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え、まだ熱心に指導してるの?これから求められる保育者は「ファシリテーター」でしょ?

 はい、みなさんこんにちは!男性保育士のRyU先生です。今回のアウトプットは「幼児期への関わり方」についてやっていこうと思います。

 「運動」や「音楽」、「絵画」など様々な活動の中で熱心な指導をしている先生達、もしどれだけ工夫しても、その成果が出てこないと悩んでいるのなら「ファシリテーター」へと転身することで道が開けるかもしれません。

 参考文献:中川 昌幸(2018)『幼児期における運動遊びの重要性とその指導法に関する一考察』保育研究、第48号 になります。論文ではないので参考文献の記載形式が異なりますがご了承下さい。

<「コントローラー」と「ファシリテーター」>

 僕の記事の中では「意識して行うのと、無意識に行うのでは効果に大きな差がある」と毎回の様に言っています。それは直接的にその活動にかける時間が増えることもそうですし、視野が広まり、子ども達の活動をフィードバックして考察を深めていくことができるからです。

 今回とりあげる「幼児期への関わり方」についても、多くの保育者はすでに実践できていることです。ですが、それが根拠のあるもだと知らず、意識をして行っていない人が大半です。

 参考とした論文の主訴は「幼児の運動能力の低下への警鐘と、現場保育者に求められる指導者としての在り方」に集約されると思うのですが、今回はその中でも後者である現場保育者に求められる在り方に焦点を当てていこうと思います。

 保育者には2種類います。それが「コントローラー」と「ファシリテーター」になります。それぞれの単語からなんとなく、どんな保育者か想像できますか?

<保育者先導の関わりをもつ「コントローラー」>

 ゲーム機器にコントローラーって付き物ですね、何をする為のものですか?

 皆さんお分かりだと思いますが、画面内の対象を操る為の器機がコントローラーですよね。そうなんです、熱心な先生ほど、子ども達を操る(というと語弊が生じますが)ことで良い活動を提示しようと、知らぬ間に子どもにとっての「コントローラー」になりがちです。

 今回の論文の中で、幼児の運動遊びに関してとても興味深いデータが載っていました。

 日頃から園児に熱心な「運動指導」を行っていたA園と、子ども達が自由に遊ぶB園とで運動能力を比較したところ、なんと運動指導を行っていたA園の園児よりも、自由に遊びその中で身体を動かしていたB園の園児の方が運動能力が高いという結果が出たのです。

 普通に考えると、運動の種目に対して理論立てて説明をして、子ども達にその遊びに触れる機会を増やす「熱心な指導」を行った方が、子ども達は身につきそうに感じます。しかし、実際には自由に遊び、その種目に対して子ども達が自ら選び遊んでいたB園の方が良い結果が出ました。

 このことについての考察として、論文の中で著者は「熱心な指導を行おうとするほどに、保育者の説明や遊びを中断しての技術的指導が入ることで、逆に運動遊びをする時間を少なくしてしまっている」と言う様に論じています。

 また、子どもの成長・発達には「主体性」という概念が大切であり、A園は保育者が提示した遊びを受動的に行っていたけれど、B園では子どもが自由に主体的に遊びを選んで能動的に行っていたことについても、子どものやる気の向上・継続に関わり運動能力の差に繋がったのではないか?と言う風に考察をされています。

<子どもが主体的に遊べるよう援助する「ファシリテーター」>

 コントローラーと並べて比較していますが、「ファシリテーター」と言われてもちょっとピンとこないですよね。これは「促進する」、「助長する」などの意味を持つ「ファシリテーション」からきていて、文中では「進行促進役」と意訳をしていました。

 これからの世代を担う子ども達に必要とされるのは「主体性」、「協同的解決能力」、「アクティブシンキング」の力であると世界的に声高に言われています。この【3つの力】については別記事で詳しく解説していますのでそちらをご覧下さい。

 同じ活動をするにしても保育者が先導をして、やり方を丁寧に教えながら行う場合は、子ども達にとって受動的な体験となります。一方で、保育者が色々な遊びを提示し、その中で子ども達が自主的に選ぶことによって同じ活動でもそれは能動的な活動にもなります。

 後者がファシリテーターとしての関わり方ですね。より具体的に解説をすると、子どもが自ら選べる「環境を用意する」、自分で考えられるように十分な「時間を設定する」、子ども達の発達課題と興味関心にマッチする遊びを「提供する」、時に手本となり自分の身で「魅力を伝える」ことがファシリテーターとしての保育者の役割になります。

<子どもが主体的に活動をすると興味関心が深まり継続する>

 とはいえ、本当に指導が上手な先生であれば指導型の活動も悪いとは言えません。きっとその場合には、子ども達が興味をそそられ、頑張ろうと思えるだけの創意工夫をしているはずだからです。こうした稀な先生は、指導者でありながらファシリテーターとしての関りもできているだろうと考察します。

 問題となる「コントローラー」は、やりたくない子にも強制的に行わせたり、子ども達の関心には目を向けずカリキュラムを果たすことだけを考えて活動を取り入れる保育者であると僕は考えています。

 子ども達は本当に可能性に満ちていて、自ら興味をもって遊んでいると時間を忘れてそのことに没頭したりしますね。

 ですが、子ども達は非常に不安定でもありますから、興味を持てない事は長続きしません。例えその活動が、親や保育者からしてみればその子の将来に必ず役に立つと確信があっても、子どもには興味が沸かないこともよくあることです。

 指導保育が良い悪いという話ではありません。要は子ども達が自分達で遊びを選択し、興味関心を広げ、保育者は必要に応じた最低限の援助を行う。そうすることで、子ども達は関心を深め、また活動に取り組む姿勢・気持ちが継続していくものだということを今一度考えてみて欲しいのです。


 ということで、今回は幼児期における関わり方として、保育者主導の「コントローラー」型の活動の弊害と、子どもの主体的を尊重し援助をしていく「ファシリテーター」型の活動の効果についてまとめてみました。

 また、学ぼうね!


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保育士りゅう先生

 保育士りゅう先生(「RyU先生」で子育てに関する記事の執筆を依頼を受けてしていました)

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