Chinaの憂鬱と日本の立場

拙コラムでは、日本、アメリカ、Chinaが置かれている状況を踏まえつつ、今後の日本が進んでいく道、日本の国内企業に与える影響、日本人が考えるべき点は何かについて、愚考を書いてみたい。

特に、投資を行っていたり、中小企業経営者の方々の一助になることを期待する。

現在行われているChina全人代において、ほぼ全会一致で香港国家安全法制定が決議された。世界が憂慮している中、China共産党は内政干渉するな、と言わんばかりに、今回の決議に至った。

如何に想定内であったとは言え、度重なるアメリカの警告を無視して行われた決議は、アメリカの怒りに火をつける可能性が高まるだろう。トランプ大統領就任以後、米中の貿易戦争は激化の一途だが、アメリカが怒り心頭なのは、Chinaが対米貿易黒字を出し続けるだけでなく、アジア地域におけるパワーバランスを人質に覇権主義を推し進めるChinaの態度そのものとも言える。

AIIB(アジアインフラ投資銀行:Asian Infrastructure Investment Bank)は、多くの国々を巻き込んでスタートしたにも関わらず、資金供給は遅れ、実際の投資規模もとてもアジア地域のインフラ整備に資する規模には至っていない。

一帯一路構想ですら、暗礁に乗り上げた状態で、結局はChina国内企業への投資金回帰を狙った覇権主義に過ぎず、実態はまだまだ絵に描いた餅だ。アメリカや日本が長きにわたって警告を発し続けているのが、Chinaが経済戦争を世界に向けて仕掛けている裏側で、何が起きているのかに刮目すべきだ、という点だ。

チベット、ウイグルへの弾圧、台湾への牽制に続き、香港で行われているデモ活動への強行な鎮圧行動は、より強く一国二制度の維持を願う香港市民の反発を買っている。世界中のメディアに発信されているためか、流石に実弾使用の暴挙は行われていないが、強毒性の催涙ガス、催涙弾、唐辛子弾の使用の確認はされている。逮捕者は数日から数週間で釈放されているようだが、指紋、顔認証用データ、DNAデータは保存され、SNSでの情報発信や、デモ参加に厳しい制限を加えられているようだ。

アメリカは、これら人権を蹂躙するChina政府のやり方に、厳しい姿勢で臨んできた。米中貿易戦争の裏側で、互いの妥協点を模索してきたのだ。それに対して、国内の統制を優先するChinaは、アメリカへの強気の姿勢を示さざるを得ない状況だ。既に地方行政は破綻し、China中央政府へのいい顔をしたいだけの地方行政を担う共産党員は、実際には物凄い数の失業者がいるにも関わらず、ひた隠しに隠している、とする識者の見方もある。8億人の労働人口のうち、25%が失業状態にあるという。流石にそれは無いだろうと好意的に解釈したとしても、結局それがChina中央政府のアキレス腱であることは事実だろう。

だから、China中央政府は雇用創出のため、地方のインフラ整備に5カ年計画で500兆円規模の予算を計上するとぶち上げたりするのだ。どこにそんな財源があるのか、疑わしい限りだが、地方債の上限引き上げ等で乗り切るとしている。これは紛れもなく雇用創出を目的地としたもので、国内の共産党批判を交わす目的がある。

このChina全人代の決定に対し、アメリカは明確に不快感を示し、トランプ大統領は、29日に重大な発表を行うとしている。それについては、アメリカ国内のメディアでも、様々な憶測が渦巻いているが、ポンペオ国務長官が、言うように、これまでの香港に対する高度な一国二制度に基づく自治が崩壊するならば、香港に対する優遇措置を解消することも考えられる。

それは、アジアの金融ハブとしての香港の立場を危うくするものであり、事実上、Chinaの国際的な金融支援が無くなることを意味するのだ。

China国内の株式市場は、上海、シンセン等、数カ所で行われているが、China国内の輸出入に関わる企業の多くは、香港金融市場のドルペッグに支えられている。金利が米ドル金利と連動し、事実上米ドルの裏付けを受けている故、国際市場における香港ドルの信任は高い。また、実質的な米ドルの信任を受けている香港ドルとの交換によって、人民元と外資との連動が行われ、過度な人民元高を抑制することができ、結果、China国内の製造業にまで、安定した国際競争力が維持されている。

また、China企業を名指しで制裁対象にしたアメリカBISの決定は、China国内のIT系製造業に大きな打撃を与えることになった。アメリカが制裁を課す上で、他にも数々の選択肢が残っている。Chinaは、国内企業のテクノロジーはアメリカの基幹技術に基づいているため、アメリカ政府の措置は、Chinaのハイテク産業のグローバルなサプライサイドのアキレス腱になる。また、アメリカが持つ強力なSND法は、Chinaの屋台骨を揺るがせかねない。米ドル取引が禁止措置になれば、ほぼ世界中の金融機関は、その取引の根幹を揺るがせてしまう。

仮に、Chinaの金融機関がその対象になれば、今後、Chinaは事実上世界の金融市場から締め出されてしまうのだ。アメリカもChinaも、やるぞやるぞと大鉈を振るう姿勢で牽制しあっているのだが、やはりハードカレンシーを持つアメリカは、世界市場で基軸通貨の立場を維持してきた経験と強みがある。ここを握っている以上、最後はChinaが折れざるを得ない。

ブッシュ政権時に、野放し状態でアメリカ市場を席巻したChina経済は、オバマ政権時、ジワジワと真綿で首を絞められながら、それでもIT産業での覇権を模索してきたが、堪忍袋の緒が切れたトランプ政権によって、一気に梯子を外された。

儲けるだけ儲けただろ、あんまり調子に乗るなと諭されているのだ。

Chinaはそれでも、巨大化した自国経済に自信を覗かせていたと思う。たとえ形骸化しているとは言え、AIIBと一帯一路は、一気に人民元をハードカレンシー化するに足るだけの力が残っていると過信していたのだ。

アメリカは、日本のような玉虫色の外交はやらない。特に、トランプ大統領のように、政治経験が無いトップは、支持者への契約を忠実に守り、安倍総理のような信頼できるパートナーと共に、自分の在任期間中にやるべきことを淡々とこなす。ドライなビジネスマン気質は、外交に手腕を発揮する安倍総理のような友人を手放すはずがない。

実は、Chinaにとってもそれは同じことだ。

以前の拙者コラムで指摘したように、安倍総理の4選が果たされた時、真っ先に喜ぶのは、トランプ大統領と習近平主席だ。

今の外交問題が複雑化している中で、安倍総理に変わる人材が日本から出てきてもらっても困るのだ。

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