平凡な蒼天に浮かぶ。

 あるころに赤ちゃんが居ました。赤ちゃんに親は居ませんでしたが、しかし赤ちゃんは幸せでした。
 赤ちゃんの右目の上辺りには二つ目の右目がありました。赤ちゃんはそのせいで、入園した幼稚園の男の子たちにたくさんいじめられました。毎日毎日飽きもせず、その男の子たちは赤ちゃんの二つ目の眼球を指差して、何だそれ、気持ち悪いと言いました。しかし赤ちゃんは強い心を持っていたので、たいして気にせずにいました。
 平然とした顔で男の子たちの悪口を聞き流していると、ついにしびれを切らした女の子が、やめなよ、と男の子の頬をビンタしながら言いました。その女の子は無表情で、切りそろえてあるおかっぱの黒髪が印象的な子でした。ビンタをされた男の子はそのまま赤くなっている頬を放置し、その衝撃に立ち尽くしてしまいました。すると女の子は、ねぇやめなよ、とさらに言い、そして男の子の頬に二発目のビンタをかましました。男の子はそこでようやく赤く熱くなった頬を両手で押さえ、そして爆発するように泣き出しました。ブサイクな顔を女の子と赤ちゃんに見せつけて、鼻水を垂らしてわんわん泣きました。そんな男の子の様子に苛立ちを感じたのは赤ちゃんでした。まるで動画サイトにて再生している動画の途中にくる広告に対して抱くような苛立ちを、その男の子のブッサイクな顔面に感じました。
 赤ちゃんは歩き出し、そして女の子の前へと出ると、近くで男の子の顔面を三つの眼球で見つめました。男の子の方はただ泣いていましたが、赤ちゃんはそんな男の子に依然として苛立ちを感じました。もはやそれは殺意となっていて、そう思った瞬間に、赤ちゃんの右腕は肘から先の全てが変形していきやがて右腕は斧となりました。
 その変化に驚いたのは女の子です。無言ではありましたが、しかし確実な驚きを脳内に感じ、目を見開いて赤ちゃんの斧に注目していました。赤ちゃんは自身の斧を大きく振り上げると、そのまま男の子の頭に振り下ろしました。鋭い刃は男の子の喉元まで入り、頭を真っ二つにしてしまいました。中の脳みそはたちまちどろりと流れ出て、あたりは血液の臭いで充満しました。
 赤ちゃんは斧を男の子だったものから引き抜くと、後ろへと振り返り、そして女の子の眼球を三つの眼球で睨みつけました。
「次はテメェの番だ」
「上等だゴラ」
 女の子は腰に装備した刀を素早く抜刀し、そのまま赤ちゃんの首を切りつけてやりました。斧なんかよりもよほど鋭い刀の刃は赤ちゃんの首に綺麗な赤い線を付けました。
 やがて赤ちゃんの頭は後ろの男の子の、裂けた頭の中にぐちゃりと音を立てて落ちていきました。めでたしめでたし。

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