神か悪魔か偶然か運命か#03

いまから会いにいってもいいかな?
とメールを打ちかけたがやめた。
突然会いに行ってみたら
どんな反応をするのか
見てみたかった。
心がたしかに僕のものになっているなら
きっと喜んでくれるだろう。
そう思いながら車を走らせた。
車内のラジオからなにか
懐かしいメロディーが流れていたりしたような気もする。
でもその時の僕は彼女の心のコンパスが
どこに向いているのか。
それだけしか考えてなかったのか
四時間はあっという間に過ぎて
彼女の家の駐車場に着いていた。

彼女の住む部屋の玄関の前に立ち
深呼吸をした。
初めて訪れた時のような
緊張が指先まで走り
ベルを鳴らしたのに、鳴った音に
自分で驚いた。

彼女がドアを開ける。
いつもより目を瞬かせていた。
本当に驚いている様子だった。
「ごめん。急に来ちゃって。」
と僕が言うと、
ゆっくりと息を吸って吐いてから彼女は
「会いたいなあ。って考えてたから
すごくびっくりした。」
と小さな声で言った。

こんなことって
あるのだろうか。
神様でもない悪魔でもない
ただの人にしか見えない人間がくれた奇跡。
ただ謎の取引が成立したからこうなった
とも言いきれない。
本当はただの嘘を信じ込んだ僕の起した
行動の結果かもしれない。
どちらにせよ、いまは
そんなことはどうでもよかった。

彼女のはにかむ笑顔が見れたから。
       

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