光の速さというやつだ。

 もう一度、よく考えてほしい。君は、光の速さで胃カメラをされてことがあるかい? 第四廊下の真っ只中に、会議中の人間の睾丸をお茶漬けにしてしまうほどに、大尉の横穴は疲労を重ねていたらしいが、それでも君は、光と同等の速さで胃カメラをされてことがあるのかい。とある大尉はされてことはないと素直に答えたけれど、それが真実かどうかを確認する術は、現代には無いから。
 大尉は続けてこういうんだ。「私の経験則だが、何度も胃カメラについて尋ねてくる人間のことは、全体的に信頼しないほうがいい」
 大尉はいつものように、道端の便器を見つめつつ言う。まあ、ぼくの本職は漫画家なんですが、それでもいいですか?
「ええ」
 ぼくはたくさんのヒトが一つの点を見つめている絵を描きたかった。するとどうだろう。急に、本当に唐突に、あの電波を全身で接種してみたくなった。胃カメラとは希望であるのかもしれないけれど、そういう一般的な認識がぼくは嫌いなんだ。だからそれに反するように、大してそう思ってもいないのに、『ミーティングが無機質的論理の中でしか行われていなかった日の晩御飯が、味噌汁である確率』なんかを検証して、それをたくさんのヒトが見るような場面に投げ込む。そうやって世界は回っていくのかもしれないし、そうではないのかもしれないけれど、今のぼくはそれにたくさんの熱を込めたくて、仕方がない。
 昨日、喫茶店にいるアヒルのコスプレイヤーに、山羊のコスプレで対抗してみた。
「めぇー」
「ああっ! その一言で世界が救われる……主に、私の脳内世界が」
 山羊山羊なんて言ってたまるか。という誓いがこんなところで役に立つとは思わなかった。でもその誓いはぼくが好きでしたもので、それがしっかりと役に立つのなら、ぼくは幸福。……ああ、そうだ。たしか彼は、音声作品で自慰行為をするのにハマって以来、直立して放尿することができなくなってしまったんだ。だから全員で花束を、南の岬のさらに先っちょに置いておこう。そうすることで病室の女将さんが笑みを取り上げるけど、それでも太陽はこちらを見てはくれなかった。

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