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『野菜大王』と『文具大王』

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細かく投稿した小説をマガジンにしてみました。是非一話からお楽しみいただけると幸いです。もうすぐ最終回になります。
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2024年3月の記事一覧

『野菜大王』と『文具大王』第4章・パプリカーン

『野菜大王』と『文具大王』第4章・パプリカーン

パプリカーンとの出逢い 

前章までのあらすじ
食べ物を粗末にして大王の星に連れてこられた康太は、牢獄の中でカンボジアの少年ネロと友達になる。ネロは鉛筆を万引きして文具大王に摑まったのだ。そして、ふたりの大王裁判が始まった。
裁判の結果、康太は有罪となりファーム行きを命ぜられる。一方ネロは無罪になったが、自分も康太と一緒にファームへ行くと大王に頼み込む。
ふたりを乗せたかぼちゃの飛行船はファームに

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『野菜大王』と『文具大王』第5章・台風襲来

『野菜大王』と『文具大王』第5章・台風襲来

前章までのあらすじ
裁判にかけられ有罪となった康太は、ファームの師匠パプリカーンと出会った。厳しい農作業に耐える康太に比べてネロは成れたものだ。パプリカーンはネロに遣り過ぎたと教える。康太の為にならぬと言うのだ。日々ピーマンを育てる康太とネロの絆が深まる中、農作物にとって最大の敵がやって来る。

台風襲来

 きっかけは、住所の交換であった。お互いの住所を交換したが紙に書かれた言葉は互いに読む事は

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『野菜大王』と『文具大王』第6章・別れの時

『野菜大王』と『文具大王』第6章・別れの時

別れの時

 翌日、康太たちが目を覚ますとベッドの横に綺麗に洗濯された作業着と茶色い紙袋に入ったピーマンが置いてあった。
「ふたりとも目が覚めたかな」
たれ目のパプリカーンが部屋にやってきた。
「師匠、作業着を洗って下さったのですか?」
ネロが聞いた。パプリカーンは頷きながら言った。
「別れの時が来た! 大王様がお呼びである。その服とピーマンは記念に持って帰るが良い」
「師匠!」
ふたりは泣いてい

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『野菜大王』と『文具大王』第7章・さよならネロ

『野菜大王』と『文具大王』第7章・さよならネロ

前章までのあらすじ
食べ物を粗末に扱い不思議に星に囚われてきた康太はカンボジアの少年ネロと知り合う。ファームでピーマンを育てながら二人の友情が深まった時別れの時がやって来た。

さよならネロ

 プシュ―という音と共にドアが上に向かって開いた。それはまるで康太が普段使っている筆箱その物が大きくなり、窓が付いているようであった。
「康太は一両目に、ネロは二両目に乗車しなさい」鉛筆の化け物が指示をした

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『野菜大王』と『文具大王』第8章・大王の正体

『野菜大王』と『文具大王』第8章・大王の正体

 パプリカーンは野菜大王と向かい合って座っていた。
「台風まで起こしたらしいな。そこまでやる必要があったのであろうか?」野菜大王が言う。
「山村康太に対する教育だけでは必要なかったでしょうな」
「ならば何故?」
「康太とネロの絆を深めたかったのです」
「なるほど」
「野菜大王、なにをお惚けです。大王は既に見抜いておいででしょう。ですからお互いの街を見せて帰すようにガジャジャにご指示なさったと私は思

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『野菜大王』と『文具大王』最終章

『野菜大王』と『文具大王』最終章

ネロがくれたもの

 放課後、防災無線が地域の方々へ児童の下校見守りをお願いしていた。康太も普段の道を下校していた。前にはサッカー部の先輩が女子に囲まれて歩いている。先輩はエースストライカーで勉強も学年でトップクラス、康太とは比べ物にならないヒーローだ。網に入ったサッカーボールを左の肩から下げて、右手でペン回しをしながら歩く姿は格好が良い。そんな平和な風景に、突然春風が襲い掛かった。クルクルと先輩

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