即席の山羊山羊と、無意味になりかけたパラボラアンテナ。

「どうしてだろうと彼女は言うさ」と、真白いベッドに乗る、全てをさらけ出した私。
 それは夕焼けのような見込みでは有りましたが、しかし私は、虎よりも蛇よりも、蛸よりも、山羊を選んでしまったのです。その選択、まさに優秀ダンボールの中の選択は、私に動揺の余地を与えてはくれませんでしたが、しかし翌日の、パラボラアンテナのような友人の夕焼けは、ダンボールなんかよりも素敵だったと、私は思います。
「パンをかぶりついた」私。
「珈琲すら、貴女より苦味を置いていたよ」パラボラアンテナの友人は、依然として、そして変わらず、まるで数年ぶりに帰る実家のような臭いを巻きつけて、四つん這いで私に言い寄ります。
「やめたください」私、機械音のような私。顔面、または頭の全てがパラボラアンテナと化している友人の表情は、電波を受け取るよりも浅く、それでいて選択を迫るようなダンボールと同じですが、私はやはりその夕焼けを、受け取ることはしませんでした。
「いいえ」私は差し伸べられたパラボラアンテナの細い腕を、優しく包み、そして自身の、傷や火傷跡、そしてリストカットの残り香が纏う体から引き離しました。
「貴女、私のダンボールを見たのね?」私は眉をひそめて、静かに言ってみせました。パラボラアンテナの友人は、その四つん這い走行をやめること無く、私に言い寄ります。「そんなことはないさ」
「嘘だ」私、端的な、醜い私。
「嘘ではないさ」パラボラアンテナの友人は、見えない頬を赤らめさせて、首元の釘をギコギコと鳴らしながら言います。
「いいや」勢いの良い、私。更に続けようとするところに、その口に、パラボラアンテナの友人の、私よりも細い白い手が覆い被さる。
「んんんん?!」突然の息苦しさに、私は目を見開いて、目の前のパラボラアンテナ野郎を敵視して、殺意をできるだけ込めて、パラボラアンテナの友人を睨みつけました。
「まて、意は無いさ」パラボラアンテナの友人。もう片方の手は、ベッドの真白いシーツをギュッと握りしめていて、それを横目に見てしまった私は、そのパラボラアンテナも、しっかりと動揺の意の中に沈んでいることを観測してしまいました。
「どうしてだ」
 それれからの私は、もはや以前のような、威勢の良いドブネズミのような貫禄を顔面につけることはできませんでした。パラボラアンテナの友人の、あの美しい夕焼けの中にも、しっかりと動揺が存在していることに、自身の優秀ダンボールを見て「もはや、これまでなのかもしれない」
「七日」パラボラアンテナの友人の、そのつまらない乗りは、私の中の最後の抵抗を簡単に崩壊させてみせました。

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