと切に願います。 今日は仕事が休みなので午前中から病院に行き、例の如く本屋を徘徊して帰ってきました。 なので、収穫した本の話です。 『異常【アノマリー】』 著:エルヴェル・テリエ フランス文学という位置付けで、ぱっと見、SF色が強そうな感覚。 ゴンクール賞を受賞して

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          死にたくなったら電話して

          『死にたくなったら電話して』 著:李龍徳 この小説を読み終わってから2週間が経ちました。 2週間を経て、未だ拭きれない圧倒的に異様な読後感に整理をつけたかったのか、それとも強く心の底にこびりついた負の感情と向き合いたかったのか分かりません。 更新したことのないnoteを書いてみようと、ふと思い立ちました。 ストーリーに関して細かくは触れません。基本的には何を感じたのか、つらつらと書き記していこうと思います。 「死にたくなったら電話して下さい。いつでも。」 空っぽな日

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