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【投資BOOKS】ラップ口座入門(野村證券ゴールベース研究会)

移動の合間の時間つぶしに、
本屋でプラプラしていたら、


ラップ口座にお金を入れるくらいなら、
サランラップに包んで保管した方がまだまし!

という評価が、
ネット上で定着したファンドラップの入門書に出会った。

ラップ口座入門の概要


野村證券の社内研修資料をベースに作成された本で、

社内啓発だけでなく、投資一任に取り組む同志へも伝えたい。
という出版の志がすばらしい。

本書では、主に、3点が書かれている。

・現代ポートフォリオ理論
・ゴールベースの資産管理
・ラップ口座の海外と今後の日本の動向

私は、20年くらいアウトソーシング事業に従事していたので、
ITシステムの運用一任の経験から、金融の投資一任に興味を持ち、

昨年からダイワファンドラップを継続しているものの、ファンドラップ自体の情報が極端に少なく、モヤモヤしていた。

本屋で、偶然出会えたのも何かのご縁と考え、一気に読んで、印象に残った部分をまとめた。

ラップ口座に関しては、海外事例レポートなどは見かけてはいたが、まとまった本は、はじめて見た。

読書後の感想として、

ちょっと期待ハズレ。

提供側視点で書かれているので、顧客視点としては、ものたらなかった。
でも、野村さんだけあって、幅広い内容が整理されていて、

ファンドラップのイメージがより鮮明になり、新たな見え方になったので、読んでよかった。

現代ポートフォリオ理論


ファンドラップの提案書に必ず登場する効率的フロンティアについて、解説されている。

顧客の立場では、詳細の理解は不要としても、各社のファンドラップの比較をするときには、役立つと思った。

縦軸(リターン)と横軸(リスク)で描かれる効率的フロンティアの曲線で、
なぜ、上に凸な曲線になるのか、もし無リスク資産を入れたら曲線が、どう変化するかも解説されている。

少し難しいが、効率的フロンティアを初心者レベルで解説したものは見たことがなかったので、参考になった。

ゴールベースの資産管理


ゴールベースという考え方は、個人的には難しい。

「まだ未経験の新しいことをやりたい」ので、
ゴールは、見えていない。

ゴールベースのステップは、以下の4つで普通なんだけど、

①ゴールの優先順位を決める
②ライフプランを作成する
③投資方法を決める
④定期的に状況を確認する

ゴールの例が、
資産を1億にしたいというような数値目標ではなく、
”リタイヤ後に豊かな生活をしたい”なんていわれると、
ガクッとくる。

それなら、

ライフプランベースの資産管理
でいいのでは?と思う。

ゴールとは、もう少し重たいもので、
哲学的な自分の存在意義などに直結し、
ゴール実現とお金は直接的には連携しない気がする。

本書では、

金融屋さん視点のゴールベースの資産管理の考え方について、丁寧に解説されているものの、

ゴールからライフプランを作成すると言って、

子供の教育は?
家のローンやリフォームは?
リタイヤ後の海外旅行の予定は?

等をヒアリングして、コストを積算し、投資計画を作成して終わりでは、寂しい。

リタイヤ後、何回、海外旅行へ行かれますか?
ではなく、

海外旅行はお好きですか?
バリ島のxxxへいかれたことは、ありますか?
少し穴場なのですが、当社の提携ホテルがあって、
先週確認したところ、7月の第3週目のみ少し空きがありました。
すごくいいホテルで、きっと人生観が変わりますよ!
まず数日、体験されませんか?。。。

ぐらいの深さまで踏み込んで欲しい。

この点に関連して、
ダイワファンドラップでは、プレミア以上の契約顧客へ、セゾンと提携したプラチナ・アメックスカードを、年会費無料で提供している。

楽天プレミアムカードにもついてる、海外ラウンジを利用できるプライオリティ・パスも付帯する。

この企業提携で、少し踏み込んでいるとはいえる。
でも、あくまで提携レベル。

ラップ契約者向けのコミュニティやオンランサロンなどあれば、顧客間の情報共有、情報交換などにより、さらに良くなる気はする。


ちなみに、
私は、30歳の頃、知人の生命保険マンにライフプランを作成して頂いた。放置していたが、最近見直したら、ほぼ同じ結果になっていて驚愕した。

知人なので私のライフスタイルなどは、熟知していたとは言え、
30年間のキャッシュフローを予測できるとは!

ライフプラン恐るべし。

ライフプランニングサービスは、高島屋さんなども参入してきて、現在、乱戦模様です。


野村さんのサイトでの提案例が分かりやすい。
顧客開拓の営業ツールではあるものの、顧客として使いこなせるかがキーです。



海外と日本のラップ口座の動向


現在、(ほんとうかどうかはわからないが)海外でのラップ口座は、「水や空気のようなもの」で、既に特別に語るものではないらしい。

日本での「コスト2重どりで論外」という評価とは、天と地の差がある。

海外でのラップ口座のアドバイザーが受け取る平均的なフィーは、年1%程度で、追加で取引料やシステム使用料が別途上乗せされる仕組みのようだ。

日本でも、フィーの見える化を進め、納得感を得られるようにして欲しい。


本文中に、フィーの対価の話で、

同じ時刻につくのに、
普通車とグリーン車の運賃が違うのがおかしいという指摘は、おかしい。

という、うまいたとえがあった。

同じリターンで、フィーが違うというのは、おかしいという指摘は、
おかしいということだ。

普通車とグリーン車では、乗車体験が異なるのと同じように、株式や投資信託での投資と、ファンドラップでは、投資体験が異なるということ。

私は、東京に単身赴任していた時、こだまのグリーン車で、自宅のある名古屋へ帰省することにしていた。

青春18切符(約2000円)で乗車できる期間は、静岡や浜松などで途中下車しながら帰省するのも好きだった。

新幹線の場合、
EXこだまグリーン早特(3日前まで)が、料金的にお得で、

こだまグリーン席+シウマイ弁当+ビール  ≒ のぞみ指定席

という、帰省方程式が成り立ち、

小田原ぐらいから、海を見ながらお弁当を食べ、
のんびり帰省するのが好きだった。

のぞみ指定席でサクッと帰省するのと、

こだまグリーン席で帰省するのとでは、乗車体験が大きく異なる。
隣の席や周りにも、あまり人がいない中で、ゆったりすごしながら、移動できる。

ファンドラップにたとえると、

市場の変化に動揺することなく、投資を継続し、

お弁当は、運用益として自分で食べ、
ビールは、フィーとして車掌さんへプレゼントするイメージだ。

ファンドラップ ≒ グリーンでの帰省
自己判断の投資
 ≒ 青春18切符での帰省

自宅へ、ゆったりまったり帰省するという
ゴールベースのアプローチとして、

目先の移動時間の長短にこだわらず、
自分は、どんな帰省をしたいのか?

このイメージは、すとんと腹に落ちた。


ラップ口座のアドバイザーの方向性


ノーベル経済学賞を受賞したマートン博士の講演内容が、整理されている部分があって、考え方に共感した。

マートン博士は、

金融のアドバイスは、医療サービスと似て、『掘り下げても本質的に不透明』である為、サービスを提供する唯一の方法は、信頼を通じてのみ

と述べられ、
アドバイザーに求められる2つの要素を挙げられていた。

・信頼に足るか
 
顧客を理解し、顧客の立場に立って提案しているか?
 提案は、合理的、客観的、倫理的であるか? など
・能力と専門性
 
専門家としてのスキルがあるか?
 判断は、客観的、科学的、論理的か?
 顧客が求める情報を持ち、わかりやすく説明できるか? など


そして、
信頼と専門性を持ったアドバイザーの最も大きな価値は、

相場が大きく変動する時に、顧客のそばにいて、顧客が少しでも非合理的な取引をしないようにすること。

バンガード社での、相場が動いた2008年からの5年間の調査結果によると、
自己判断で取引した顧客と、資産割合を調整するターゲットデート型投資信託を継続保有した顧客の利益差は、1.5%(日本のファンドラップ・フィーに近い!)あった。

ラップ口座のアドバイザーのアドバイスの価値は、資産割合を調整するターゲットデート型投資信託を継続保有した時の利益の差分に匹敵するというロジックだ。

なるほど。



最後に、今後のアドバイザーの方向性は、

全体的なアドバイスをカストマイズして提供する。

と本書では、結論付けられている。

アメリカでは、「全体的な」(Holistic)という言葉がはやりで、

単にファンドラップを売るだけでなく、資産全体やゴール、ライフプランなどに寄り添って、その顧客用にカストマイズした「全体的な」アドバイスを、継続的に提供し続けるということ。

言うのは簡単だけれど、
日本の現状では、まだ商品販売+付帯サービスの域を出ていない気がする。

ゴールベースのアプローチも、金融資産だけでなく、
経営資源を参考にして人生資源全体を視野に入れれば、おもしろいと思う。

人生資源を考える上で、以下の分類は参考になる。
①カネ
②ヒト
③有体物
④無体物
⑤知覚できない資源


IT業界でのERP(Enterprise Resource Planning)パッケージのような、
人生の資産管理パッケージのような標準モデルを作って、

ラップ口座をコア資産として、
サテライト資産を個別にカストマイズするような方向へ期待したい。


顧客視点としては、
お金という不思議なものを介し、

多くの顧客のゴールに直接かかわってきたアドバイザーと、

変化しすぎて、ついていけないような投資環境の中でも、

ゆったりとグリーン席に座り、いっしょに投資の旅を楽しめるような、
リニアに乗車して、ラップ仲間といっしょに、銀座で日帰り忘年会ができるような、

そんな、アドバイザーに出会い、新しい投資体験をしてみたい。


(補足)本書ではじめて知った用語


新しい用語を知ると新しい世界が広がる。
興味を持った、はじめて知った用語たち。

Supernova:スーパーノヴァ
フィー型ビジネスの継続的(12/4/2)なアプローチ方法のことで、顧客が認知している定期的な接触習慣が顧客満足度を上げるという考え方。
・毎月1回の定期的な接触
・四半期レビューの実施
・四半期レビューのうち、2回は60分の面談を実施
Supernovaの効果は理解できるが、最低でも、5000万ぐらいの預かり資産がないと提供側は、面倒くさがりそうな気がする。。。

この考え方は、ITアウトソーシングでも同じで、毎月1回の月次会議、四半期ごとの運用報告及び、年次の顧客との共同目標の評価報告会が基本サイクルだった。システム障害があった月の月次会議は、つらかった。。。

私も、預かり資産が積み上がれば、ファンドラップの担当者との年2回の面談日程を、年初に仮決めしてみようと思った。

UMA:ユニファイド・マネージド・アカウント
複数口座を管理するサービス名称。個人が、1社の1つのラップ口座だけで運用することはまれなので、各社で開設している口座をまとめて統合的に管理するサービス。私は、自分で管理すればいいけれど、管理の仕方やツールなどは参考になるハズ。

UHNW:ウルトラ・ハイ・ネット・ワース
金融資産1000万ドル以上の超富裕層の名称。Net Worthは、会計用語で純資産。100万ドル以上は、Uがなくなって、HNW。
アメリカでは、顧客の2極化が進行中で、HNW以上は、専門性の高い対面サービスで対応し、HNW未満は、コールセンターとインターネットを主流とする方向へ移行中とのこと。

対面は、100万ドル以上か。そうだよね。。。

(まとめ)

◇タイトル:ラップ口座入門
◇個人満足度 ★★★★☆(4)
◇個人総評
虎の巻のような社内資料を入門書として出したこと自体が、すばらしい。
この本は、野村證券の公式本ではないが、こういう取り組みこそが、昨今、金融界で言われている”顧客本位の業務運営”だと思う。
ファンドラップの理解をさらに深める為に、商品設計の具体的な解説や実績データなどを含めた実践編を出して欲しい。
◇個人アクション
残30年で資産がゼロになるライフプランを作成することで、最大限使える予算を明確にする。
そして、最大限使える予算から、ゴールを設定する逆ゴールベースアプローチを試してみる。

【今日のひとこと】


人間は一生のうちに逢うべき人に必ず逢える。
しかも、早すぎず遅すぎないときに。

(哲学者:森信三)


【余談】

ちょっと笑えたのは、

以前、野村さんで、ファンドラップの説明を受けた時、
粗品でクレラップを頂きました。

大阪ならともかく、

名古屋の野村證券のお店なので、
ファンドラップの悪評を逆手にとった意図的なダジャレではないです。

名古屋は、尾張武士末裔の質実剛健で、まじめな土地柄です。

ちなみに、我が家は、サランラップではなく、クレラップ派なので
よろこんで頂きました。。。





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