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日本の選択肢・エネルギー

日本から見た欧州市場の動向

1月20日現在、スイスのダヴォスで開催されているWEF(World Economic Forum)で行われているセッションの議事録や録画を観ていて思うのは、日本経済新聞社の西村博之氏が指摘するように、ESG(Enviroment、Social、Governance:環境、社会、統治)が欧州の主流の考え方になっていることと、その為にはSDGs(Sustainable Developments Goals:持続可能な開発目標)の各項目を達成する企業理念や政治が求められているし、また、そのように欧州各国(EU中心)が進んでいることを感じる。
多くの識者が指摘するように、世界のスタンダードを最初に作ろうとする欧州の態度が世界に受け入れられるかどうか?は、大いに疑問が残る。そもそも、欧州は経済にしても政治にしても地政学的な問題が大きく影響するし、EUが世界最大の単一市場(GDP総計)を形成している以上、自分たちが先にルール作りを行っていくことが当然という態度なのかも知れないが、欧州の最大の問題はエネルギー確保。
ウクライナ-ロシア戦争が長期化しており、ますますエネルギー問題が焦点になっていて、それはそのまま市場の動向を大きく左右する。だからこそ欧州が積極的に脱CO2、再生可能エネルギーにシフトする方向性は容易に予測ができる。
ただ、欧州の中で最も巨額の経済圏を擁するドイツが脱中国を図れるか?が、今後の焦点になるだろう。西村氏も指摘している通り、欧州は東アジアが抱える対中政策の半分も共感は得ていない。地政学的に見て、ほとんど関係が無いし、欧州各国における経済の柱が存在していない現状で、ESGやSDGsをその柱に据えるのは、これまた理解の範疇に入る。
またこれらに先駆的な道筋を付けることが、この分野におけるリーダーとして世界を牽引できると踏んでいるだろう。
では日本の立場から欧州の動きにどう呼応すべきだろうか?
日本が自由主義経済圏の西の砦になっているには、いくつかの理由がある。日本は単一民族で海に囲まれている島国であることと、日本語という言語による。地政学的にも太平洋の西側、つまり覇権国家との境界線に位置する。これらの要因によって、欧州と違い、文化の交流も人間の交流も、一定の制限を持つ。欧州の人たちから見れば、日本はマルコ・ポーロの時代から見方が変わらない。東の端にある美しい自然を有する楽園のような島国だ。人々は穏やかで、世界に冠たる文化的な産業があり、しかも製造業の技術はトップクラス。
その日本が置かれている地政学的な近隣諸国との関係性は、欧州の人たちには理解が及ばないと同時に、産業の世界的な潮流を自分たちのルールで作り出そうとする欧州各国の考え方もなかなか理解が及ばない。これも巷間多くの人が指摘しているように、日本は太陽光発電に適した用地がほとんど残されていない。多くの自治体が第三セクターと企業とで連携た大規模太陽光発電施設の建設を目論んでいるが、これはFITや様々な補助金を目当てにしてる利権構造がある。つまり、最終的には年利5〜8%の収益を見越した投機案件なのだ。しかもそこには公金が支出される。

発電コスト検証に関する取りまとめ(案)

経産省が取りまとめた2030年を目処とする指針を見ると、現在の再生可能エネルギーの枠組みに含まれる発電方法からの調達コストに関して、少し見立てが甘いような面も見て取れる。
地産地消となる再生可能エネルギーは、設置費用に海外からの材料調達コストを加味する必要があるものの、基本的には国内メーカー、工事業者への支払いを耐用年数と買取制度期限年数で割ったもので、初期投資分の回収を勘案して民間からの参入を促すものだ。

2022年度以降の価格表(調達価格1kWhあたり)

また、2010年をピークに一般住宅向け買取価格は年々下がり続けてはいるが、現在の価格を下限として、以後、2030年までほぼ買取価格は現在の状況が維持されると経産省では指針を出している。
しかし、仮にエネルギーを海外から調達するとしても、太陽光発電をはじめとする再生可能エネルギーによる電気の調達コストは、高いままだ。
現在、一時的な円安により、エネルギー調達コストが膨れ上がり、ガソリンをはじめ様々な化石燃料が高止まりしている。それが家計に直接的な影響を与えているのは事実ではあるが、では、エネルギー調達コスト「だけ」を考慮して再生可能エネルギーにシフトすることは可能だろうか?
答えはノーだ。
最大の問題は設備投資費の負担額が大きくなっていることで、国内企業で太陽光発電パネルを国内生産している企業は激減している。市場が縮小していることと、海外から安価なパネルを調達していることで、国内生産する意味が無くなったからだ。ただし、そこには構造的な問題も大きく横たわる。太陽光発電パネルの主要な生産国は中国だが、その工場はウイグル自治区をはじめとする安価な労働力が確保できる地域に偏っている。
人件費を抑えることで生産コストを下げ、輸出品目の柱に置いているのだが、問題は安価な労働力である農民工以外にウイグル族の人々を半ば強制労働の形で確保することが、人権問題を引き起こしているという指摘が根強い。
欧州でESGだのSDGsだのと言って世界標準にしようと思っても、サプライチェーンから中国を外せない現状で、ではどうやって必要な機器を調達するのだろう?
欧州各国は自らお金を出してサプライチェーンの再構築はしない。それらは、日本をはじめとした技術を有する国に丸投げの状態だ。つまり自分たちで世界基準と称する規格を作る動きを見せながら、製造はアジア諸国におんぶに抱っこでは、理屈に合わない。
日本企業は欧米の動きに遅れをとるまいとしている雰囲気があるが、では日本が牽引役や旗振り役に名乗りを上げるか?と言われれば、それはやらないだろう。
何故なら、欧米各国にいいように祭り上げられて、お金だけを出せと迫られるのが目に見えているからだ。

これ以上環境に配慮できない日本

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