楽園へ行こうよ。

「ラズベリーパイはいつだって、我々を迎え入れてから突き落としてくる」専門家は大きな門構えの前で、自分の甥に話しかけるように言うが、それで世界が救われるとは、思えなかった。専門家はどこかしおれている顔で、見放された柿のような容姿でため息をつくと、そのまま休みを取っていない会社のような体たらくで歩き出した。場所は無い、場所は無いよと口々に言いながら、それでも現状を変えられるほどの力がないことをしっかりと理解しつつ、その汚い小道を歩いていく。まるで、自分の体が自分のものではないと錯覚しているようだと、専門家は芯に思う。そういえば、我々はいつだって昨日のことではなく、明日のことしか見ていなかった。新規よりも蜃気楼で、北の秋の、その中の夜空はきれいだったと記憶している。だからといって、何か願いや願望があるのかと言われればそうではないが、それでも未来への、未来へ向けるべきそれらしい考えはなかった。アルコールはやがて水へと帰るらしいが、それでもあの人たちは変わらない。いつまでもあの古臭い思いと、あの汚い液体に縋りつくのだろう。上から垂らされた、よわよわしいあの糸をつかむのは、いったい誰だろう。専門家と呼ばれる人たちは、どうしてそればかりを頭に残して死んでいくのだろう。ああ、と叫んでみせても、世間と呼べるあの上の組織たちはなにもしない。いつだって我々の考えは、虫けらのように踏みつぶされる。動物を殺処分するのは悲しいことだと嘆くかわい子ぶった女の子も、このことばかりは知らん顔をしている。路地でのたうち回る科学者と、それを実験と称して観察している教授の連中は、清めと言って塩を投げた。いつかに見た夜空は確かにきれいではあったが、我々はそれに、心の底からの見惚れは感じられなかった。
 空に浮かんだ人は、顔にしわを作って言う。
「学術的な価値を見出そう。私はそれを望まないけど」
 それを聞いた我々は、それぞれ勝手にうなり声を上げた。
 選考に重ねた選考を経て、神とあがめられている組織はゴミくずを生んでしまった。あの頃の、あの暖かい、シチューのような日々はもう戻らない。それをしっかりと認識したうえで、その耐え難い事実に悶えて泣こう。いつまでも夜空を見ていたい。それはかなわないけど。
 いつかの日々のやりとり。
「あそぼう、あそぼう、あそぼう」あの子の優しい声。
「でも僕には課題があるから……」
「それでも良いよ」
 もう嫌だ。果実はいつも弾けていた。それでも男は疑問符を頭の上に乗せて、それでも日常をなんとかして生き延びていた。
「こうつうじこにはあったのですか?」母性を出している女神は優しく、それでも無機質に問う。
「……いいえ」専門家は悔しそうに言った。不味く仕上がったインスタントラーメンのようだった。
 専門家の割合をしめている。
「みんな、みんな、よろこんでいる」
「なんだと、みかんを投げるぞ」それでも、あの橙色の身から出た錆!!!!!!
 頭についた音のように、明日よりも明後日を見るように、我々はあの組織を食らいつくす。たとえそれが、子供からおもちゃや公園を取り上げるような行為であったとしても、それが正しいことであると意識し、そして実行する。耳に直接、あの子が勇敢さをささやいてくれる。それでも専門家は、真っ黒な母性にとらわれてしまう。
「もう、信じてくれましたか?」
 無機質な女性の声で。耳から入り込んでくるそれは、専門家の脳を締め付けてくる。無理やりにでもこちら側のことを信頼させてやるという、そんな気合が感じられてしまうが、それに飲まれたとたん、専門家はその地位を失ってしまうだろう。だからこそ専門家は、その声が聞こえてきた瞬間に、「私は信仰しない、私は信仰などしない」と、つよく願っていた。締め付けられようとしている脳に焼き付けると、それだけで締め付けがなくなっているような気がしてくる。本当かどうかなんて、それを確かめる術もなかったが、それでも専門家は、自分のやっていること信じていたんだ。
「ああ我々はいつだって果実を信用してはいなかった」
 その声で、窓は全て割れていった。観測を続けていた組織たちは、明日の掲示板に薬の効能を書き込んだ。
「外へ出よう」
 不信感はジャケットを羽織って、ドアを蹴とばすように開けて出て行った。それでも彼女の娘は、通っている学校では内向的であると評価されていたが。
「おい、あの処刑場は論争の武器になるか?」
「明日の刑事は市場にとどまりをみせるだろうな」
「そりゃ傑作だ」
 その一言をおひらきの合図として、今日の会合を終えた皇帝は、そのまま樹海へと到達した。

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