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インタビューのススメ

人の話を聴くのが好きだ。

その人が体験した物語や思考の建築様式を探訪する。間合いや選ぶ言葉に美意識は宿る。その手に触れることはできない輪郭を感じたい。「あ、僕と同じ考えだ」という共感もうれしいし、「僕にはない世界だ」という新しい発見もうれしい。その両方がバランスよく成立している関係性が最も心地良い。

ダイアローグ・ジャーニー

先日、このような文章を書いた。

対話を通して、新しいものを獲得していく。それは、川縁でお気に入りの石を拾っていくような感覚で。それを手にして、二人で磨いていく。もう一度地面に戻すこともあるし、ポケットの中に入れることもある。持ち帰って部屋で一人になった時に、ポケットの石を机の上に並べて夜な夜な磨く。孤独な作業。これがとにかく好き。

対話、あるいは、インタビューを通して旅をする。「わたし」と「あなた」が手を取り合って、いろんな世界を飛び回る。旅の途中でお気に入りの石を拾う。夜になるとそれを磨く。「夜」というのは、「孤独」のメタファー。

文章に落とし込む過程で、思考は「高密度のマテリアル」として精製されていく。磨く、削る、などの石工職人の感覚ではなく、蒸留技術に近い。花や葉、根などを蒸留してエッセンシャルオイルを抽出するイメージ。固い物質がぶつかり合って火花を放ち、粉塵が舞うよりも、軽やかに広がるミスト。芳醇な香りで満たされた流動的な空間、靄が晴れた頃、幾重にも光を閉じ込めた真珠層のような輝きを浮かべた高濃度のリキッドが残っている。魔法のような現象に近く、それは詩的である。そういう感覚だ。

「ライター」の価値を上げる

以前、そのような文章を書いた。誰かが話したことの文字起こしをするだけではなく、新しい価値を引き出し、提示していくことの重要性を説いた。ライターと名乗る人の中には「新しい価値を引き出している人」も「その価値を提示している人」もまだ少ない。来た仕事をどれだけ早く、量を仕上げることに追われている人の方が多い。

「ライター」と言っても、きっと僕の理想は一般的な「ライター」の価値観とは異なる位置にある。まだ、その名前がないだけで「ライター」と呼んでいるが、求めているものは明らかに違う(求められるものも)。そこに紐づくようにして、「書くこと」以外にも、観察力、傾聴力、質問力、「場」をつくる力など様々なアビリティが必要になる。

インタビューは、僕の考える「ライター」にとってなくてはならないものだ。

価値を生んでくれる話し相手

そう思ってくれたらいい。僕と話をして、新しいアイデアを思いついたり、思考が整理されたり、課題を発見できたりすれば。それを誰かに届けたり、多くへ広めたりすることは僕の文章に任せればいい。本質的な価値はゆらぎを伴って移行している。

『教養のエチュードしよう』というサークルで新しく窓口をつくった。「ダイアローグ・ジャーニー」というプラン。二人でオンラインでお話しましょうという場所。あまり僕と関わったことがない人でも、気兼ねなく連絡がとれるように。ここで生まれた収益は「教養のエチュードTalk」のゲストのギャランティに回そうと思う。だから、サポート感覚で利用してくれてもうれしい。もちろん続けてくれても、一回きりでもいい(例えば、その権利を誰かにプレゼントしてくれても構わない)。

インタビューについてのことでも、ライターについてのことでも、話す内容は何でもいい。文章のフィードバックや物語の構想を一緒に考えることができると楽しい。

インタビューはいい。自分の世界が広がる。同時に、相手の世界が少しでも広がればより素敵だ。



「ダイアログジャーニー」と題して、全国を巡り、さまざまなクリエイターをインタビューしています。その活動費に使用させていただきます。対話の魅力を発信するコンテンツとして還元いたします。ご支援、ありがとうございます。