そう、山羊。

 ハバネロ城と最高の割れ目による、極寒火炎のピスタチオは、有給を使用した果の空へと飛んで消えた。その頃の青空にある美しき肉塊は、やがて血へと帰るのだろうか。

 嗚呼、ハンバーグが食べたい。


(ロンロン弁当語録談。第四章『腸冷蔵庫』より引用)


————

「うわっ。昨日食べた物、忘れちまった!!」奥さんを射殺した現実は予め記録されていたが、血液色の髪を持つ女はそんなことに囚われず、静かに叫びながら震える携帯電話を開き、現れた画面を充血するほどに見開いた眼球で睨みつけました。
『この文章で他人を魅了することができるのなら私は幸福ではあるが、しかしこの文章に意味は無い。』
 友人からのそんなメールを、一世代ほど前の青い携帯電話番で読み上げた女は、心の全区画に染み渡るほどに感動していました。いわゆる感慨深いというやつで、心臓に入り込んでしまいそうなほどの大量の涙と鼻水をズルズルグチャグチャと流した女は、友人に底のない感謝をしながら携帯電話をパチンと閉じました。しかしその瞬間、女は手元の携帯電話が爆弾になっていると急速に思い込み、すぐに携帯電話を実力派ピッチャーのような完璧なフォームでぶん投げました。女の力強い投てきによって、携帯電話は三十メートルほど前方へ飛んていき、アスファルトの地面にガシャンと音を立てて落下しました。女はそれを見てすぐに両方の耳の穴にそれぞれ指を突っ込みました。爆弾となった携帯電話が爆発すると思っての行動でしたが、指を突っ込んてから一時間経っても携帯電話は爆発せず、女はそこでようやく自分の勘違いに気づきました。ちなみに左右の指を左右の耳の穴にそれぞれ突っ込んだ時、慌てていたせいで人差し指ではなく、右耳には小指、左耳には薬指を入れてしまったのですが、このことは誰にも言えない黒歴史として女の記憶の底に永遠と存在し続けると思います。
「昨日のお昼はラ王が良いなっ!」
 だし汁のような色をした空の下。二本の足を使った簡単な前進を優雅にこなし、女は友人の自宅へと向かいます。道行く人々は皆プリントアウトされたようなのっぺりとした顔をしていて、更に体はオレンジ色のジャージを着用していました。それらは全て、町の東側であるこの辺の地域を現在徘徊している、『オレンジ色の衣服を着た人は飛ばさない縛り山羊』からの簡単な頭突きを避けるための行為でした。その行為をしているのはもちろん女も同じで、女は身の丈に合ったオレンジ色スカートに山羊のワッペンが貼られたシャツを着ています。これにより、オレンジ色の衣服を着た人は飛ばさない縛り山羊からの簡単な頭突きを食らうことはありませんでした。
 女は更に歩いて行きます。一歩一歩優雅さを意識して歩くと、なんとなく後ろから誰かに見られているような感覚に陥りますが、それはどうやら昨日食べた冷奴のせいであると、脳内が言っているので、女はそれに納得の感情を乗せ合わせることにしました。
 すると後ろの方から悪魔と龍をかけ合わせた生命体が上げていそうな、太く低く重い雄叫びが聞こえ、更にドゴンッ、という打撃音と共に、「ぎゃーーーー」という発達の良い悲鳴が聞こえてきました。女は、なんだろなぁ、とのどかな牧場の雰囲気のような内心で言いながら後ろを振り返ろうとします。しかしその瞬間、正体不明の物体が頭上を勢いよく飛んでいき、女の十メートルほど前方にどさりと落ちました。女は後ろを振り返ることをやめ、前方の物体に目をやりました。そしてすぐにハッとしました。まるで上気道に栓をされたような息苦しさをほんの一瞬だけ感じ、そしてすぐに戦慄を全身で感じました。底のない穴にいきなり召喚され、そのまま重力に従って永遠に落下しているような感覚でした。
 前方にあったもの、つまり後ろから飛んできた物体は、男の人間だったのです。道行く人々や女自身とは違い、真っ黒な長ズボンに全身を包んだ、五十代ほどの男でした。女は男の服装を見て改めて戦慄し、そして納得しました。今の時期にオレンジ色の衣服か山羊ワッペンを付けないで外を出歩くなんて、それはオレンジ色の衣服を着た人は飛ばさない縛り山羊に、お願いだから飛ばしてくれぇ、と懸命にお願いしているようなものです。オレンジ色の衣服を着た人は飛ばさない縛り山羊は、標的を見つけると当たり屋のような挙動で近づき、すぐに簡単な頭突きで飛ばしてきます。これはもう仕方がありません。
 男は手足が全てありえない方向に曲がっていて、関節の消失を感じられました。男はすでに絶命しているらしく、女が近づき、顔の辺りでスカートをめくって、ピンク色のパンツをそのプリントアウトされたような顔面に見せつけても無反応でした。女はガニ股でしゃがみました。すると風が股をすり抜けて、女は即座に、んんふうぅっ、という声を上げてしまいました。女は男の顔をよく見ました。するとその瞳に光がないことがわかり、女はそこで男が本当に死んでいることを理解しました。理解すると同時に、女は男に対する興味関心を全て喪失してしまいました。目の前にあるモノがただの布をまとった肉塊であると認識すると、女はそれを無視して立ち上がり、そして歩くのを再開しました。
 女は歩いていると、やがて町のとても賑わう区域にたどり着きました。ここまでくると流石に車という文化が流通していて、大きな道路には車が休むことなく通っていました。町並みには帽子屋さんやアート展などがあり、人々のプリントアウトされたような顔にも、少しばかり生気が宿っているようにみえます。
 女は道を歩きます。すると道の隅に居る、太ましい主婦と思われる女性が視界に入ってきました。主婦はオレンジ色のジャージの上から白いエプロンを着ていましたが、よく見るとエプロンには山羊のワッペンが貼られていて、女はなんだか親近感を抱きました。そんなふうに楽しくなってきた女は、さっきから主婦が発している言葉に耳を傾けてみました。
「おっけぇ出来た、出来たっ出来たっ出来たっ出来たっ……」主婦は正座をしながら、永久の完了表明をしていました。正座で向いている方向が、町外れにある呪いの山羊の木の方向でしたが、おそらく何の関係性もないと女は思いました。主婦の永遠の完了表明を少しばかり眺めていた女は、最終的に、あれは明日の夜まで続くな、と思いましたが、実際のところ主婦に明日は来ず、五時間後にバラバラ死体として発見されます。
「ああああああああああああ」主婦を見ていると突然後方から、そのような発狂が聞こえてきました。女は肩をビクッと震え上がらせながら、怯えた顔で振り向くと、後ろで立ちションをしていた少年が、「熱くなってきたぁ」と尿を指で触りながら、ついさっき発狂したとは思えないほどに冷静な態度で言っていました。主婦の方に目を戻すと、主婦は相変わらず「出来たっ出来たっ出来たっ……」と永遠の完了表明を続けていました。
 女は少年の方にぐるりと顔を回転させ、少年の性器から出てくる黄色い尿を見ると、その瞬間にその尿を飲みたい衝動に全身が触れました。今すぐ少年の性器にむしゃぶりついてじゅぽじゅぽと舐め回しながら尿を味わいたいなと心の底から思いましたが、優柔不断な女は結局それを実行することはなく、少年を見守る心を脳に宿して、友人の自宅を目指して進んでいきました。
 それから四メートルと五センチほど進むと、道は横断歩道に繋がっていました、信号を見上げると、丸いランプはまだ赤色を示していました。
「あぁ旨そっ……」女の隣で信号が変わるのを待っていた男が、ポケットから『宇宙』というカレーパンを取り出してそう言いました。女が目を向けると、男はカレーパンが入っている袋をビリビリと破き、中のカレーパン本体を取り出して、「スンスンスンスン」と実際に言いながら犬のように匂いを嗅ぎ始め、十秒もすると口に運びました。
「旨い」男はしっかりと確信したような顔で言いましたが、すぐに頭上にやってきた未確認飛行物体に連れて行かれてしまいました。
「無限の彼方に、さぁ行けよっ!!」女は飛び去る未確認飛行物体に向けて叫びました。すると未確認飛行物体の円盤のような体がピンク色に発行し、同時に超加速を起こして無限の彼方へと消えていきました。
 やがて信号の色が青くなったのを見た女は、横断歩道へと脚を動かしていきます。するとすぐに、五歳くらいの少女が女の隣を駆けていき、そのまま横断歩道へと入り、車道に突っ走っていきました。少女が車道の濃い黒色をした地面を二、三歩踏みつけて進んだあたりで、少女の元へ大型トラックが走ってきました。ぐおおお、という大きな音を立てて進む大型トラックは、エンジンの力で進んでいるというよりは、少女の謎の魅力に引っ張られているように見えます。止まる事無く少女に向かって走る大型トラックを見た女は瞬時に、うお、危ねえなっ、と思いましたが、思っただけでとくに何も行動は起こさず、結果として大型トラックは少女を轢き殺してしまいました。
 ありえないほどくの字に曲がった少女が飛んでいきます。それは山羊に簡単な頭突きをされた時と同じくらいの距離でした。少女はすでにただの肉塊に成り果てており、飛ばされた先で適当な木にぶつかって、どさりという音を立てながら草むらに沈みました。草むらはどうやら坂になっていたらしく、少女だった肉塊は上手く転がり始めました。坂の先に繋がっているのは車道です。やがて少女だった肉塊はごろごろごろごろごろと加速しながら転がり、車道の真ん中あたりにまで、ぐったりと到達しました。そこへ黒い色をしたバンがやってきました。バンは高速で走行しており、少女だった肉塊をすぐに轢いてしまいました。少女だった肉塊の、生前は顔と呼ばれていた部分が縦に大きく裂け、中にあるすでに死んでいる脳みそが飛び散りました。車道とバンの前部分がピンク色に染まり、辺りには血と内蔵のにくにくしい臭いが漂いました。その臭いをできる限り大量に体内に取り込みたいと考えた女は、鼻の穴を大きく膨らませて空気を吸い込みました。すると鼻腔に血と内蔵の臭いが触れ、やがてこびりつきました。女は興奮して叫びます。「え、へぇ、へぇ、へぇ、へぇ、へぇ、へぇええ!!」
 そして女は次に、しゃくれた声で言いました。「もうっ、楽しくなっちゃたんだぁー!」言い終わると同時に現れた走り出したい衝動に全てを預けて、女は横断歩道へと走り出しました。
 横断歩道を走り抜け、そのまま歩道を走り続けて数十分。女は息が切れて苦しくなってきたので、流石に走るのをやめて歩行に戻り、町で一番大きな橋を歩いていました。この町には大したお金もないはずなのに、よくこんな大きな橋を作ったなと感心しながら橋を歩いていると、目前に、橋の手すりをつかんで遠くを見つめている一人の男が見えました。
「ん? なにあれ」そう言いながら、女は男に駆け寄ります。男は黒髪でした。女が、「だれお前」と無神経な感じを醸し出しながら話しかけると、男は「彼方の夕焼けを見ている」と答えました。
 男の発言に、女は疑問を感じました。男の見ている方向には、夕焼けなんていうものは存在していないのです。そもそも時間帯的に、空に夕焼けが現れるなんていうことはありえません。夕焼けはまだまだ先の話です。男の見ている方向には、ただ、だし汁色のいつもの空が広がっているだけで、夕焼けなんてものは欠片も存在していません。
「全てを変える」男は無いはずの夕焼けに愛おしそうな目を向けて言います。「それが白毛の宿命である」
 男は黒髪です。
「なんだと」女が低い声で言いました。
「どうしようもない。すでに消耗品は回復せざる負えないが、進化を破滅に医道へと心中する」女は男と同じように無いはずの夕焼けに目を向けながら言うと、次は男に顔を向けて、「私は最高線の坂にいます! ああ! あなたの足は九州ですね」とハキハキした声で言いました。
 しかしその一言は、男の神経を思いっきり逆なでしていることに、女は気づきませんでした。男は一瞬無いはずの夕焼けから目を離したかと思えば、「気球食えよ!!」と苛立ちをあらわにした声と顔で女に向かって怒鳴りつけました。
「え……ごめんなさい」
 その迫力ある怒りに、女はただ謝ることしかできませんでした。友人の自宅はもうすぐです。
 橋を歩き終え、再び普通の歩道を歩く女は、その横目にコンビニを見つけ、そのまま素直な驚きに身を震わせました。そのコンビニは一ヶ月前はここには無かったはずなのです。へぇ、こんなところにビニコンさんがデキたんか、女はそう思いながら、黄色い文字で『ゴリゴリコンビニ 瘡蓋町オオキナ橋前店』と書かれている赤い看板を掲げるコンビニに引きずられるように入店していきました。
「家に行っても何もないし、酒とツマミくらいは、買っておこうかな。うふふっ、納豆、納豆」コンビニに入店し、店内のあてつけのような冷気に鳥肌を立てなら女はそう言いました。
 出入り口付近に立って私的な独り言を撒き散らす女を、陰湿な雰囲気をそのまま擬人化させたような店員や成金になり損ねたお客様達は、まるでライトで全身をくまなく照らすように一斉に女を見つめました。しかし見つめるだけで特に女に声を掛けることはせずに、そのまま数秒もすると興味を無くして女から目を離しました。
 女は店内へ進みます。
 女は一心不乱に、目的を己の心の中でしっかりと見据えたエージェントのような足取りでお酒のコーナーに進むと、近くに居たしゃがんで商品棚を整理している女店員に声を掛けました。「おい、この中で一番高い酒は?」女はなるべく優しい声で店員に話しかけたつもりだったようですが、その声を客観的に聞いてみると、十分にヤクザの脅しに聞こえてしまいます。それは話しかけられた女店員も同じだったようで、すっかりパニックに落ちてしまった女店員は、配属当日に上司からもらったマニュアルの一番最後のページに書かれていた落書きをそのまま読み上げ始めてしまいました。「やめてください、やめてください、うほうほ。そんなに世界に入り込まないでください。うほうほ」
「んあ? お主、何を言っているのだ。ここはあの世だ」女は更に凄んで言います。ザラザラとしたその声は、女店員にガマガエルを連想させました。
「ひいぃぃぃ、アレですぅ! あれあれ、あれあれあれあれあれあれあれあれあれ」女店員は怯えていましたが、それでも心の底にある店員魂、略して『店魂(テンタマ)』を発揮し、見事にこのコンビニのお酒コーナーに置いてあるお酒の中で一番高い、『超一番砕き 鉄塊味』という缶ビールを指差すことができました。
 しかし女はそっけない顔をして、「ほんなら、これぇ、買うわ」と言い捨て、『ユウヒハイパースティッキー』という缶ビールを近くにあった買い物かごにあるだけ入れ込み、その買い物かごを持ってレジの方へ歩いていきました。
「え、ふざけんなよ」ぼそっと言う女店員の女性器からは、物の見事に黄色い尿が流れていました。
 『ユウヒハイパースティッキー』は、このコンビニどころか世界で最も安いビールであることが売りのビールなのです。
「自分の子宮を見せ合うバイトやってるんだけど、時給三万でマジホッケ書いた。ホッホッ!」三番レジに居る伊達メガネを掛けた丸坊主の店員は、カウンターに目を向けたままそう言って、女が持っているユウヒハイパースティッキーが入った買い物かごを取り上げました。女は唖然として店員を見ていると、店員は買い物かごからユウヒハイパースティッキーを全て取り出しを、一本一本を丁寧に、ホッホッホッホッホッ、と言いながら謎のリズムで上下に振りました。全てのユウヒハイパースティッキーを振り終わると、それからようやくハゲ頭の上に中途半端に残った髪の毛のようなバーコードをバーコードリーダーで読み取りました。
「んんっ。百円ー、百円ー。んんっ」
「ほらよ」女は言いながら歯茎と歯茎の間に挟んでおいた百円玉を店員に手渡ししました。
「百円入りまーっす」女の唾液と少量の血液が付いている百円玉を受け取った店員は、電車の運転士のような口調で百円玉をレジに入れ、穏やかな小川
のような、優しい手付きで会計を済ませました。


(中略)


「お前とロンロン弁当語録談の将棋やる夢みたんだけど、もしかして脳みそとシロアリを縫ったりした?」
 してねーよ。
「なら、必ずしもあれが有罪である意味は?」友人は言いますが、女にはそれの意味がわからなかったので、無言でうつむいていました。すると友人は表情を変えず、つまり無表情のままで、「それを行えば、アイツは廊下へと就寝する」と言います。女は「アイデアやユートピアなどの新商品とゆうが」としぶしぶといった様子で口を開きますが、すかさず友人が、「何もある私はそうなるだろう」と女の言葉を遮りました。
「人生とはマグロである」女は弱い語気を友人に向けました。しかしすかさず、「マグロは美味い」という反論が飛んできます。女は負けませんでした。「人生は常に第三角だ。命の灯はいずれにせよ消滅するが、りんごとパレットによってそこへ帰還する」
「ふん。確かにそうかもね」
 友人はとても納得した様子でビニール袋から新しいユウヒハイパースティッキーを取り出すと、女に差し出しました。「無くなってるんでしょ? 飲みなよ」
「これは、お気餅焼いてますわ……」女は照れくさそうに言うと、友人からのアルコールを嬉しそうに受け取り、すぐにプルタブをいじってプシュッと開け、豪快に飲酒をしました。缶の底はすぐに天井に向き、中のアルコールはその全てが女の食道をドロドロドロと落ちました。女は空きの缶ビールを豪快にぶん投げます。もういらないよと投げ出された空き缶はカランコロンと音を立てて部屋中を立体的に転がり、最終的には部屋の隅の小型冷蔵庫の足元にとどまりました。
 体に改めてアルコールが染み込んだ女は、朱肉のように真っ赤になった顔を歪ませて言います。「無数の穴の行動を起こしていたそれは、一目散に支える」
「だろうな」友人は、がははと笑います。「正論だな。正々論々の略称で正論だ」友人の目は本気でした。
「んはんは、んはんは、んはんは、んはんは、んはんはっ」
 女はそんな友人を横目に、「まぁ、アジの開きにはなったんですけどねぇ……」とひとりごちました。




以下、NGシーン。(母体より数本抜擢)


「貴女には私が何を言っているのかが、少しわからないと思う。しかし、貴女は私の言っていることが少しわからないだろう?」丸眼鏡をクイッとあげて、確信をつくような声色で言いました。
 しかし女には、そんな見掛け倒しの勇気は通用しません。
「いや私は自分が言ってることわかってるよ」女は口角をグイッと引き上げ、真っ白な歯列を見せつけます。「つまり、世界は歯茎ってこと」
 女の勝ち誇ったと声に、虹色のヘドロはひどく困惑し、頭のあちこちを掻きむしりながら、「どうして、どうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうして」と取り乱しました。
「いやいや、だって、咆哮が規制音だったんですよ」女が更に言います。
「それなら、それなら誰がピルを飲むっていうんだっ!!」虹色のヘドロの声は、地震が起きた時の皿に出されたプリンのように震えていました。


「ほら、お前のせいで爆発がポッケから落ちていったぞ?」
「ああ、ポッケはすごいよ。あの宇宙第サンサンさんもポッケには可能性があるって言っていたくらいだからね」
 男達はそう言いながら、人差し指ほどの大きさがある煙草に火を付けました。


「ならばお前、パンツ一丁でコマネチしながら性癖を叫んだあとにクッキーを鼻に詰めたタイプのかさぶたになって笑点に出ろ」
「いやです」
「あっそ。……お前がマヨネーズを好きかどうかなんて関係ないけど、それでもトマトケチャップは点線で折れてるんだよな」
「知りません」
 観測者は推奨された冷静さを最後まで貫いていました。

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